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偏愛のすすめ

どーも。総館長の中山です。
11月23日に、美術史家で明治学院大学教授の山下裕二さんとプレゼンバトルをしました。当館の古美術作品から「超絶技巧」「ユーモア」「威風堂々」「カワイイ」「これ欲しい!」という五つのお題をもとに互いに自分が好きな作品を選び、赤コーナーと青コーナーに分かれて五ラウンド。本物のゴングも鳴らされながら、おのれの偏愛度を披露しあう、語り合うというトークイベントでした。大勢の方にご来場いただき、和気あいあいにバトルすることができて楽しかったです。

「プレゼンバトル 古美術編!」会場の様子

ということで今回は「偏愛」をおすすめしようと。だいたいが、キリストやブッダじゃあるまいし、「かたよらない愛」などということ自体が大変むずかしい。凡人の愛は大抵、かたよります。でも不平等になってはいけない場合も多い。三人子どもがいるけど、ひとりだけを可愛がるとか。先生がえこひいきするとか。

いまは偏愛ではなく「推し」という便利な言葉がありますね。山下さんの推しメンは、超絶技巧は「病草紙 肥満の女」と「尹大納言絵詞」、ユーモアは「宮本武蔵 布袋見闘鶏図」と「伝・梁楷 鶏骨図」、威風堂々は「壺形土器」、カワイイは「仙厓 犬図」と「弥勒菩薩半跏像」、これ欲しい!は「長次郎黒楽茶碗 銘次郎坊」などでした。いやあ仙厓以外は松永コレクションで、さすが名品ばかりです。

対してわたしは、超絶技巧は「金銀鍍透彫華籠」と「蟹自在」、ユーモアは「岩佐又兵衛 三十六歌仙」と「仙厓 牛図」、威風堂々は「薬師如来立像」と「古林清茂墨蹟」、カワイイは「コブウシ土偶」と「女性土偶」、これ欲しい!は「青磁迦陵頻伽形水注」と「牡丹唐草文螺鈿小刀」でした。

こうして並べてみるとわたしの推しメンは、なんかメチャクチャ? そうなんです。国は日本、中国、タイ、パキスタン、時代は紀元前3000年から19世紀まであって、ジャンルもバラバラです。まあ、当館の約4500点ある古美術作品は地域も時代もジャンルも幅広く、しかも名品もたくさんあるのが特色ですから、なるべくかたよらないで選んで、そしてかたよった愛を語ろうと…。
プレゼンバトルではありましたが、勝った負けたはなし。来場の皆さんもアカデミックじゃない話も含めて楽しんでいただけたと思います。
そうなんです。アカデミックじゃなくていいんです。美術鑑賞は。むしろ、好き嫌いをはっきりさせて、好きなものに関しては「推し」をもっと推し進めて、「偏愛」しまくりましょう。美術館ではえこひいき大歓迎なんです。美術を楽しむ秘訣。それは知識ではなく、愛なのです。というか、好きだったらもっと知りたくなる。で、作品にまつわるいろんなことを調べてみる。さらに「偏愛」が深まる。こうなるともう立派な美術マニアの誕生です。当館のコレクション展示室は年に何回も展示替えをしていますから、来るたびになにかしら新しい作品と出会うことができます。自分勝手にお題を決めて、推しメンをさがす、というのもアリではないでしょうか。

(総館長 中山喜一朗)

 

 

 

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