メニュー

延長9:30~20:00(入館は19:30まで)

メニューを閉じる
ホーム > ブログ > 美術品と箱の話②
福岡市美術館ブログ

新着投稿

その他

美術品と箱の話②

前回ご紹介した美術品と箱の話①で、輸送時に梱包する箱についてお話をしました。箱で輸送時に気を付けるべきことは主に移動時の温湿度変動と振動がメインとなります。そのため、輸送用の箱は移動に特化した作りとなっています。

では収蔵時に使用する箱はどうでしょうか?

収蔵庫で保管する際は移動というよりも、適切な保存環境で安全に設置されていることが重要となります。

美術作品が損傷しないように気をつける、ということはなんとなく分かっていただけるかと思うのですが、なぜそもそも美術作品は損傷するのでしょうか?

実は美術作品は下記の環境要因によって損傷が起こると言われています。

①温湿度

②光

③空気

④生物

⑤振動

⑥火災・地震

⑦盗難・人的被害

(参照:京都造形芸術大学(編)『文化財のための保存科学入門』2002)

最近は水害も多いので⑥に水害も加えた方が良いかな?と思います…が、それはともかく箱に話を戻しましょう。

輸送用に使われている段ボールは一般的に再生紙を使っておりpH値は酸性となります。そのため、そのまま輸送用の箱で保管すると内部に酸性ガスが充満し、美術作品にも悪影響を与えてしまいます。先ほど紹介した③空気というのがこれに該当するわけですね。

そこで開発されたのが下記の箱です。

これは中性紙保存箱と呼ばれる中性紙を用いて作製された保存専用の箱になります。つまり、この中に保管された美術作品は正常な空気環境下に置かれることになります。もう一つ重要なのは中に何が入っているかラベルや資料情報が書かれた紙も一緒に同梱して整理することです、これが紛失予防にもつながります。

この中性紙保存箱は上の図のように組み立てるだけの簡単なタイプもありますが、そのサイズに入らない美術作品も福岡市美術館は多く所蔵しています。そのため、サイズが無い場合はせっせと気合(!)で作る、という選択をします。適度な強度があるため、一般的な段ボールと同様に工作が可能なんですね。

最近作った箱がこちらです。

これは額装されていないむき出しのキャンバスを保管するために考えた方法です。キャンバスを裏面で固定しているもので、輸送箱にも同様の形状がありトランジットフレームとかトラベルフレームと呼ばれています。この形状をそのままに素材を変えて応用したものがこちらです。裏面の金具が出てるところはちょっとだけ穴を空けて壁や柱に固定できるようにしました。これで安全に棚の中にも入れられますし、移動時に壁や柱にちょっとだけ仮置きする際にも固定が可能となります。

手作り感が溢れる感じはご愛敬、このように地道に手間暇かけるとその分結果が返ってくるなぁ、と実感する時があります。

所蔵品は今もしっかりと収蔵庫に保管されており、皆さんに展示でお披露目される日を待ち続けています。

(学芸員 作品保存修復担当 渡抜由季)

新着投稿

カテゴリー

アーカイブ

SNS