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あえて基本に立ち返る

富野由悠季の世界」展は、日本を代表するアニメ監督である富野由悠季氏の55年にわたる仕事を振り返る展覧会です。日本初のテレビアニメ「鉄腕アトム」にかかわった頃から、最新作品までの関係資料を展示しています。見方によっては、これは戦後アニメヒストリーの一側面ととらえることもできます。

富野監督のもっとも有名な作品は「機動戦士ガンダム」(1979年)です。現在までに、多数の続編や関連作品が制作されてきたので、富野監督の名前は知らずとも「ガンダム」の名称やそのロボットのイメージは思い浮かぶ、という方は多いことでしょう。現在では「ガンダム」に限らず日本製アニメは海外にも多数のファンを生み出しています。アニメは国境を越えて1つの文化ジャンルとして認知された感があります。

こうした状況を反映してかアニメ関連の展覧会は年々増える傾向にありますが、その多くがアニメプロダクションサイドや企画会社等が制作したもの。開催する美術館側は「巡回受け入れ」のみ行う場合が大半です。その意味で「富野由悠季の世界」はとても珍しい展覧会です。当館含め6つの美術館の7人の学芸員が1から作り上げた展覧会だからです。

しかしこの展覧会、企画開始段階から難航しました。まず当の富野監督がなかなか首を縦に振ってくれません。そしてようやくOKがでたところで、富野監督のアニメの大半を制作したサンライズのご協力のもと、同社の資料課にて膨大な資料の山を調査しましたが、アニメの資料の現物を調査するのはこれが初めて。一体どれが重要なのか?そもそも、だれが書いた(描いた)ものなのか判然としないものも含まれています。20年前後のキャリアを持つ我々ですら、資料の扱い方、見方、その意味などについては一から勉強しなおしでした。

ようやく調査が終わったところで、今度はその選定です。しかし、例えば「絵コンテ」、「動画」、「セル画」などの資料がアニメ制作のどの段階で描かれるのか、そのプロセスのどこに富野監督が関わっているのかをしっかり説明をしないと、単なるアニメ資料の羅列となり、見ていてあまり面白くはありません。選定をしながら、同時に、どのような解説を付けていくかも考えていきました。今回は、7人がそれぞれ3~4つのアニメタイトルを担当したので、展示資料選択、展示方法、解説文作成などは、各担当が責任を持って行いました。

そして2019年6月22日。無事に展覧会が開幕したわけですが、振り返ってみれば、普段は美術作品に触れている我々が、「今回はアニメだから」といって何か特別なことを行ったかといえば、そうでもなかったのです。資料を調査し、作者の話を伺い、それに基づき資料の研究を行い、それを展示と解説に反映させる、という展覧会を企画する学芸員の基本的な仕事を行ったにすぎません。ただ、通常の油彩画の展覧会ならば100点程度で収まるところ、今回は3000点超! 富野監督の演出意図を「伝えたい」「知ってほしい」の一心で7人が一丸となって取り組んだ「富野由悠季の世界」展。来場の皆さんには大変好評をいただいています。え?展覧会でへとへとになるのは珍しい? でもみなさん、海外の大美術館に行ったらもっとへとへとになって作品を見ているはずですよ。本来展覧会とはそういうものなのではないでしょうか。

できれば、アニメファン以外の皆さんにも見てほしいなあ。

(学芸係長 山口洋三)

撮影:山崎信一(スタジオパッション)
画像は肖像権保護のため加工しています。

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