2026年10月28日 14:10

こんにちは、教育普及を担当している髙田です。今年は暑さのピークが過ぎると、朝晩は気温が下がって過ごしやすい気候になるのが早かった気がします。天気さえ崩れなければ、空が高くなり、空気も爽やかになるこの時期は、外に出かけるのが楽しく、美術館や大濠公園も週末などはかなりの賑わいをみせています。自分自身もこの快適な秋を楽しもう、と思っているうちに、気がつけばもう来週は11月。そうすると、年間の教育普及事業のなかでも大きな催しのひとつの“アレ”がやってきます。そう、福岡市美術館の11月といえば、11月3日の開館記念日に合わせて毎年開催している「ファミリーDAY」なのです!
ファミリーDAYでは、美術館の開館記念日を知ってもらい、子どもたちと家族の皆さんで一緒に美術に親しむ機会にしてもらおうということで、未就学児童から中学生とその保護者の方を対象に、毎年さまざまなプログラムを開催しています。今年はカレンダーの巡りで、間に月曜の休館日が挟まりますが、11月1日(日)と3日(火・祝)の2日間が開催日となります。
ファミリーDAYのプログラムは予約制のものと、予約不要で参加いただけるものがあります。予約制のものはすでに応募期間が過ぎているのですが、予約不要のものは期間中に入れ替え制で開催しますので、ここでは予約不要のものについて、簡単にご紹介したいと思います。
【予約なしで参加できるプログラム】
★かいとうキッズ 美術館の謎をとけ!★
開催日時:11月1日(日)・3日(火・祝)10:00〜15:00 (受付は14:30まで)
対象:5歳くらい~
「かいとうキッズ 美術館の謎をとけ!」はコレクション作品や美術館にまつわる謎々やクイズを、館内を巡りながらこどもたちに解いてもらう、毎年開催している人気のプログラムです。問題は「かんたん」と「むずかしい」の2種類あり、こどもたちの年齢に合わせて楽しめるようになっています。問題作成にあたっては毎年、係の全員で、ファミリーDAYの期間に見られる展示作品にまつわる「謎」を、頭をひねり、眼とこころを柔らかくして考えています!どんな「かいとう」が表れるか、私たちも楽しみにしていますので、たくさんのこどもたちのチャレンジをお待ちしています。

★美術館たんけんビンゴ★
開催日時:11月1日(日)・3日(火・祝)10:00〜15:00 (受付は14:30まで)
対象:5歳くらい~とその保護者
こちらは今年はじめてファミリーDAYで開催する、館内を探索しながら行うビンゴゲームのプログラムです。保護者の方にも参加いただけるようになっていますので、ビンゴカードを手に、美術館のなかを自由に探検して、たくさんの発見をしてもらえればと思っています。お互いがどんなものを見つけるのか、こどもとおとなと一緒におしゃべりしながらぜひ楽しんでみてください!
★きって はって ぬって 作品であそぼう!★
日時:11月1日(日)、3日(火・祝)10:00〜15:00 (受付は14:30まで)
対象:3歳くらい~
美術館の作品をモチーフにした塗り絵や貼り絵ができるプログラムです。好きな作品の絵を選んで、色をぬったり、切ったり、創作してみましょう。完成したらお面にしてかぶったりもできます。このブースで作った自分の作品と一緒に展示室に実物を見に行ったり、他のプログラムに参加すれば、気分もウキウキ楽しくなってくるはず。個人的には、こどもたちが選ぶ作品が、毎年どれが人気かを見ているだけで面白くなります。え!それがまた選ばれたの?という渋い作品やシュールな作品がよく選ばれているのを見ていると、幼い目に作品のどんなところが響いているのか、そんなことも気になるプログラムです。

★ミニミニワークショップ★
日時:11月3日(火・祝)10:00〜15:00 (受付は14:30まで)
対象:未就学児童とその保護者
美術館2階の「キッズスペース 森のたね」で開催するのは、このスぺ-スをつくったアーティストのオーギカナエさんと考えたプログラム、「ミニミニワークショップ」です。こどもたちには、キッズスペースに置かれた大きな「森のたね」から素材を引き出して、「森のなかま」づくりに挑戦してもらいます。素材を自由に組み合わせたり、ちぎったり、くっつけたり。美術館のキッズスペースの名前に込められた、「小さな子どもたちが心に持つ美術のたねを育む場所にしたい」というメッセージの通り、こどもたちがはじめての創作を体験できるプログラムです。

毎年、このファミリーDAYの期間は美術館にいつも以上にたくさんのこどもたちが来館し、明るい雰囲気に包まれます。同時並行で複数のプログラムを行う日となるのでいろいろ準備に追われつつ、今年はどんなこどもたちが来るのかな?去年も来てくれた子もまた来るかもしれないな、とこちらも少しソワソワ、ワクワクしながらこのブログを書いています。
また、開館記念日の11月3日は文化の日で祝日でもあり、福岡市美術館のコレクション展示が無料観覧できる日となりますので、ご家族やお友達同士でお誘いあわせのうえ、気軽に遊びにきていただければと思います。
(教育普及係長 髙田 瑠美)
2026年8月5日 11:08
6月30日に開幕したコレクション展「宇宙にいきたい」。おかげさまで多くの方に足を運んでいただいております(展覧会については担当した姜が7月8日のブログでも紹介しています)。毎年開催しているこの「夏休みこども美術館」。なんと初開催は1990年。つまり36年前から続くとても歴史の長いコレクション展です。
普段、当館では、コレクション展(主に所蔵品の展示。一部の展示室を除き2~3か月に1回展示替えをします)は、古美術係と近現代美術係の学芸員が展示内容を企画します。しかし、この「夏休みこども美術館」は私が所属する教育普及係が企画しています。
教育普及係が企画する展覧会の醍醐味は何か。今年の夏休みこども美術館を例に話をしたいのですが、その前に、そもそも美術館の「教育普及」って何だろう?ということから始めてみようと思います。
まず「教育普及」という言葉。「教育」して「普及」するなんて、なんだかとっても偉そうですよね・・・。この「教育普及」係という名称自体が、すでに時代とズレている感じも否めません。最近は代わりに「ラーニング」という言葉も使われるようになり、美術館の「ラーニング」担当者という肩書もよく耳にします。さあ、では美術館の「ラーニング」とは何でしょうか?―――振り出しに戻ってしまいました。
「教育普及」や「ラーニング」と称される活動は、美術館のコレクションを軸に、その館のミッションに基づいて、利用者と美術館をつなぎ、人と美術のつながりを、時間をかけて育んでいく活動だと、私自身は捉えています。ですから、教育普及・ラーニングの仕事は、美術館の中で最も「人」に向かっていて、「人」と直接かかわることの多い仕事でもあります。
さて、ずいぶん回りくどくなりましたが、今年、教育普及係が担当した「夏休みこども美術館」で起きた2つの初めてを、ご紹介しようと思います。コレクションを基に、展覧会を通して、どのように利用者と美術の関係を結ぶ「初めて」を構築できたのでしょうか。
【初めて① やさしい日本語の作品解説文】
「初めて」の1つは、「やさしい日本語」の作品解説の制作です。当館では、福岡市在住の日本語を母語としない方を対象に、2022年からやさしい日本語を用いた活動を実施していますが、(やさしい日本語の活動については過去のブログをご覧ください)本展では、展示作品のやさしい日本語の解説文に初めて取り組みました。
これまでも「夏休みこども美術館」の展覧会では、こどもを対象に据え、さまざまなキャプション(作品解説文)を制作してきました。今回、展示作品と共に設置したキャプションには、作品の見どころやコンセプトと、担当学芸員がなぜその作品を本展に選んだのかの2点に絞って、小学校高学年を対象に設定し、150字程度の解説文を制作しました。
そして、その解説文を全てやさしい日本語で書き換えたものを、別途制作し、冊子にして設置しました。当初、作品横の解説文を「やさしい日本語」にすることも検討しましたが、当館の利用者層や英語併記などを鑑みて、別刷りの冊子形式を採用しました。
ここで1つ実例をあげてみましょう。展示室に設置した靉嘔(あいおう)《絵物語Ms. and Mr. Rainbow》の作品解説文(背景が青)と、やさしい日本語の解説文です。

展示中の靉嘔(あいおう)《絵物語Ms. and Mr. Rainbow》とキャプション

同作品の解説文(キャプション) 日英併記・小学5年生以上で習う漢字にはルビを振りました。

同作品のやさしい日本語の解説文(冊子形式で設置)
読み比べてみると、2つの解説文の違いがよくわかると思います。やさしい日本語では、分かち書きをし、全ての漢字にルビをふっています。また、1文を短くし、難しい言い回しを、やさしく言い換えています。例えば同作では「共通言語」という表現の言い換えに悩みました。
また、今回は外部のやさしい日本語の専門家(髙栁香代氏)に監修を依頼し、何度も推敲を重ねながら、最終的に全ての作品解説をやさしい日本語にしました。元の解説文から情報を抜粋するのではなく、基本的に同じ情報を載せることも心掛けました。
この冊子は、日本語が母語ではない方はもちろん、障がいのある方や、こどもを含め、どなたでも利用することができます。ぜひ手に取ってご利用いただけると嬉しいです。

展示室に設置した、やさしい日本語の解説文(冊子)
【初めて② 宇宙のイメージをデザインする制作スペース】
もう1つの初めてが、「宇宙にいきたい」の展示室の最後に設えた制作スペースです。今回は展示空間の最後に大きな展示壁を設置し、展示を見終えた来館者が、紙やマスキングテープで宇宙のイメージを表現し、壁に展示するスぺ―スを設けました。毎日増殖していく宇宙のイメージは、見ていてとっても楽しく、来館者がイメージした宇宙が形になって、最終的に壁面を埋め尽くすといいなと期待しています。

制作スペースの案内

制作スペースの様子(7月中旬)
展示室といえば、「美術館=展覧会」というのが、昔も今も一般的な美術館のイメージだと思います。例えば、当館が開館した1979年当時、展覧会を市民に見せてあげること(あえて上から目線な言い方をします)自体、美術館が担う主要な教育普及活動でした(※1)。それから47年。時代とともに社会における美術館の役割が変容し、来館者が美術館に期待することも変わり、美術館職員の意識も変化したことが、今回の展示室での「初めて」が実現した理由の一つと言えるのかもしれません。

来館者が制作した宇宙のイメージ(一部)
2つの「初めて」を振り返って感じることは、変化を恐れず、新しい価値観にも向き合うことの大切さと難しさ。そしてその態度が、翻って変わらないものの大切さも気づかせてくれるということ。これからも変化を恐れずに、新しい一歩を踏み出せる美術館の教育普及活動を継続していきたいと考えています。
※1 教育普及活動と展示室の関係性については、当館の『研究紀要14号.pdf』「対象者を軸にたどる福岡市美術館の「教育普及活動」 の変遷:①1979-1994」でも詳しく論じています。
(学芸員 教育普及係 﨑田明香)
2026年7月8日 12:07
みなさんこんにちは。7月に入り、本格的に暑くなってきました。そして2026年も下半期に入りました!早いですね〜。
さて、今年も「夏休みこども美術館」がスタートしました。福岡市美術館で1990年から毎年夏の時期に開催している教育普及プログラムです。今年のテーマは「宇宙」!今回のブログでは、なぜ宇宙をテーマにしたのかについて紹介します。
こどもの頃、こんな言葉を聞きました。「宇宙というのはとても大きくて、そんな宇宙に比べたら私たちの存在なんてちっぽけだ。だから、宇宙のことを考えていると自分の悩みなんてのは、たいしたことないように思えるよ。」当時の私は、この言葉が腑に落ちませんでした。宇宙がどれだけ広かろうと私の悩みは変わらずそこにあると思ったからです。
人間は大なり小なり悩みを抱えて生きているものでしょう。私も小さい頃から、とある悩みがあります。それは、自分のアイデンティティについてです。私は1歳になる前に日本に来ました。それ以来、こちらに住んでいます。自分が育った国は日本だけれど、国籍やルーツは日本ではありません。私は、いったい何人なのだろう…?普段は自分のアイデンティティについて意識をしていないのですが、ふとした瞬間にそれが悩みや苦しみとなって現れることがあります。そんな時は、宇宙人になれたらいいなあと思っていました。人間だから人種の分類がある、だけど宇宙人になれば人種も何もないだろう。人間である以上この悩みからは逃れられないと思ったので、人間であることをやめればこの悩みからは解放されるのではないかと考えていました。
ですが、その考えが揺らぐ出来事がありました。好きな漫画を読んでいた時「宇宙人から見たらこっちも宇宙人」という言葉が出てきたのです。その言葉を目にした瞬間、時が止まったように感じました。あんなになりたいと思っていた宇宙人に既に私はなっていたのか?それならなぜ苦しいままなんだ…宇宙人になることで人間であるがゆえの悩みから逃れようとしていた自分にとって、この言葉は気持ちを混乱させるものでした。自分1人では気持ちを整理できそうになかったので、兄に相談をすることにしました。すると兄は、私たちは宇宙の中で生きているのだから宇宙人だとも言える、と言いました。その言葉を聞いた時、先ほどまでのモヤモヤはどこかへ行き、気持ちが晴れたように感じました。なぜなら、宇宙を遠く離れた別世界に存在するものだと思っていた当時の私にとって、あの果てしなく広がる宇宙の中で自分が生きていると知った時、自分の内面に広がる世界さえも広がったような感覚を味わったからです。
この出来事があってから、「宇宙のことを考えていると自分の悩みなんてのは、たいしたことないように思える」という言葉の捉え方が変わりました。悩みそのものが消えることはないかもしれないけれど、宇宙の果てしなさや壮大さを想像することで、自分の心の持ちようはいかようにも変わるかもしれない。今回の展示がきっかけとなり、自分自身の内側にある世界が広がる機会となれば嬉しいです。
夏休みこども美術館2026「宇宙にいきたい」は8月30日(日)まで開催しています。関連プログラムであるワークショップへの応募は7月16日(木)までです。皆さんのお越しを心よりお待ちしております。

展示室の様子
(教育普及係 姜知潤)