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「名品展」をつくる難しさ

1階の松永記念館室で、毎年恒例の「秋の名品展」を開催中です(12月1日まで)。当館所蔵の松永コレクションの中から、秋から初冬の時節に相応しい「名品」を展示紹介しています。

ご存じの通り松永コレクションは大半が「名品」といえるものである上、季節感を重んじる茶の湯の世界で用いられた美術品が多いので、出品作品の選定にあたって困ることは殆どありません。しいていえば、出品候補が多すぎて20点以内に絞り込むことに頭を悩ませることであり、球界一の選手層の厚さを誇るソフトバンクホークスのスタメンを決める首脳陣の苦労を想う時でもあります。それにしても、こんな贅沢な出品作品選定に携わることが出来る幸せを感じずにはいられません。

さて問題は、作品選定を終えてからです。本当の難しさはここからです。リストアップした名品群をどのような順番で並べるか、という問題です。これが実に難しい。すべて名品なのだから、ただ並べるだけでいいのでは?というわけにはゆきません。長距離打者をただ9人並べるだけで最強打線が成り立つわけではないのと同じです。シンプルに絵画、書、彫刻、工芸というジャンルに分けて並べるやり方は無難です。しかしそれは、ジャンルという枠にはめ込むことで、ひとつの作品がもつ魅力が、隣の作品がもつ魅力によって相殺されてしまう勿体なさもはらんでいるのです。

「燃えよドラゴンズ!」の歌詞にあるように、一番打者が塁に出て、二番打者が送りバント、三番打者がタイムリー、四番打者がホームラン…といった理想の流れと同様に、ひとつの作品がもつ魅力が、次の作品の魅力につながり、さらに次の作品を引き立てる。そんな魅力の連鎖を生む、全体としてバランスのとれた名品展こそが、理想の名品展であると思っています。それを実現するためには、最初にリストアップした作品を何度も入れ替えることも必要となります。本展では茶の湯の世界をベースにして、出品リストと展示プランを考えました。

本展の四番打者?それは他ならぬ尾形乾山筆《花籠図》(重要文化財)です。まずは四番打者に良い仕事をしてもらうため、そしてスタメン全員が輝けるよう、精一杯組みました。会期も残りわずかですが、ご高覧いただければ幸いです。

(主任学芸主事 古美術担当 後藤 恒 )

尾形乾山《花籠図》(重要文化財)

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