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「欲しい」作品はありますか?

「アートフェアアジア福岡2021」が、博多阪急のイベント「HAKATA ART STATION」のメイン企画として始まりました(9月26日まで)。

「アートフェア」とは、いわば美術作品の見本市。美術作品を売買する画廊が集まりブースを出して、各社で売れ筋、または売り出し中の作家の作品を並べているもの。もちろん、そこに並んだ作品は、お客さんがその場で買うことができます。

欧米では、美術市場どころか美術界全体に影響を与える大規模なアートフェアが知られており、日本からもいくつかの画廊が出展しています。様々な国からコレクターがやってくるアートフェアは、国際美術展と並んでその先の美術界を占うものとして毎回話題となります。

美術市場規模の小さい日本のアートフェアはそこまでは成長してないですが、東京や大阪で開催されており、2015年から福岡の画廊関係者が中心になって福岡市でも開催されるようになり、話題を集めています。

そもそもコレクターの少ない福岡でどれくらい持ちこたえられるか?と当初は半信半疑だった私ですが、最近の美術動向に一端に触れることのできるまたとない機会で、しかも自身の好みやお財布情況に見合った作品を購入できるし、何より、本格的画廊の少ない福岡に期間限定とはいえ多くの画廊が集まるわけですから、当初より人気が上がってきているように見受けます。また今年は、市内中心部の再開発地域の仮囲いに作品を展開する福岡市主催の「福岡ウォールアートプロジェクト」と連携が生まれ、アートフェア会場内で入選作品が展示・販売されています。

様々なブースをざっと見たところ、ほとんどの出品作が絵画でしたが、その作品傾向として以下の点を指摘できるかと思います。

①アニメの絵のような人物表現が増えている。

②技巧を凝らして描いた花鳥風月主題の作品が目立つ。

③明るい色彩を使った作品が多い。

こう書いてみて、まあ確かに「売れ筋」はあるのだろうけど、作家の皆さんは「描きたいもの」がきちんと表現できているのかどうか、自分の作品の着地点を想定しているのか、といったことは気になり続けました。

若い作家にとっては、自らが現代社会の中で作家として生き抜く縁(よすが)としての市場的価値を得る機会となります。それがやがて、長い時間の中で淘汰され、歴史的評価を得る(すなわち、死後に彼・彼女の活動と作品が芸術的評価を得る)とつながるかどうか・・・?は、また別の話。

唐突ながら、ここでゴッホの話。ゴッホは生前1枚しか作品が売れなかった、というのはよく知られた話。しかし、彼の死後、ヘレーネ・クレラー=ミュラーといったコレクターが作品を収集し、やがて美術館となったことで現在の評価の一端につながりました。彼よりやや先輩となる印象派は、登場してすぐのころは多くの批判を浴びたものの、現在につながる印象派人気と評価は、当時の熱心な画商と個人コレクターが作品を購入し支えたからでした。19世紀末+20世紀初頭の話です。美術館が現在のようにあちこちにあったわけでもないし、また現在とは役割も違っており、同時代の美術を評価、収集することはありませんでした。

「美術館が収集したからすごい」ではなく「私が収集したのですごい」という価値観、もっと日本人は持っていいのではないかと思います。

(学芸係長 近現代美術担当 山口洋三 )

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