2023年4月13日 15:04
新型コロナウイルスの流行により、約3年間お休みをしていた当館ガイドボランティアによるギャラリーツアー。ギャラリーツアーは毎日(休館日を除く)11時と14時に実施しているツアーで、ガイドボランティアがコレクション展の展示作品から3点を選び紹介するというもの。コロナ以前は毎日実施していました。ボランティアさんたちにとっても、美術館にとってもとても長かったこの3年でしたが、ようやく4月11日(火)からギャラリーツアーを再開いたしました。
このギャラリーツアーの1つの特徴は、いわゆる作品解説ではなく、お客様と「一緒に」鑑賞するというところにあります。つまり、ボランティアが一方的に作品に関する知識を伝えることはせず、その場で初めて会ったお客様たちと、時間をかけてじっくり作品を鑑賞していきます。具体的には、作品のどんなところが気になったか、どんな気づきがあったかを参加者に尋ねながら共有し、鑑賞を深めていきます。当然、人によって作品の見方はそれぞれですが、他方、誰かと一緒に作品をみる楽しみって、経験したことがない方がほとんどではないでしょうか。ボランティアさんたちは、このツアーのために何度も研修をし、ツアー再開に備えてきました。
さて、4月11日(火)。ツアー再開初日です。ツアーの集合場所をのぞいてみると、緊張の面持ちを浮かべたボランティアNさんの姿が。実は、Nさんは、4年前のボランティア募集に応募してくださったのですが、ちょうど研修を終えたところで新型コロナウイルスの流行に見舞われ、3年越しのツアーデビューだったのです。いつもは、にこやかなNさんも、この日はソワソワと落ち着かない様子でお客様を待っていました。
さて、そこへ参加希望のお客様が2名やってきました。お2人とも、福岡市美術館は初めてとのこと。さあ、ここからNさんのツアーに同行してみましょう。
まず、最初にボランティアNさんが選んだのが、1階古美術展示室に展示されている野々村仁清《色絵吉野山図茶壺》。1階の展示室は自動扉で閉ざされ、外からは中が見えません。展示室へ足を踏み入れると、明るかったロビーから雰囲気のある薄暗い照明に変わり、その演出が「何があるんだろう?」と参加者の気持ちを高めていきます。
《色絵吉野山図茶壺》の前にたどり着き「まず、じっくりと作品を見てください」というボランティアNさんの言葉で、鑑賞が始まりました。参加者のお2人は、作品の周りをゆっくりと歩き、近づいたり、立ち止まってかかんでみたり、さまざまな角度から作品を観察していました。「何か気づいたことはありますか?」というボランティアNさんの問いかけに「山がある」とか「桜の花かな?」など、それぞれの発見を共有し、それをボランティアさんが繋ぎ合わせていきます。最後に参加者のお1人が「正面ではないかもしれないけど、私はこの位置から見るのが好き」と作品の斜めに立っておっしゃいました。もう1人の参加者も「本当。照明の当たり方で、この角度がきれいですね」と共感し、ボランティアNさんと3人で顔を見合わせ微笑んでいた姿がとても印象的でした。
さて、ツアーは次の作品へ。2階にある近現代美術室へ移動し、作品を2つ鑑賞しました。近現代美術作品も古美術作品と同様に、作品を一緒に見るというスタイルでツアーは進みます。3つの作品を鑑賞していく中で、ツアーを担当したボランティアNさんと参加者のお2人の距離感がどんどんと縮まっていくのが、皆さんの視線や表情、また向き合うつま先の方向などからよく伝わってきました。コロナ以前は、当然だった作品について展示室で話しをするという行為のありがたさ、そしてその楽しみを改めて実感する、このギャラリーツアーの再開でした。
今回ご紹介したガイドボランティアのツアーは毎日11時と14時に開催しています。当館のコレクション作品のみならず、ボランティアさんとの出会いもこのツアーの魅力だと、手前味噌ながら感じています。ぜひお気軽にご参加ください。
※ギャラリーツアーの詳細は下記URLをご覧ください。
https://www.fukuoka-art-museum.jp/event/3971/
(学芸員 教育普及担当 﨑田明香)