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コレクション展 古美術

春の名品展開催中です。

4月半ばより開催予定だった「春の名品展」(~6月14日(日))。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、会期の半分以上が休館となってしまいましたが、ようやく皆様にご覧いただく機会が訪れたことを大変嬉しく感じています。

本展出品作品の中でも特に人気が高いのが、宮本武蔵《布袋見闘鶏図》(ほていけんとうけいず、タイトルが長いので以下《闘鶏図》と略します)です。

宮本武蔵《布袋見闘鶏図》

争う二羽の鶏を布袋がじっと見つめる様子を描いたもので、ドラマや小説でもおなじみの宮本武蔵のイメージに相応しい緊張感あふれる作品に仕上がっています。ところで、当館には同じ主題の作品がもう1点所蔵されていることをご存知でしょうか?それがこちらの《鶏骨図》。

伝・梁楷《鶏骨図》

中国・南宋時代の画家・梁楷がてがけたと伝わります。実際の制作は元時代に下ると思われますが、少ない筆数で対象を捉える手法などは梁楷の画風を伝えるものです。

武蔵は《闘鶏図》の制作にあたって、この《鶏骨図》もしくはそれに類する作品を参考にしていると思います。ですので、今回の展示では2作品を並べて展示することによって、それぞれの違いを比べていただけるようにしています。そこで、本ブログではこの2作品の違いをご紹介いたします。

まずは《鶏骨図》から。この作品、控えめに言ってかなり変です。本作では闘鶏をみつめるのは、布袋ではなく数珠を持ったお坊さんになっていますが、顔には笑みを浮かべています。

つまり、この絵は殺し合う鶏を見ながら、にやにやしているお坊さんを描いているんです。完全にホラーです。ちなみに、闘鶏を描く作品として有名なものに六道絵があります。六道絵とは、人が死後に生まれ変わる六つの世界(天・人・修羅・畜生・餓鬼・地獄)を描いたもの。すごく平たく言うと、「悪いことすると地獄に落ちますよ」ということを伝えるための絵です。もちろん悪いことをした人が全員地獄へ落ちるわけではなく、罪の重さに応じて生まれ変わる世界が変わるというシステムになっています。闘鶏が描かれるのは「畜生道」、六道のうち、上から4番目(下から3番目)です。地獄に落ちるほどの重罪ではないけれど、そこそこの悪行といったところでしょうか。まっとうなお坊さんであれば笑って見ている場合ではないことは確かです。正直、どうしてこのような絵が描かれたのか全く見当がつきません。本図の作者はよほど屈折した感情を抱えていたのだろうか、とわずかに想像するのみです。

このようなよく分からない《鶏骨図》と比べることで、武蔵の《闘鶏図》の個性はより明瞭に捉えることができます。まず、武蔵の《闘鶏図》では闘鶏を見つめるのはお坊さんではなく神様である布袋です。最初からフィクションとして構想されているので「どうしてお坊さんが…」といったマジのツッコみは必要ありません。それから一番の違いは表情でしょう。

布袋は眉間に皺を寄せてなにやら考え事をしている様子。口元は若干微笑んでいるようにも見えますが、《鶏骨図》に描かれたお坊さんとは明らかに趣が異なる表情です。《鶏骨図》が「なんだかよく分からない絵」だとすれば、武蔵の《闘鶏図》は「なにか意味ありげな絵」ということもできそうです。

例えば、《闘鶏図》を所蔵していた松永耳庵翁は、争う二羽の鶏に当時の政界の主導権争いを重ね合わせ、布袋のような強力なリーダーの登場を熱望しました。このような「分かりやすさ」も《闘鶏図》の人気を支える要因の1つではないかと思います。

展示は6月14日(日)までです。是非会場で2作品を見比べていただき、その違いを実感してください。

(学芸員 古美術担当 宮田太樹 )

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