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65歳以上限定!いきヨウヨウ講座「のびのびアート鑑賞」

毎年3月に65歳以上限定のプログラム「いきヨウヨウ講座」を開催しています。早いもので9回目となる今回は「のびのびアート鑑賞」と題し、ストレッチするときにうーんと腕を伸ばすように、心と身体を広げるようなプログラムをしたいと企画しました。その内容は、さまざまな感覚を使って作品鑑賞をし、自分の気持ちをことばや形で表現してみようというものです。

今回は60代から80代までの皆さんが参加してくださいました。偶然だと思いますが、お1人で参加された方がほとんどで、始まる前はすこし緊張した様子もありましたが、そんな中プログラムのスタートの時間です。はじめは、いろいろな感覚を使っての作品鑑賞。当館のコレクション展示から、選んだ作品を一緒に鑑賞していきました。

インド更紗を鑑賞

はじめに、古美術企画展示室の「アジアの染織」展(~4/21)から、インド更紗(さらさ)を1点選び、全員で鑑賞しました。いわゆる作品解説によって受動的に鑑賞をするのではなく、対話型という方法で、参加者は能動的にじっくりと作品を観察していきます。「ハートの模様がある」「結婚式で使われた布かな」「黒い部分が気になる」など、作品をよく観察し、発見を共有していきました。「触ってみたら、木綿のような手触りかな」「触ってみたい」という声があがったところで、教育研究資料として収蔵した、インド更紗裂(さらさきれ)の登場です。実際に鑑賞した作品と近い時代の裂(きれ)にやさしく触れてみると、それぞれ微妙に異なる肌触り。「木綿だけど、なめらかで絹のように感じる」など、皆さんいろんな感想を口々に言いながらその感覚を確かめ合いました。

触って手触りを楽しみました

次は近現代美術のコレクション展示室へ場所を移し、サルバドール・ダリ《ポルトリガトの聖母》を鑑賞しました。今度は香りがテーマです。作品に描かれたさまざまなモチーフを見つけたり、キリスト教につながる意味を発見したり、最後にキリスト教にまつわる香りとして、乳香(フランキンセンス)の香りを嗅いでみました。香りを楽しみながら鑑賞するのは初めて!という声に包まれ、皆さんも興味津々でした。

乳香のにおいを嗅ぐ参加者

最後はザオ・ウ―キー《僕らはまだ二人だ-10.3.74》を選び、「音」をイメージしながら鑑賞をしました。3作品目になると、自然とみなさんが作品から連想される「音」やその場面を、次々に表現してくれて、多様なイメージを共有しながら1つの作品を見ることができました。

「音」をイメージして作品を鑑賞

さて、ここで突然配布された1枚の紙。何だろう?と戸惑う参加者たち。ここからは、参加者1人ひとりに1つ作品を選んでもらい、その作品を見て考えたこと、浮かんできた感覚や気持ちをたくさんメモしてもらいました。このメモが、後半の制作活動へとつながります。

メモを書き込む参加者の様子

お茶とお菓子で休憩タイム

お茶とお菓子で休憩を挟んだら、後半は作品鑑賞をして広がった感覚を、表現する時間です。大人になるほど、自分の気持ち、内面をそのまま表現する機会って、少なくなるのかもしれません。メモに残した自分の言葉を見ながら、少し客観的に自分の気持ちをとらえ、それをことばや形にしていきます。さあ、どんな表現にするか、用意された素材を選びながら、各自考えていきました。

素材を見ながら、表現方法を考えます

真剣な表情で制作中!

自分の気持ち、内面という、形のないものを表現するということ。最初は「えー!」「できない・・・」なんて呟いていた皆さんも、最終的には、私たちがびっくりするような創造をしてくれました。談笑しながら、ときに真剣な表情で、制作に没頭する参加者の態度からは、作品を鑑賞して感じた自分の気持ちという、目に見えないイメージを表現しようという意欲が伝わってきました。

最後に、全員でお互いの作品を見せ合って、いきヨウヨウ講座は終了です。アンケートでは「とにかく“いきようよう”とした気分になって楽しませてもらった」「他の人と話が出来たことが楽しかった!」「作品を見て、人それぞれ感じ方が違う事が大変おもしろく、気づきがたくさんあった」などの声が寄せられました。

メモと制作した作品

お互いの作品を見せ合いました

美術館で仕事をしていると、つい利用者を「高齢者」など属性で一括りにしてしまいがちですが、きっと次回の「いきヨウヨウ講座」を企画するときには、今回参加してくださった皆さんのことを思い出すでしょう。届けたい相手のことをイメージしながら「いきヨウヨウ講座」をこれからも継続していきたいと思います。

(学芸員 教育普及係 﨑田明香)

 

 

 

 

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