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現代美術家の先駆・藤田嗣治

10月17日より「藤田嗣治と彼が愛した布たち」展が開幕しました。

2016年、2018年と生誕、没後の周年が続き、立て続けに藤田嗣治の大規模な回顧展が他都市で開催されましたが、本展は主要作品を総覧する回顧展ではなく、「布」というテーマで藤田の作品を再照射するという、いわば「各論」に入る展覧会です。運営部長・学芸課長の岩永悦子が長年の染織研究の成果から藤田の作品を見直すという視点と趣旨に賛同いただき、コロナ禍にも拘らず本展には国内外の所蔵美術館、所蔵家のみなさんが貴重な作品貸し出しに応じてくださいました。福岡では中々見る機会のない戦争記録画も1点出品しています。つまり各論と言っても藤田の主要作品はほぼ網羅していますので、「藤田の作品に触れるのは初めて」というお客さんにも十分楽しんでいただけると思います。

 

私は、今回岩永部長をサポートする役で、広報物、図録の作成に関わり、関東地方の美術館、所蔵家を訪問して出品作品の集荷をしました。

藤田嗣治は作品だけでなくその存在自体に興味を持っておりましたので、スケジュール逼迫^^の中楽しみながら仕事を進めました。

本展のテーマと少しズレますが、私は、藤田は「現代美術のスター作家」の先駆ではないかと思っています。

「藤田嗣治(レオナール・フジタ)」と聞いて皆さんどんなイメージが浮かびますか。

乳白色の画面に描かれた裸婦?確かに。ではその中で特定の作品が思い浮かびますか?(多分そこは曖昧)

猫を抱いた丸メガネ、オカッパ頭の姿も同時に思い出すのでは?

実際その姿で描かれた自画像も今回出品していますね。

 

自分にしかできない技法で描く作品をトレードマークにして、服装や容姿まで自作した藤田に、例えば岡本太郎、草間彌生、横尾忠則、そして村上隆といった戦後か現代にかけての著名美術家の姿を連想するのはさほど的外れではないのではないでしょうか?さらにここにはサルバドール・ダリやアンディ・ウォーホルといった海外の美術家を加えてもいいでしょう。彼・彼女たちは、誰も真似ができない作品とともにその容姿のイメージがついて回ります。「作家そのもの」が作品。20世紀以降マスメディアが発達し、美術が大衆化していく中で美術家も「著名人」となっていきます。するとその人物像が注目を集め、ちょっとした発言や行動すら価値を持ち始めます。また若い美術家も藤田に注目。実際藤田は若い世代の才能にも注目し、海老原喜之助や岡田謙三を指導し、吉原治良や桂ゆきの才能を認めています(10/27から近現代美術室Aで開幕した「藤田嗣治と関わった画家たち」も合わせて是非ご覧ください。藤田の人たらしぶりがよくわかります)。

「セルフ・プロデュース」も現代の美術家として生き残って行くための重要な能力となっていったのです。

国の要請に従って多数の戦争画を渾身の力で描き、結果画家仲間から戦犯画家の汚名を着せられ、フランスに再度渡って国籍を変え「レオナール」と名乗るようになったことはまさか計算づくではないでしょうが、フランスと日本を股にかけての活動を振り返って見ると、その立ち振る舞いはあまりに劇的です。そして日本から持ち出した多数の染織品が終の住処に残されていたことを本展で知るとき、「画家は死んでからが勝負」という村上隆の言葉の深い意味を思い知るのです。

(学芸係長 近現代美術担当 山口洋三 )

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