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福岡市美術館ブログ

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風が舞った一年

みなさん、今年はどんな年でしたか?
私にとって今年は、公私に渡って風にまつわるアートプログラムに大きく関わった、そう、「風の年」でした。

今年7月1日にお披露目となった、インカ・ショニバレCBEによる≪ウインド・スカルプチャー(SG)II≫。まさに“風の”彫刻です。この作品の設置に私は深く関わっていました。設営作業から遡ること約2年前、海外の関係者とのメールのやりとりにはじまり、ロンドンにおける制作の進捗状況チェックのため、複数回に渡るオンラインミーティングでの通訳、輸送方法のスケジュール確認、そして安全にこの「ウインド・スカルプチャー 風の彫刻」が据え付けられるまでが、大きな一区切りでした。英語を介して、アーティスト側と美術館側のスタッフ相互の真剣なやりとりを通訳したり、自分なりの疑問点を見つけてそれをアーティスト側に投げては確認したりしていく、その過程に携わることこそが私の業務の醍醐味なのです。

作品設置当日の現場では、タブレットを手に持ち、安全に確実に設置を遂行できるようにロンドンのショニバレ・スタジオのスタッフとオンラインで動画を(右往左往して)中継していました。私は大工の血を受け継いでおり、いろんなアートの現場において、作品(群)が出来上がってくる瞬間や、作品(群)が素敵に設置されていく場面に携わることを無上の喜びとしています。そういった私の精神構造上、今にもインパクト・ドライバーを手に取り、職人さん達に交じって設置作業に参加したい衝動にかられましたが、かろうじて抑えました。

英語通訳者としてどうしても設置当日まで気になっていたのが、設営マニュアルに書いてあった「stabilizer(スタビライザー。安定装置、揺れ止め、などの意味)」の役割です。メールのやりとりの中で何度かショニバレ・スタジオの担当者に尋ねて、回答を得てはいたものの、なんだかまだ要領を得ない。「スタビライザーって、どのタイミングで、どうやって使うんやろか?」。私は英語通訳翻訳の係ですので、福岡市美術館の職員にも英語版マニュアルに書いてあることを正確に伝える義務がある。答えは設営時の職人さんたちがその場の作業で教えてくれました。その様子は、当館の二階に常設展示しているモニターにて、記録映像の中でご覧いただけます。全編約2分45秒のうち、約2分のところでしっかりと「スタビライザー」が登場して活躍しています。

(力学やモーメントに詳しい方には見つけやすいのではないかと想像しています。)
それにしても、この≪ウインド・スカルプチャー(SG)II≫、踊っているように見えませんか?

背骨の立ち具合、曲がり具合(英語でもこの作品の支柱を「spine〈スパイン、背骨の意味〉」と呼んでいました)、左右の布の拡がりが左右の手の軽やかな舞い、いまでも回りそうな造形の妙。そう、この彫刻がしなやかに踊っているイメージが文字通り、私に「纏わりつく」のです。

設置に関する事前の、机上の確認作業において、どこを正面としてそれをどの方角に向けるか検討した段階がありました。その際、約10枚の、一定の角度ずつ変えたシミュレーション画像を何度も繰り返し、順送りで私が見たせいもあるかもしれません、その時から、≪ウインド・スカルプチャー(SG)II≫は私の中で踊り始めたようです。

その他には、壱岐島、それと海の中道海浜公園で、それらの場所で風を感じ、そして新しい風を置いてきました(つもりです)。自分自身で風を見つけ、新しい風を作り、それを感じていただく。これからもみなさんとともに、こちらでもそちらでも気持ち良い風を感じられますように。

少し早いですが、どうぞ良いお年をお迎えください。

徳永昭夫(国際渉外担当員)

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