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高畑勲展、開幕。

4月29日、「高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの」(以下、「高畑展」)が開幕しました。日本のアニメーションシーンを牽引しただけでなく、広く映画ファンをも魅了してきた高畑監督の業績を、ほぼ網羅する内容です。初めて監督を務めた「太陽の王子 ホルスの大冒険」(1968年)、テレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」(1974年)、晩年の大作「かぐや姫の物語」(2013年)などは、高畑監督の代表作としてご存知の方も多いだろうと思います。

各作品の制作過程をしめす、企画書、絵コンテ、動原画、セル画、などのほか、本展の見どころは高畑監督が遺していた大量の未発表資料です。特に「ホルスの大冒険」のコーナーの制作過程を詳細に示す大量のメモ、スケッチなどは必見です。そこには、宮崎駿、大塚康夫、小田部羊一、森康二といった、稀代のアニメーターたちの筆跡を伺うこともできます。アニメに興味はあっても高畑アニメには通じてない、という若い世代の方こそ、是非本展に触れて、クリエーションすることの大変さとそれを支えた情熱のすごさを実感してほしいと願っています。

この「高畑展」は、2019年7月2日に、東京国立近代美術館で開幕し、翌2020年岡山県立美術館へ巡回しました。当初はそこで終わりだったのですが、巡回延長が決まり、当館への打診がありました。私は「そんなめぐりあわせもあるのか」と不思議な気持ちになりました。というのも、当館では、私自身が企画者の1人として他の5館の学芸員たちと企画開催した「富野由悠季の世界」を2019年6月に立ち上げていたからです。

つまり、この2展覧会は同時に企画準備が進行していたわけなのですが、私がそれを知ったのは2019年1月ごろだったと記憶します。

「機動戦士ガンダム」の総監督として知られ、現在では高畑監督、宮崎駿監督と並ぶアニメ界の巨匠と目される富野氏ですが、「アルプスの少女ハイジ」では、富野監督は高畑監督の元で絵コンテを担当していたのです(その一端を高畑展で見ることができます)。彼にとり高畑監督はいわば師匠格の存在。その2人の展覧会が、場所こそ離れているものの、ほぼ同時に開幕したのです。早速東京の「高畑展」を見に行きました(笑)。資料の展示方法やアプローチなどの類似点もあれば相違点もあり、興味深く観覧。アニメーションに限ったことではないですが映画の「完成品」をしっかり鑑賞することは重要なのですが、「研究」となれば、映像のみを見ているだけではわからない、監督の演出意図、作品に込められたメッセージなどを、普段は見ることのない文字資料やスケッチなどから読み取り、そしてそれを展示に落とし込まなければなりません。その大変さがわかるだけに、「高畑展」を準備されたスタッフの方々にはシンパシーを感じていました。さらに、両展覧会はそろって2020年度の「日本アニメーション学会特別賞」を受賞しました。

その展覧会を、当館で開催できることになったことは、偶然とはいえ、なにかのめぐりあわせなのではないか、と思わずにはいられません。そのめぐりあわせついで、ではないですが、6月20日には、富野監督を当館にお招きし、高畑監督についてお話をしていただくトークイベントも企画しました。

「富野由悠季、『赤毛のアン』を見ながら高畑勲を語る。」福岡市美術館(fukuoka-art-museum.jp)

このところ、当館以外でもマンガ・アニメの展覧会が目白押しとなっていますが、この分野の展覧会も、「質」を問う段階に入ったのではないかと思います。「美術館でアニメなんて」と思っている方にこそ、高畑展をお勧めしますよ! そして、展覧会を見終わったらぜひ、DVDなどで気になる作品の視聴をしてみてください。きっと見方が変わります。

高畑勲展会場写真(「アルプスの少女ハイジ」のコーナー)

(学芸係長 近現代美術担当 山口洋三 )

 

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