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福岡市美術館ブログ

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教育普及

夏休みこども美術館2026「宇宙にいきたい」開催中!

みなさんこんにちは。7月に入り、本格的に暑くなってきました。そして2026年も下半期に入りました!早いですね〜。

 さて、今年も「夏休みこども美術館」がスタートしました。福岡市美術館で1990年から毎年夏の時期に開催している教育普及プログラムです。今年のテーマは「宇宙」!今回のブログでは、なぜ宇宙をテーマにしたのかについて紹介します。

 こどもの頃、こんな言葉を聞きました。「宇宙というのはとても大きくて、そんな宇宙に比べたら私たちの存在なんてちっぽけだ。だから、宇宙のことを考えていると自分の悩みなんてのは、たいしたことないように思えるよ。」当時の私は、この言葉が腑に落ちませんでした。宇宙がどれだけ広かろうと私の悩みは変わらずそこにあると思ったからです。

 人間は大なり小なり悩みを抱えて生きているものでしょう。私も小さい頃から、とある悩みがあります。それは、自分のアイデンティティについてです。私は1歳になる前に日本に来ました。それ以来、こちらに住んでいます。自分が育った国は日本だけれど、国籍やルーツは日本ではありません。私は、いったい何人なのだろう…?普段は自分のアイデンティティについて意識をしていないのですが、ふとした瞬間にそれが悩みや苦しみとなって現れることがあります。そんな時は、宇宙人になれたらいいなあと思っていました。人間だから人種の分類がある、だけど宇宙人になれば人種も何もないだろう。人間である以上この悩みからは逃れられないと思ったので、人間であることをやめればこの悩みからは解放されるのではないかと考えていました。

 ですが、その考えが揺らぐ出来事がありました。好きな漫画を読んでいた時「宇宙人から見たらこっちも宇宙人」という言葉が出てきたのです。その言葉を目にした瞬間、時が止まったように感じました。あんなになりたいと思っていた宇宙人に既に私はなっていたのか?それならなぜ苦しいままなんだ…宇宙人になることで人間であるがゆえの悩みから逃れようとしていた自分にとって、この言葉は気持ちを混乱させるものでした。自分1人では気持ちを整理できそうになかったので、兄に相談をすることにしました。すると兄は、私たちは宇宙の中で生きているのだから宇宙人だとも言える、と言いました。その言葉を聞いた時、先ほどまでのモヤモヤはどこかへ行き、気持ちが晴れたように感じました。なぜなら、宇宙を遠く離れた別世界に存在するものだと思っていた当時の私にとって、あの果てしなく広がる宇宙の中で自分が生きていると知った時、自分の内面に広がる世界さえも広がったような感覚を味わったからです。

 この出来事があってから、「宇宙のことを考えていると自分の悩みなんてのは、たいしたことないように思える」という言葉の捉え方が変わりました。悩みそのものが消えることはないかもしれないけれど、宇宙の果てしなさや壮大さを想像することで、自分の心の持ちようはいかようにも変わるかもしれない。今回の展示がきっかけとなり、自分自身の内側にある世界が広がる機会となれば嬉しいです。

夏休みこども美術館2026「宇宙にいきたい」は8月30日(日)まで開催しています。関連プログラムであるワークショップへの応募は7月16日(木)までです。皆さんのお越しを心よりお待ちしております。

展示室の様子

(教育普及係 姜知潤)

コレクション展 近現代美術

美術館で、作品はどう守られているのか
アンゼルム・キーファー《メランコリア》公開修復のお知らせ

美術館の作品は、一度完成したら、その姿のまま長く残っていく。そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。

けれど、その裏側では、作品を未来へつないでいくための地道な調査や修復が続けられています。今回、福岡市美術館では、所蔵作品であるアンゼルム・キーファー《メランコリア》の公開修復を実施します。普段は見ることのできない、修復家が実際に作品と向き合う現場を間近で見られる貴重な機会です。(開催情報については末尾に記載しています。)

作品の基本情報や画像は、本ウェブサイトの作品紹介ページをご覧ください。

今回対象となる《メランコリア》は、1989年に制作された立体作品です。内部は木材とウレタンフォーム、外側は薄い鉛板で覆われています。
しかし2021年、この作品頭部で鉛の一部が膨張・崩壊し、脱落するという損傷が発生しました(図1)。

図1 頭部から鉛板の一部が脱落して出来た穴

調査の結果、原因は作品の外側ではなく内部環境にありました。内部の木材やウレタンフォームから放出された有機酸やホルムアルデヒドといったガスが、長い時間をかけて鉛を腐食させた可能性が高いことが判明したのです。

ただし、原因が分かったからといって、簡単に内部を作り替えることはできません。
現代美術の保存修復では、「元通りに直す」ことだけが正解ではなく、素材や変化そのものが作品コンセプトの根幹を担っている場合もあるからです。

キーファーは、15~16世紀の画家アルブレヒト・デューラー《メランコリアⅠ》や、錬金術の思想に着想を得てこの作品を制作しました。鉛は、金(ゴールド)へ変化していく始まりの金属として古くから特別な意味を持っていました。また、柔軟に変形する能力を持つ一方で、密度が高いためにX線等の放射線から保護できるという特質も、作家が特に鉛に惹かれた理由でした。

つまり作家にとって鉛は作品を制作するうえで重要な構成要素であると同時に、鉛が変成すると作家が知った上で、あえて採用しているため、作品のコンセプトにも着目しなければなりません。そのため修復にあたり、美術館と作家側に確認した上で修復方針を検討しました。

「積極的に修復するのか」「現状を維持するのか」「劣化そのものを受け入れるのか」。

検討の結果、損傷した部分のみを補修し、作品の現在の姿を維持するという考え方を採用しました(図2、3)。

図2 修復中

図3 修復後

そして現在、さらに劣化が進行した鉛板について、追加の修復作業を行うことにしました。

今回の公開修復では、作品の保存と向き合う現場そのものをご覧いただけます。

完成した作品を鑑賞するだけでは見えてこない、「作品は時間とともに変化し、その変化と向き合いながら受け継がれている」という事実。美術館が担うもう一つの活動そのものを、ぜひ鑑賞ください。

 

【公開修復概要】

日時:令和8年7月7日(火)~7月18日(土)
            午前9時30分~午後5時30分
            ※日曜・休館日を除く
会場:福岡市美術館 2階 近現代美術室C
参加費:無料(コレクション展観覧券が必要)
※修復家の休憩等により、作業を中断する場合があります。
※作業進行状況により、修復家へのお声がけをご遠慮いただく場合があります。

作品を「見る」だけでなく、「守る」現場に出会える期間限定の機会です。ご来館をお待ちしています。

(学芸員 作品保存管理担当 渡抜由季)

アートのまちづくり推進担当ブログ

美術館から330歩。Artist Cafe Fukuokaで出会う新しいアート

Artist Cafe Fukuokaをご存じですか?「カフェ」と聞くと、コーヒーを飲みながら一息つく場所を思い浮かべる方も多いかもしれません。

Artist Cafe Fukuoka

ところが、ここは少し違うんです。ここで行われているのは、未来を担うアーティストの活動や挑戦なんです。Artist Cafe Fukuokaでは、アーティストの成長・交流拠点として、アーティスト向けの相談会や情報提供、アートを活用したい企業とアーティストのマッチング、海外進出のための機会創出、福岡アジア美術館と連携したアーティスト・イン・レジデンス事業など、さまざまな創作活動の支援を行っています。

では、ここはアーティストのためだけの施設なのか?
いいえ、これも違うんです。旧舞鶴中学校を活用した施設内には、誰でも気軽に立ち寄れるコミュニティスペース、小さな作品から大きな作品・インスタレーションなどが展示できる教室を改修したギャラリーや体育館を改修したグランドスタジオを備え、作品展示やワークショップ、トークイベント、交流会などを開催しています。アートに詳しくても詳しくなくても大丈夫。ふらりと立ち寄るだけでも、新しい発見がある場所です。

福岡市美術館には、古美術から現代美術まで、時代を超えて愛されてきた素晴らしい作品に出会えます。一方、Artist Cafe Fukuokaでは、これからの時代を作っていくアーティストたちのエネルギーに満ち溢れた作品に出会えたり、彼らと交流したりすることができます。新しいアートの楽しみ方が、ここでは見つかるかもしれません。

そんな、Artist Cafe Fukuokaはどこにあるのでしょうか。福岡市美術館大濠公園口を出て、地下鉄大濠駅方面に池沿いに歩くこと330歩。ちょうど左手に大きな木がある場所で右を見ると森の中に続く階段が見えます。その階段を上がり切った瞬間、視界がパッと開け、旧中学校の校舎が姿を現します。少し分かりにくい場所にありますが、それもまた魅力のひとつ。宝探しのような気分で向かってみると、道のりそのものもきっと楽しく感じられます。ちなみに、美術館を出て大濠公園の園路まで、私の歩幅では50歩。それを参考に330歩を調整してください。階段が気になる方は少し遠回りになりますが、さらに進んで舞鶴公園三の丸広場からもアクセスできるのでご安心ください。

少し歩くと喉も乾くかと思いますが、Artist Cafeそこは抜かりありません。コミュニティスペースには、ちゃんと「カフェ」もあります。本格焙煎コーヒーをはじめ、さまざまなドリンクが楽しめますが、個人的にお気に入りなのは「エスプレッソトニック」。コーヒーの深いコクにトニックウォーター爽やかな香りとほのかな甘味、そして炭酸の心地よい刺激が加わった一杯で、暑くなるこれからの季節に特におすすめです。

カフェもあるコミュニティスペース

福岡市美術館で作品を楽しんだあと、少しだけArtist Cafe Fukuokaに足を伸ばしてみませんか。おいしい飲み物と、これから羽ばたいていくアートやアーティストの出会いが、きっと皆さんを待っています。

Artist Cafe Fukuokaイベント情報 
Artist Cafe Fukuokaへのアクセス

(アートのまちづくり推進担当 高橋伸和)

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