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ファミリーDAY2022「屏風をつくろう!」をやってみた!

 こんにちは。秋からだんだん冬に近づいているなと感じる季節になってきましたね。私は、飼い猫つゆちゃんを「つゆたんぽ」と称して日々暖を取っています。

 さて、10月19日のブログでご紹介した「ファミリーDAY」ですが、無事11月3日(水・祝)から6日(日)まで開催されました。今日のブログでは、そのファミリーDAYで私が担当したワークショップ「屏風をつくろう!」を、企画から実施までレポートします。

 私はこの4月に着任してからさまざまな教育普及事業を体験してきましたが、実は自分がメインでワークショップを担当するのは今回が初めてでした。夏休みこども美術館がひと段落してファミリーDAYの準備に切り替わった際のミーティングでのことです。上司から言われました。「八並さんもなにかワークショップを一つ考えてね」と…。いつかこんな日が来ると思ってはいましたが「ひえー」と少しプレッシャーを感じたものです。

 上司からは「ワークショップの内容は、ファミリーDAY期間中に展示しているコレクション作品に関連するように」と、言われましたが、このときはまだ7月末。ファミリーDAY期間中の作品展示はまだ先のことです。年間スケジュールを眺めてみたものの、新人の私は、まだ実物を見たことのない作品が多く、なかなか展示のイメージが湧きません。
 そんな中、「屏風絵の世界」展が目につきピンときます。当館所蔵の屏風は見たことがないけれど、屏風を見たことはあるのでなんとかなるのでは?と安易に考え、屏風のワークショップにすることにしました。
 そうと決まれば、どんな作品が出るのか確認です。「屛風絵の世界」展を担当している古美術のM学芸員に出品作品を尋ねに行きました。すると、半分くらいは決めたけど、まだ全部は決めていないとのこと。どうしよう?と思っているところに、M学芸員から「収蔵庫に作品を見に行くので、教育普及のみなさんも一緒に来ますか?」というお誘いが!なんと!展示が始まる前に実物の屏風作品を見るチャンス到来です。
 私は収蔵庫に入ることは滅多にないので、着任後の館内案内振りの古美術の収蔵庫でした。半分緊張しながら、半分わくわくしながらM学芸員に言われるがままに屏風を出しては見て納め、出しては見て納め…。 “屏風絵の中に描かれている屏風”を探し出し、どのように飾られているかを調査しているM学芸員を横に、私は「この人の服はおしゃれだな~」など、ただただ描かれているものを眺めて楽しんでしまいました。何より、展示室ではガラスケースに入ってしまうので、至近距離で裏の表装まで見られるこの機会を満喫しました。

 そこから、ワークショップの流れを考え、屏風の制作過程を自分たちでも作ってみながら体験し、試行錯誤を重ねました。当初は、私が大学生のときに学んだ屏風が題材の授業をヒントに、画面が折れ曲がりにより絵に奥行きが生じるという屏風の特性をテーマにしようと思っていました。しかし、試作を進めていく中で上司や先輩から「なんかワークショップというより授業みたいだよね。せっかく実物見たんだからもっとそれを活かしたら?」と言われ、今度は屏風の「紙蝶番(かみちょうつがい)」という仕組みに注目することにしました。総館長にも相談したところ、「紙蝶番は日本の大発明!」と絶賛していたので、テーマを紙蝶番に変更しました。

 そして、またまた試作をしてみました。「屛風絵の世界」展の出品作品はすべて6枚の絵がつながっている六曲の屏風(下の写真を参照ください)なので、試作でも六曲のミニ屏風を作ってみたのですが…実践してみると6枚もつなげるのはなかなか大変です。それで、仕組みがわかればいいと割り切って、ワークショップでは四曲の屏風をつくることにしました。
 内容が固まると、次はワークショップで使用する材料を購入したり、リハーサルをして実際の流れを確認したりして、準備をしました。

画面6枚の屏風が1つだけの六曲一隻の屏風(《韃靼人狩猟図屏風》江戸時代17世紀)

 そして、いよいよ迎えた本番の11月6日。午後からのワークショップに備えて、午前中にこのワークショップを手伝ってくれるボランティアさんと博物館実習生さんに、流れや屏風の扱い方の説明をして一旦は解散。ボランティアさんと実習生さんには「屏風をつくろう!」までの時間は他のプログラムのお手伝いに行ってもらいました。そして、私は何をしていたかというとソワソワと館内をぐるぐるぐるぐる…。先輩学芸員に「落ち着いて、大丈夫だから」と笑われ、当館のボランティアさんに「がんばれー!」と励まされ、ワークショップ開始までの時間を過ごしていました。
 
 12時45分、受付を始めると続々とワークショップの抽選に当選した参加者の方が来られ、ソワソワが増していきます。13時にワークショップが始まり、初めに挨拶やスタッフの自己紹介を済ませて、まずはそもそも屏風ってどんなものかを確認すべく「屏風絵の世界」展を見に行きました。

円山応挙(1733-1795)《竹鶴・若松図屏風》(1772年)を鑑賞

 展示室では1点だけ円山応挙の《竹鶴・若松図屏風》を見ました。参加者の方に気づきや感想を問うと、「右側の鶴はこっちを見てる」「鶴の羽の模様がぷっくり盛り上がってる」と子どもたちからしっかり観察しているとわかる意見が出てきました。さらに大人の方からは「絵が折れ曲がっているから竹や松に奥行きを感じる」と屏風の特性の核心を突いた意見も出ました。

 作品を味わったところで本題の屏風の仕組みに移ります。ワークショップ会場に戻って、今度は《韃靼人狩猟図》の複製を観察して、屏風の仕組みについて考えます。ここでもみなさん鋭い観察眼で「周りが硬そう、頑丈にするため?」「絵と絵のあいだのところは切れ込みがある」と細かく観察してくれました。

《韃靼人狩猟図屏風》(複製)を使って屏風の仕組みに着目して鑑賞

 絵と絵のあいだのところは「オゼ」というのですが、そこに切り込みがあるという気づきが出たところで、次の話へ移ります。「実は屏風は山折りにも谷折りにも折れます。これが今日のワークショップの重要なポイントです。屏風をつくる前に、まずその仕組みを考えてみましょう。」と呼びかけて、2枚のスチレンボードと和紙を参加者に渡しました。そして、それらを用いてどうやって屏風がつながっているのかを考えてもらいました。 

とりあえず和紙を切って、貼ってみる

みなさん、とても真剣に取り組んでくれ、紙蝶番ではないけれど別のすごい発明になるんじゃないかな⁉という案も出てきました。脳トレが済んだところで今度は答え合わせタイムです。紙蝶番の仕組みを参加者に解説して、いよいよ四曲一隻の屏風をつくっていきます。

紙蝶番の実演中。こんなに熱いまなざしを注がれていたとは…

 まずは、屏風の本体を作るためスチレンボード4枚を紙蝶番の仕組みを使ってくっつけます。この前に紙蝶番の仕組みを説明しましたが、見てみるのとやってみるのでは違いがあり、悪戦苦闘する参加者の方もいました。この工程だけでもしっかり屏風のかたちになり、「お~!」と感嘆の声もあがっていました。次に、作品の顔となる絵の部分、本紙を貼っていきます。今回は本紙として、所蔵作品の図版やぬりえ、そして自分で絵を描きたい人のために白い紙を用意しました。みなさん、それぞれ好きなものを選んで絵を描いたり、屏風に貼りつけたりしていました。
 本紙を貼りつけたところで、縁(へり)を選びます。縁とは、本紙のまわりに貼って、本紙を守り、かつ引き立てる役割をする部分です。縁には色画用紙やいろいろな柄の包装紙も用意しました。自分の屏風の絵に合うのは何かな?とたくさんの包装紙を絵にあててみて試行錯誤する人、直感でこれ!とすぐ決める人も。制作過程でも個性が出ます。本紙に描き込みを加えたり縁に飾り付けをしたりする方もいて、みなさんこだわりの詰まった屏風をつくることができていました。出来上がった屏風は展示作品より小さいものですが、お家のインテリアにぴったりなのではないでしょうか。

本紙に絵を描いている様子。縁が上下左右で異なる柄でおしゃれです。

完成作品。本紙の馬と虎の色が縁の金色とマッチして素敵な屏風ですね。

 ワークショップの最中も実はソワソワが止まらなかった私。「八並さんが焦ると、参加者に焦りがうつっちゃうよ、落ち着いて」と上司からも言われるほど焦っていたようです。自分でも反省点だらけだと思いました。実施に至るまでの過程でも、ここではあっさりと書いていますがたくさん迷走もしました。しかしながら、アンケートには「熱中して2時間たつのが早かったです!」「今日は来てよかったなと思いました」とたくさん嬉しいお言葉を書いてもらえて、とても思い出に残るワークショップ立案・実施デビューになりました。
 紙蝶番の仕組みについては、12月18日まで開催中の「屛風絵の世界」展でも解説がしてあります。みなさんもぜひ展示を見て、屏風の仕組みに迫ってみてくださいね。

(教育普及専門員 八並美咲)

 

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