2022年5月26日 16:05
-5月31日(火)から「田中丸コレクション 九州やきもの風土記 陶器編」が始まります。そこで、今回のブログに、田中丸コレクションの久保山炎学芸員より文章をお寄せいただきました。-
「この水指を茶会で使うと雨が降るよ」
私が田中丸コレクションに入って間もない頃に前任者から教わったことです。
この時の私には、それが冗談なのか本当の事なのかは知る由もありません。
それから一年が過ぎ、実際にこの水指を茶会で使うことになったのです。ちょうど木々の葉がみずみずしい若葉の時候で、この水指を使うのに最もふさわしい季節です。
茶会当日の朝、天気予報は晴れ。
雲一つない青空でとても雨が降りそうな気配は感じられません。
ところがです。
お昼も過ぎた頃から、しとしとと雨音が聞こえだしたのです。
しばらくして障子を開けると外はあたり一面、白い雨で煙り、薄緑色の若葉がぼんやりと滲んで見えるではありませんか。
まるで水指の釉景色と同じような光景に一同感激し、その場に思いもよらない詩的な趣を添えたのです。
それ以来、前任者と同じように説明しています。
「この水指を茶会で使うと雨が降るんですよ」と。
その「若葉雨」を5月31日(火)から展示します。
今回は「九州やきもの風土記 陶器編」ということで、九州各地の陶器窯を国ごとに分けその歴史や特徴を紹介します。
なお、ご来館の際は念のため、折りたたみ傘を持ち歩くと安心です。
8月28日(日)まで。
(一般財団法人田中丸コレクション 学芸員 久保山炎)