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KYNE×福岡市美術館 ことのはじまり

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美術館のリニューアル時に、ひとつの壁が「真っ白」に生まれ変わりました。2階コレクション展示室の出口に向かう13mの壁です。この壁は、「いつかここに壁画ができたらいいね」という期待をのせて、コンクリートの壁から変身したのです。

福岡市美術館がKYNEさんに注目したのも、リニューアルの準備の頃でした。アプローチを試みるもなかなか届かずで、結局オープンを迎えます。意外な方の引き合わせでKYNEさんと会うことができたのは、今年の1月。KYNEさんも美術館に関心を寄せていただいていたとのことで、美術館にも足を運んでくださいました。いつか、なにか面白いことができたらいいですね、と話し合い、ではまた改めて意見交換をしましょう、とお約束しました。

それから間もなく、コロナが世界を覆います。美術館も休館し、やっと再会できたのは、6月。最初にお会いした時には、想像もできないような世の中になっていました。短い間に、KYNEさんは参加予定のアートフェアが中止になり、美術館も開催を断念せざるを得なかった展覧会がありました。今年あきらめざるを得なかったことがあるのなら、新しく生まれるプロジェクトがあってもいいじゃないか。「いつかでなくて、今だ。」と、プロジェクトが転がり始めました。

「何か面白いこと」のひとつとして「13mの白い壁」についてもお話したところ、それがもっともKYNEさんにフィットしたようです。下絵の制作期間を経て、美術館での作業がスタートしたのは8月下旬でした。KYNEさんに制作に集中してもらうために、あえて「今、制作中です」とは広報せず、静かなスタートを切りました。たまたま制作中のKYNEさんに遭遇した方も、黙々と制作するKYNEさんの背中を静かに見守ってくださっていました(KYNEさんの制作の様子は、美術館のyoutube チャンネルでもアップしています。ぜひ、ご覧ください。)

台風一過の9月9日、壁画の公開がはじまりました。出来上がってみると、この壁でしか表現できなかったシチュエーションが展開していました。横たわる女性は、ただ横たわっているだけでなく、建物のガラス越しに外を見ている。外には公園が広がっているけれど、出られない。窓の内側で、ぼんやりと外をながめている。という、出かけたいけど出かけられない、「公共性と自由」(この作品のテーマです)のはざまにいる私たちの状況が、鮮やかに写し取られていました。

美術館から帰っていく人々を、彼女はどんな思いで見ているのでしょうか。

(運営部長・学芸課長 岩永悦子)

 

追伸
KYNEさんは、福岡市美術館の作品のなかで好きな作品として、ナムジュン・パイクの「冥王星人」をあげておられました。かつて、パイクの他の作品をキャナルシティなどで見てワクワクしたそうです。現在、福岡市美術館で展示中のヘンリー・ムーアや草間彌生も福岡市内のパブリック・アートとして体験していたからこそ、身近に感じるとのこと。アートを訪ねて、美術館の外から内へ。また外へ。見るたびに、なにか変化が起こるかもしれません。

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