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企画展

伝説の「目利き」吉村観阿の展覧会、
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古美術企画展示室にて企画展「生誕260年 世を観る眼 白醉庵・吉村観阿」を開催中です。
展覧会情報

ポスター

会場風景

吉村観阿(1765-1848)は江戸時代後期に優れた「目利き」として知られた人物。観阿はそのまま「かんあ」と読みますが、口に出すと読みにくくて「かんな」と呼ばれることも多いです。
江戸の両替商の家に生まれ、物心ついた頃から家業は火の車でした。若旦那となって立て直しに奔走するも断念し、妻子を残して34歳で剃髪、隠棲します。その後5~6年のうちに大名茶人・松平不昧に資質を見込まれて交流を重ね、目利きとしての能力を磨いていったようです。不昧の没後は新発田藩溝口家に出入りし、蔵品の鑑定や取次ぎ(道具を見出して、納めること)で活躍しました。とくに10代藩主で博学多才の大名として知られた溝口直諒(翠濤)に寵遇され、深く交流したことが知られます。かくして目利きとしての名を江戸中に轟かせた観阿は、84歳で没するまで、酒井抱一をはじめとする様々な文化人と交流しました。
以上、なんとも不思議な経歴です。両替商の若旦那が出家し、数年後には松平不昧という大名茶人と交流を始めるというのも驚きですが、これには不昧の室(妻)が、観阿の家業を傾けるきっかけとなった相手先である仙台藩伊達家から迎えられていることから、その浅からぬ因縁が指摘されています。また「目利き」といっても美術商であったわけではなく、どのようにして生計を立てていたのかも詳しいことは不明ですが、少なくとも道具の価値を見極める才能をもった人物の中でも、最も金銭の利害が生じにくいニュートラルな存在としての目利きとして信頼を重ねていったものと思われます。
観阿は多くの作品(多くは茶の湯道具)を見極め、箱にサイン(箱書き)をしています。後世、観阿の箱書きのある作品は間違いがないという評判が広まって、その箱書き自体が価値となり、作品本体の価値を一層高めてきました。
本展は、そうした観阿の箱書きを伴う茶道具を中心に、その生涯と美意識に迫る展覧会です。観阿の生誕260年にあたる本年度において、吉村観阿研究の第一人者である宮武慶之さん(同志社大学京都と茶文化研究センター共同研究員)の監修により実現した、恐らく初めての企画展となります。
生誕260年とは、周年をうたうにはなんとも中途半端です。ただ、一般にはほとんど知られていないこの人物の生きた時代をすぐに知っていただけるよう、あえてタイトルに加えることとしました。
本展の章構成と概要は次の通りです。

・第1章:松平不昧との交流―目利きを学ぶ―
 観阿が参席した不昧の茶会に使われた道具や、不昧から贈られた道具などを展示します。

《菊桐蒔絵棗(高台寺蒔絵)》桃山時代 北村美術館蔵

・第2章:不昧没後の観阿―溝口家との交流―
 溝口家旧蔵品の中から、観阿が同家に取り次いだことを示す道具を中心に紹介します。

《白呉州獅子蓋香炉》中国明時代 個人蔵

・第3章:目利きのこころとまなざし
 観阿の仏教者としての側面をとりあげ、自身が所持、愛蔵した道具、それらを用いた茶会の取り合わせを再現します。

原羊遊斎作《桃蒔絵細棗》江戸時代 個人蔵

・第4章:江戸における観阿の交流と周辺
 観阿自作の茶碗・茶杓をはじめ、観阿とその周辺の茶の湯を通じた交流を物語る資料を紹介します。

吉村観阿作《白楽茶碗 銘「霜夜」》江戸時代 北方文化博物館

・第5章:冬木屋旧蔵品と観阿の周辺
 多くの名品を集めた江戸の冬木屋旧蔵品と観阿の関係を起点に、美術品をとりまく状況を作品とともに紹介します。
全国各地の所蔵家の方々の出品協力をいただき、出品総数は53件(出品作品リスト)です。

本阿弥光悦《瓢箪香合》江戸時代 北陸大学蔵
※12月17日(火)より公開予定(都合により予定変更することがあります)

ちなみに冒頭に掲げた本展のポスターのデザインは、グラフィックデザイナー奥村靫正さんに手掛けていただきました。畳の縁を効果的に配した構図で、四角囲みのタイトルとキャッチコピーの部分は、茶道具の箱の貼紙を連想させます。全体に彩度を落としながら、よくみると茶碗の周囲は段々とさらに彩度が落ちてゆくようグラデ―ジョンがかけられています。見れば見るほど江戸時代の茶室の空間に引き込まれるようです。
展覧会図録も作りました。こちらは2022年の『明恵礼讃 “日本最古の茶園”高山寺と近代数寄者たち』展の図録を手掛けていただいたグラフィックデザイナー松浦佳菜子さんにお願いしました。表紙はシルバーを主体に、奥村さんのポスターの世界観に沿ってシンプルでありながらキラリと輝く存在感。読みやすさを追求したレイアウトはもとより、作品写真は茶杓や茶碗などの一部を原寸大で表示するなどの工夫もされています(B5オールカラー、128頁、税込2500円)。

表紙

見開き

展覧会は2025年1月19日(日)まで。ご来場お待ちしております。

(学芸課長 後藤 恒) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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