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ことしもお世話になりました2024

《+ と −》 1994/2024年/ ステンレス鋼、モーター、砂

 

あんまり寒くないので、年の瀬感があまりなかったのですが、ここ数日の冷え込みで、ああ、年末だ。年の暮れだ。とリアルに感じています。おまけに風邪もひいて、急に年末あるある過ぎるシチュエーションに。みなさんも、気を付けてくださいね。

さて、今年も得難い経験、忘れ難い記憶は、多々あるのですが、「公私ともに」と考えた時に浮かんでくるのは、やはり、モナ・ハトゥムの《+と-》が当館2階のコレクション展示室のロビーに恒久展示されたことと、モナ自身が30年ぶりに福岡に来てくださったことです。

今では世界のトップアーティストとして、押しも押されもせぬモナ・ハトゥム。彼女が《+と-》の大型バージョン(最初に作られたのは、直径30㎝ほどでした)を世界に先駆けて福岡で制作・公開したのが、ちょうど30年前の1994年。パフォーマンス・アートやビデオ・アートで知られていた彼女ですが、80年代から90年代にかけては、インスタレーションでの試みが注目されていました。

「ミュージアム・シティ・天神 ‘94 [超郊外]」という福岡の街なかと郊外で開催された展覧会の出品作家のひとりとして、福岡で滞在制作をし、あの作品を仕上げたのです。そして、それは、今に至るまで、「モナ・ハトゥムの代表作」のひとつであり続けています。

美術館でぜひ収蔵したい作家をリストアップしていた時も、モナ・ハトゥムはドリームリストの作家でしたが、福岡にゆかりのある作家だから!と担当者が思い切って連絡をしたところ、なんと前向きな返事が!「FUKUOKA」という土地との絆はずっとつながっていたのです。

今回、福岡に作品を設置することへの彼女からの条件は、これまでのように砂をたたえた器を床の上に乗せるのではなく、床を掘り込んで砂を入れるという、作品と建築が一体化するようなアイディアを実現できるか、ということでした。1979年開館の美術館は、タイル一つをとっても特注品で一度壊したら二度と手に入りません。また、作品を動かすことはできず、美術館が存在するかぎり、展示され続ける特別な作品となります。

学芸会議で話し合いました。美術館の将来を決めてしまうような、それだけの覚悟をして設置するのか?全員一致で、GOでした。そして、その決意に、彼女はすばらしいスピーチで、こたえてくださいました。(美術館ブログ「感動的な作家スピーチ~モナ・ハトゥム《+と-》を恒常展示しました~」をご覧ください)。
みんなで、未来に向けてモナ・ハトゥムの作品を設置する決断ができた。これが、今年の「公」の喜びでした。

では「私」の喜びとは?30年ぶりにお会いしたモナ・ハトゥムという方のお人柄に触れることができたことです。作品については、一切妥協はないのですが、お茶をしたりご飯を食べたり、日常のなかでの彼女は、とても穏やかで、まわりをよく見、よく話し、よく笑う方でした。そして、いつも、きちんと身だしなみにも気を使われていることや、ささいなこと―ちょうちょが飛んでいることとか-にも、気持ちを向けられているお姿を見て、「こんな風になりたいな」と思わずにはいられませんでした。無理ですけど。でも、そんなに素晴らしい、と思える人に出会えたことが、本当に嬉しくて。

来年も、新たな出会いがあると信じて、2025年を楽しみにしたいと思います。
ぜひ、みなさま、体調にはくれぐれも気を付けられて、よいお年をお迎えください!

(館長 岩永悦子)

追伸
今年最後のモナ・ハトゥム関連でうれしかったことは、福岡でコンサートをされたグループのうちおふたりが福岡市美術館に来てくださって、おひとりがインスタグラムに作品の写真をアップしてくださったこと(動画の方が、モナ・ハトゥムの《+と-》、画像の方がインカ・ショニバレCBEの《桜を放つ女》ですね)。そして、ファンの方が、作品を見に来てくださったことです。本当にありがとうございます!そして。またいらしてくださいね!

 

 

 

 

 

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