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美術品と箱のはなし①


突然ですが、この箱は一体何でしょうか?

中身は…?

じゃーん。

実はこれ、「トライウォール箱」と呼ばれる美術品輸送専用の箱なんです。(画像は絵画用)

今回は美術館の影の立役者の一つ、美術品の輸送箱についてご紹介いたします。

輸送箱はその名の通り輸送を目的に作られたものです。
例えば美術品を他の美術館に貸し出すとします。その際に作品を、人の手を介し、外に持ち出し、車に乗せて移動し、貸出先の施設で箱から取り出す、という一連の流れを往復分行います。この時、急激な温湿度変化や振動・衝撃といった様々なリスクが美術品に与えられます。
そこで複層構造(二枚重ねや三枚重ねがあります)の段ボールやウレタンフォームを加工し、その美術品のためだけの輸送箱をオーダーメイドすることで、外部からの影響を緩和させることが出来るのです。
そしてこのような輸送箱は、美術品の保存状態や技法・材料の特性の他に、移動距離や手段によって箱の形を段ボールやクレート(飛行機での移動に耐えられるくらい頑丈)へと変えていきます。

箱がクレートレベルにまでなると美術品の実寸より3倍近い大きさになることも…!
それでは、クレートを見てみましょう。

これがクレートと呼ばれる箱です。
必要に応じて撥水効果のある塗料を施すこともあります。
ちょっと話が逸れますが、聞いた話によると海外の美術館はそれぞれ独自性を持たせるべくオリジナルカラーの塗料を塗っているのだそう。

では、手前の木箱を開けてみましょう

中はこんな感じ。

飛行機の離着陸や高度での気圧変化に耐えられるよう、より分厚いクッション材が使われています。ものによっては箱の中の箱の中に箱、と三層構造になっていたりすることがあります。
そうすると、クレートが大きすぎて道中のエレベーターにそもそも載らないなんてこともたまにあります。展示室に美術品がたどり着かない、なんて大問題。そんな時はクレートから美術品をあらかじめ取り出して裸の状態で展示室へ運ぶという手段を選びます。ただし、むき出しということは外部の影響を直に受けることにもなるので、クレートに入っていた時以上に細心の注意が求められます。
輸送箱ひとつでこれだけの意味やドラマが詰め込まれているんですね。

普段皆さんが何気なく郵送している荷物も梱包に様々な工夫がされているはず。ぜひ一度、箱に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

他にも美術品の保存箱というものもありますが、これはまた次回にご紹介。
現在、バックヤードでひたすら保存箱を作り続けている渡抜がレポートしました。

(学芸員 作品保存修復担当 渡抜由季)

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