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ファミリーDAYで考える、美術館という「場」

 緊急事態宣言もあけ、まだまだ油断できないものの、新型コロナウイルス感染症の患者数もずいぶん減ってきて、なんとなく解放感を味わっている人も多いのではないでしょうか。気が付けばもう秋ですし、秋と言えば、食欲、読書、スポーツ、そして芸術の秋ですよね。実は、福岡市美術館では、毎年11月3日の開館記念日とその前後の休日の3日間、ファミリーDAYを開催しています。この期間中は、親子で一緒に美術館を楽しんでもらうために、館内のあちこちでワークショップやギャラリートークが同時に行われます。今年はどんなプログラムが行われたのか、ちょっとここでご紹介したいと思います。今年、参加し損ねた!という方は、ぜひ、来年の参考にしてください。
 さて、冒頭で「新型コロナウイルス感染症の患者数もずいぶん減ってきて・・・」と書きましたが、しかし、まだまだ対面のワークショップやギャラリートークを行うのは難しい状況です。そこで、今年のファミリーDAYも、オンラインギャラリートークを盛り込んだり、作品紹介動画も作ってみました。しかも、今年はどちらもボランティアさんにチャレンジしてもらいました。


ボランティアさんによる作品紹介動画「おうちでアート1分コレクション紹介」

 展示室では、参加者に作品についてのクイズを解いてもらう「かいとうキッズ 美術館の謎をとけ!」と、双眼鏡などを使って作品をじっくり観察してもらう「アート観察隊」の2種類のワークシートを使ったプログラムを展開しました。親御さんと一緒に一生懸命クイズを解いたり、夢中で双眼鏡を覗いていろいろな作品を拡大して見たりしている子どもたちを見ていると、少し日常が戻ってきたような気もして、こちらも嬉しくなりました。

 そして、人数を絞ってですが、対面でのワークショップも2つ行いました。一つは、「アフリカンプリントなバッジをつくろう」です。講師は福岡教育大学の加藤隆之先生がつとめてくださいました。このプログラムは、今年7月に設置されたインカ・ショニバレCBE《ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ》を見ながら、当館所蔵のアフリカンプリントをもとにした「ぬりえ」に、用意された4種類の画材から好きな色を選んでぬり、それをさらに缶バッジにしてしまうというものです。以前ブログでも紹介されたかと思いますが、《ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ》自体が、当館所蔵のアフリカンプリントを元に構成されています。一枚の布が彫刻になったことを想像しながら制作して欲しいと缶バッジマシーンは、もちろんこの作品が見える場所に設置しました。作品を見ながら、「ぬりえ」を缶バッジにしていく子どもたち。制作後は、しっかり胸に缶バッジをつけて他のプログラムに参加していました。

 そして、もう一つのワークショップも、同じく《ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ》にちなんだ「アーティストと一緒に風の彫刻をつくろう!」というもの。今、とても精力的に個展やグループ展に出品されている、八女市在住のアーティスト牛島智子さんがワークショップを行いました。このワークショップのために、自分の作品も持ってきてくれた牛島さん。和紙でできたその作品をもって風をはらませながら、まずは《ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ》を鑑賞しました。鑑賞後は、いよいよ自分の「風の彫刻」を制作します。和紙を折り、色や模様をつけ、そして紙の合わせ目を糸で縫っていきます。皺を寄せてひっくり返すと、和紙の内側に空間ができ、風をはらんだ彫刻ができあがりました。ノリやボンドを使うのではなく、「縫う」という作業が子どもにも大人にも新鮮だったのか、まだ裁縫をしたことのない小さい子も、久々に縫物をする保護者の皆さんも皆ものすごく集中して制作していました。完成した作品には、皆ものすごく満足げで、風を想像しながら作品をかざしたり、誰ともなく頭にかぶったりしながら、牛島さんの作品の前で記念撮影をしていました。


 そして、実は、いつもは11月3日とその前後の土日の3日間がファミリーDAYの期間なのですが、今年は、平日の11月4日、5日にもプログラムをしました。「初めてのベビーカーツアー」です。小さいお子さんがいると、なかなか美術館に来られないという保護者の方々が参加してくださいました。

 さて、毎年のことですが、今年も当館のボランティアさんは大活躍でした。オンラインツアーはもちろんのこと、ワークシートの受付から展示室での見守り、そしてワークショップのサポートなど、ファミリーDAYの活動はボランティアさんたちの支えによって成り立っているといっていいでしょう。また、福岡教育大学や九州大学の学生さんもボランティアで参加してくれ、スタッフとして素晴らしい働きをしてくれました。そして、博物館実習生の皆さんも、将来学芸員となるため、来館者と直接触れ合う機会として、ファミリーDAYスタッフとして活動しました。昨年は人が集まること自体困難でしたが、コロナ前のようにはいかないものの、今回はさまざまな人がファミリーDAYに関わってくれ、それがまたこの活動を活性化させていると改めて気づいた次第です。
 もう一つ、ファミリーDAYでは必ずアンケートをとっています。特に今年は、「小さい子どもを連れて美術館に行くのは、はばかられるので、こういう企画があるとすごく嬉しい」とか「昔はよく美術館に行っていたのですが、子ども連れでは初めてです」というご意見を目にしました。普段子ども連れで美術館に行くのはなかなかハードルが高いんだな、とここでも改めて気づかされました。ですが、一方で、親子で参加できる企画が望まれていることがよくわかり、毎年やっている意味はあるな、とも思います。
 また、今回のオンラインギャラリートークでは、昨年のアンケートには見られなかった「子どもが騒がしくて美術館には連れて行かれないけれど、オンラインなら」という理由で参加してくださった方、さらに子どもが入院中で外出できないのでオンラインでのプログラムはありがたい、というご意見もいただきました。

これからも、皆さんが自分たちのペースで美術館が利用できるような、そんな企画を考えていきたい、そして、これまで以上に美術館という「場」がさまざまな人たちの拠り所になればと、気持ちを新たにした今年のファミリーDAYでした。

(主任学芸主事 教育普及担当 鬼本 佳代子)

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