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カテゴリー:教育普及

教育普及

「たのsea!」夏の思い出

現在、古美術企画展示室で開催している夏休みこども美術館2023「うつくsea!すばらsea!」展。本展の関連ワークショップをこの夏に2つ行いました。今日のブログでは、そのワークショップの様子をご紹介したいと思います!

①みんなで大きな海をえがこう!

1つ目のワークショップは、その名の通り、参加者みんなで1つの大きな紙に大きな海を描こうという内容です。しかしながら、皆さん初対面の人と一緒に絵を描いたことがあるでしょうか?ほとんどの人がないと思います。なので、まずは自己紹介。グループに分かれて、持ち寄った自分の海の思い出があるものを紹介します。みんなが持ち寄ってくれたものは海で拾ったものや、海に関する絵本、それから絵を描いてきた人も。人の数だけ思い出もありますね。

海の模様のハンカチに、自分で描いてきた絵、拾った貝殻などなど

みんなで海の思い出を語り合ってみると、泳ぐ海や、釣る海、生き物が暮らす海など「いろいろな海」があることがわかってきました。では、さらに「昔の人はどんなふうに海を見ていたのか」展示室に行って海の作品も見てみます。
展示室では、見つけたことや考えたことを話しながら鑑賞します。「なんか亀が溺れとって、助けに来た一反木綿に必死に掴まっとるみたい」という見方もありました。スゴイ!たしかにそうも見える!一反木綿に掴まる亀ってなに?と気になった方は、ぜひその作品を探しに夏休みこども美術館に来てください。

作品鑑賞でもっと「いろいろな海」があることを知ったところで、いよいよみんなで絵を描く!ビニール袋のスモックを着て、大きな紙を用意した部屋へと移動します。用意した紙はおよそ8.5m×6mの51平方メートルの大きさ。30畳くらいというと大人の方には伝わりやすいでしょうか。まずは、どのくらい広いかみんなで寝っ転がってみます。参加者20人+筆者+博物館実習生5人で計26人が乗っても広々です。

みんなで寝れるくらい大きい紙

せっかくこんな大きな紙を用意したのですから、ちまちまとクレヨンや色鉛筆で描いていては日が暮れてしまいます。何より、今回は「みんなで大きな海をえがこう!」です。ここにいる参加者みんなでしか描けない海を描くために、体全体をつかって海を描きます。体全体で絵を描くことも初めてなので、まずは練習から。最初に右手、次は両手で、てのひらで、指の先で、と体で絵を描くコツをつかみます。

「せーの!」の掛け声に合わせて第一投をぺたっ

練習が済んだら、いよいよ思いのままに自由に描く!とにかくやってみたくてわくわくいっぱいの子どもたち、「海を描くのよ!」と今日は何を描くのか忘れないように声を掛けて、いざスタート!

おなかでも海を描く!

「みんなの海」が完成!

紙のしろいところがなくなってきたところでストップ!みんなでしか描けない大きな海が出来上がりました。いろんな色がきれいに混ざった素敵な海なりました。みんなで鑑賞していると、島や生き物が見えてくるだけでなく「命の泉みたいな海」と表してくれた子もいました。出来上がった作品は持っては帰れなかったけど、みんなの心に残る海が描けたのではないかと思います。

②自分の海をつくろう!

2つ目のワークショップは、先ほどと打って変わって自分だけの海を立体作品でつくります。しかし、いきなり「自分の海をつくって!」と言われても、自分のってどういうこと?と困りますよね。なので、まずは簡単な質問「海について知っていること教えてください」。一人の子が「貝殻がある」と言ってくれます。すると、相次いで「さかな!」「さめ!」「くらげ!」と生き物がたくさん挙がります。そして「波」お~、生き物だけじゃなく、海には波もある。さらには「人魚!」いいですね~、私もいつか会ってみたいな。
と、今を生きるみんなが「今の海」について知っていることをたくさん言ってくれたところで、今度は「昔の海」についてです。昔の人と海の関係を調査しに、展示室へと向かいます。

こちらのワークショップでは、解説も交えながら鑑賞をしました。海にあるものが作品の素材になっていること、素材になっている生き物が現在は絶滅の危機にあること、海にあるものを構成して模様をつくったこと、水や海の神さまを信仰していたことなどなど。そして、着物に海の絵があると着たときどんな感じかな?なんで鞍と枕に波文をつけたのかな?昔の人は海の神さまになにを願っていたんだろう?と昔の人と海の関係を調査しました。

調査を終えてワークショップの部屋に戻ります。自分たちの知っている「今の海」と、展示室で調査してきた「昔の海」……さあ、勘がいい人は今日つくる自分の海のテーマがわかったはず。ずばり、今回つくる自分の海は100年後の「未来の海」!テーマを聞いて、みんな「え!」と驚きを隠せません。
さらに、今回のワークショップは子どもだけではなく大人も自分の未来の海をつくります。それを聞いた大人たちは「え~!?」と一層驚き。ふふふふ。このワークショップでは、大人も子どもも対等ですよ。焦らなくても大丈夫。上手につくることが目的じゃなくて、頭にあるイメージをカタチにするのが目的ですから。

どんな材料をつかおうか悩み中…。

セロファンをちょきちょき。何ができるのかな?

知っている「今の海」と、調査した「昔の海」をもとにして「未来の海」について考えます。そして、考えがまとまってつくるものが決まった人から、材料を選んで制作に取りかかります。みんなかなり熱中して作っていて、「まだ時間がいる!」と予定していたよりもちょっとオーバーしながらなんとか作品が完成!
「自分の100年後の未来の海」のお披露目タイムへと移ります。みんなで各テーブルを回りながら、全員の作品を見ていきました。

ウツボみたいになっちゃった龍!人魚の鱗の海!バッテリー搭載の船!

どの作品もとっても力作で、全部紹介したいくらいなのですがページの関係で叶わず…。出品作の《亀形合子》の100年後バージョンや、海中都市、魚のお城にカラフルな泡の海などいろんな未来の海ができました。誰一人として同じ海はなかったことも素晴らしかったです!
なんとか頑張ってあと100年生きて、みんなが考えた100年後の海のようになっているか見てみたいところですが、生きているかな~。参加者の子どもたちの中には100年後の海を見れる人もいるかも!?

以上、今夏に行った2つのワークショップの報告でした。内容盛りだくさんでしたが、最後まで読んでくださりありがとうございます。参加者のアンケートには、「とても楽しかった」に丸がたくさんついていて「うれsea!」。そして、私にとっても「たのsea!」夏の思い出となりました。
展示は来月10日まで。まだ間に合いますので、ぜひ美術館で海を楽しんでくださいね。

 

夏休みこども美術館2023「うつくsea!すばらsea!」
開催中~9月10日(日) 1階 古美術企画展示室
展覧会ページはこちら

(教育普及専門員 八並美咲)

 

教育普及

福岡市美術館のボランティア活動 ― 福岡アジア美術館へ館外研修に行ってきました

 今年の4月から、福岡市美術館では3年ぶりに定時のギャラリーツアーが再開したことを以前このブログでもご紹介しました(https://www.fukuoka-art-museum.jp/blog/82610/)。常設のコレクション展示室が開いている日には基本的に毎日午前、午後と2回開催しているこのツアーで、ガイド役を担っているのは、「ガイドボランティア」として美術館の活動に参加してくれているボランティアの皆さんです。

 福岡市美術館のボランティア制度は1979年の美術館開館と同時にスタートしており、今年で44年目。現在は「ガイドボランティア」の他に、「新聞情報」、「図書整理」、「美術家情報整理」と活動内容ごと4つのグループに分かれて、合計140人余りの方が参加してくれています。各グループはさらに曜日ごとに分かれ、美術館の学芸スタッフと情報共有しながら、それぞれガイドや資料整理作業、定期的な勉強会などの活動を行っています。ただ、ここ数年は新型コロナウイルスの影響が大きく、定時ギャラリーツアーが一時期休止となったり、資料整理の活動が隔週になったりと、以前と同じようには進められないことも多くありました。そのような中、6月に久しぶりに実施できた活動のひとつが、美術館を離れての館外研修です。少し時間が経ってしまいましたが、今回はその時の様子をご報告したいと思います。

 久しぶりの館外研修では、ふだん直接様子を知るチャンスがありそうでない、他館のボランティア活動について体験し、お話を伺って交流しよう!ということで希望者を募り、こちらの施設(写真をご覧ください)にお邪魔してきました。このバナー、館名が書かれているのですが読めますでしょうか?

なんと書いてあるか読めますか?

 こちらのバナーに書かれた文字らしく見えるものも、実は作品のひとつで中国人美術家、シュ・ビン(徐冰)によって創られたアルファベット漢字で “Fukuoka Asian Art Museum”と書かれているそうです。
 …ということで、訪問したのは中洲川端にある福岡市立の美術館・博物館施設のひとつ、「福岡アジア美術館」です。

 福岡アジア美術館は世界で唯一、アジアの近現代美術を系統的に収集・展示している施設で1999年の開館です。同じ福岡の市立美術館として、こちらでも開館以来ボランティア制度を取り入れています。ただ、話を聞いてみると活動内容やグループ制度は福岡市美術館とは違っている点もありました。福岡アジア美術館では参加する全員が「交流ボランティア」として登録されていて、そこからさらに細かく「案内・解説ボランティア」、「図書資料ボランティア」、「アーカイブボランティア」、「広報ボランティア」、「読み聞かせボランティア」、「活動支援ボランティア」の6つのグループに分かれるそうです。作家のレジデンスプログラム(滞在制作)を行うこともあるため、その対応や協力をすることもあるのは大きな特色であり、また、各グループ活動について月2回以上、1回2時間以上の参加という条件を満たせば、希望次第で複数のグループに登録できるという体制も市美とは異なる点でした。

 今回の研修では、アジア美術館でボランティア同士の情報交換やグループ間のつながりを調整している活動支援ボランティアの皆さんが中心となって、当日のスケジュールや交流会を整えてくれました。

福岡市美術館と福岡アジア美術館のボランティアさんで集合!

はじめに少人数に分かれてギャラリーを見学。対話型の作品鑑賞をしたり、解説をしていただいたりで1時間ほどご案内いただきました。

 まずは美術館のコレクションを展示しているアジアギャラリーをボランティアさんのガイドで見学しました。いつもは市美でガイドとして来館者をお迎えしている人も、この日は作品について見て考えたり、話を聞く側に。身近なようで知らないことも多いアジアの国々のことや、作家の文化的背景、作品のテーマやモチーフのことなど、個別に鑑賞するだけではわからないところまでガイドしていただき、展示作品との距離が縮まる時間でした。
 また、展示室以外にも図書スペース、“アートカフェ”や、アジアの絵本の読み聞かせなども行っているキッズコーナーについてもご案内いただきました。

“アートカフェ”は、アートとカフェと本が同時に楽しめるオープンスペースで、たくさんの開架図書を気軽に閲覧することが出来ます。

 ギャラリーの見学後、後半は交流会に移って、各活動グループ別に両館ボランティアさん同士が席を囲んで直接対話、フリートーク!の時間です。ガイド(案内解説)ボランティアのグループではそれぞれが来館者を案内する際に困っていることや、他の人はどう工夫しているんだろう?といったことを情報交換。また、資料情報系の活動をされている皆さんが集まったグループでは、お互いの館の資料データの整理方法のことや、これまで蓄積してきたデータがアーカイブとして美術館でどのように活用されていくとよいのだろう、といったことについて意見が出されていました。

ボランティアさん同士でアレコレ情報交換。グループによってはかなり盛り上がったようです。

 限られた時間ではありましたが見学から交流会まで、ボランティアさん同士もリラックスするにつれて話も弾んで、貴重な機会となったようです。研修後の感想では参加できてよかったという声や、他館ではこういう風に活動している点がよい、ここは羨ましいと思ったなど、学芸にも参考になる率直な言葉が寄せられました。

 福岡市美術館では様々な経歴をお持ちの方が展示やプログラムに興味を持って、ボランティア活動に参加してくれています。ベテランから新規加入の方まで、ひとりひとり経験や考え方も異なる皆さんですが、そうした多様なひとが集まることも美術館という場にとっては大切な活力源となります。当館ボランティアの新規募集は5年毎となり、次は2024年度の予定です。今後も、館内のプログラムや今回のような館外研修まで、ボランティア活動についても時々ご紹介していければと思いますので、ご興味を持たれた方はぜひ今後の活動にご注目ください。

(教育普及係長 髙田瑠美)

 

 

教育普及

夏休みこども美術館2023「うつくsea!すばらsea!」オープン!

こんにちは。今年も暑い夏がやってきましたね。福岡市美術館の夏といえば、そう、夏休みこども美術館!今年は「海」をテーマに、「うつくsea(しー)!すばらsea(しー)!」展を古美術企画展示室で開催しています。
このブログでは、この展覧会を担当した筆者のお気に入り作品を、作品選定理由や作品調査の裏話も含めながらいくつかご紹介したいと思います。

まずは、こちらの《法螺貝》。言わずもがな、貝が素材に使われていることが出品理由です。私は、大河ドラマを欠かさず視聴する歴史好きなので「武具かっこいい!」と出品することを即決。吹くために取り付けている金具が貝とぴったりくっついている技巧に見惚れます。よく見ると金具にはハート型があり、かわいいところもある。
制作年がおよそ16世紀と、約500年前につくられています。制作当時にこの大きさであった貝は、こんなに大きくなるのに何年かかったんだろう?と、作品自体の歴史と、素材である貝そのものの歴史にロマンを感じます。

《法螺貝》桃山時代16世紀

続いて、《波千鳥に碇鼈甲花笄(はなこうがい)》をご紹介。この作品は、「海なら鼈甲(べっこう)の作品もあるよ」と学芸課長に教えていただき、無知な私は初めて鼈甲がウミガメの甲羅であると知りました。ということで、当館の鼈甲の作品の中からモチーフが海っぽいという安直な理由で《波千鳥に碇鼈甲花笄》に決定。そして、作品調査のために行った収蔵庫で初めてこの作品にご対面。

《波千鳥に碇鼈甲花笄》江戸時代18-19世紀

「わ~!なんてキレイなの!」が鼈甲作品との初対面の感想でした。やはり図録で見るのと本物を見るのは大違いですね。古美術係のM学芸員によると「つがいの鳥や、ハマグリ、碇と夫婦円満のおめでたいモチーフですね」とのこと。髪に挿す笄の部分はところどころ欠けていて使用感もあります。きっと、黒田家のお姫様が婚礼に用いたのではないかと思われます。でも、よーく見ると鳥は5羽。あれれ、つがいになっていない仲間はずれの子が。婚礼に使った後、円満な夫婦生活を送れたのかな……。

三つめは、この《白釉劃花(かっか)波文枕》。「陶枕(とうちん)」という陶器でできた枕です。白い色と、シンプルな波文が涼しげで夏のお昼寝に使ってみたいですね。
ガラスケースに入っている今回の展示方法では分からないのですが、焼成したときに破裂しないようにするための穴が裏側の側面に空けられています。そして、この枕、振ってみると中からカラカラと音がするのです!何か中に入っている!と、裏にある穴から中をのぞいて見ても、穴は小さいし、中は真っ暗だし、何も見えません…残念。
見た目も仕掛けも魅力的な陶枕なのです。

《白釉劃花波文枕》12-13世紀 森田コレクション

本当は一点一点、なぜこの作品を選んだのか語りたいところですが、ひとまず、今回のブログでは三点をご紹介しました。当館に着任してから初めて担当した展覧会なので、展示を彩ってくれた作品たちに愛着が湧いています。いつか機会があれば他の作品のこともお話できたらと思います。
そんな美しく、素晴らしい作品たちを多くの方々にご観覧いただけたら嬉しいです!8月26日のつきなみ講座では、展示ができるまで私がどんなことをしていたのかをお話したいと思っていますので、ご都合がよろしければそちらにもぜひ足を運んでもらえると幸いです。

夏休みこども美術館2023「うつくsea!すばらsea!」
6月27日(火)~9月10日(日) 1階 古美術企画展示室

(教育普及専門員 八並美咲)

 

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