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「みる見る きこえる 音楽会」開催中!
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夏休みこども美術館2025
「みる見る きこえる 音楽会」開催中!

 みなさんこんにちは。照りつける日差しと蝉の大合唱。夏真っ盛りとなりました。夏と言えば、福岡市美術館では1990年から夏休みこども美術館を開催しています。
 今年の夏休みこども美術館は、「みる見る きこえる 音楽会」というタイトルで「音楽」がテーマとなっています。当館コレクションの古美術と近現代美術作品を織り交ぜ、3章に分けて展示をしています。音は目には見えませんが、美術作品では様々な色や形で音楽が表されています。作品を見る方には、「音楽」をめぐる様々な表現の面白さとともに、作品からどのような音楽がきこえるのか想像することを楽しんでほしいと思っています。このブログでは、企画担当者自身が想像した音楽を交えながら、展示から作品を3点ご紹介したいと思います。

図1 板谷房《動物のための宴》1969年、油彩
図2 演奏する動物(《動物のための宴》から一部 抜粋)

 まず、第1章「奏でる楽器」から《動物のための宴》です。猿や犬、キツネなど様々な動物たちがテーブルを囲んで宴を開いています。画面の左端のほうで演奏しているのは、ギターのような弦楽器を持った猫とラッパを吹く大きなネズミ。その2匹の前には、寝転がった猫がラッパを口にあてていいます。さて、彼らはどんな演奏をしているのでしょうか。私は最初、場を盛り上げるようなにぎやかな明るいメキシコ風の曲を演奏しているようだと思っていました。しかし、何度も見ていくうちに猫の怒ったような表情や床の色が黒いことから、緊張感のある張り詰めた曲の演奏もかもしれないと思うようになったのです。ちなみに、私の息子は「ドアから出ていこうとする動物がいるから閉店の曲を流し始めたのでないか。」と言っていました。全く頭になかった「閉店の曲」ですが、それはそれでありですね。

図3 小早川清《ダンサー》1932年、木版

次は、第2章「舞・ダンス」から《ダンサー》です。なんという体のそり具合!私が同じように踊ると、確実に腰を痛めます。作者の小早川清は、制作のために人物にわざわざポーズをとらせることはせず、人物の動きを観察して魅力的な瞬間をとらえて作品にしたそうです。さて、この女性はどんな曲に合わせて踊っていたのでしょうか。私は、小さな丸や大きな丸のワンピースの柄からリズムを感じ、
「タ・タ・ダン、タ・タ・ダン」とアクセントのついた速いビートのエレクトリックな曲を想像しました。(昭和7年制作なので電子機器を使う楽器が普及するずっと前ですが…。)私の母は、「ノリノリのダンスミュージックの最後に大きなシンバルが鳴って体を反らした。」と言っていました。そういわれると、曲のフィナーレも感じられますね。

図4 《人面文壺》 ガンダーラ墓葬文化、紀元前1500年~前200年、土器、
森田コレクション

 最後は、第3章の「音楽の色・形」から《人面文壺》です。展示室では、多くの人がこの作品の前で足を止めています。丸いフォルムに、小さな穴の目と口、そして板状の高い鼻。今のパキスタンあたりで約3500年~2200年前に作られ、死んだ人の骨を入れための壺だったのではないかと考えられています。私は、この作品の小さな穴で表された口が歌っているように見えるのです。亡くなった方を包むような優しい声で、「ホ~ホ~ホ~」と歌詞のない音程だけの歌がきこえてきます。ガイドボランティアさんの中には、「なんだか口笛を吹いているみたいだね。」とおっしゃった方もいました。どんな意図でこのような顔がつけられたのか分かっていないのですが、そのミステリアスなところも想像する音楽の幅を広げてくれます。

 ここで紹介した3つの作品を見て、読者の皆さんはどのような音楽を想像しますか。おそらく、見る人によってそれぞれ異なる音楽を連想するのではないでしょうか。一人ひとり違う想像の仕方、感じ方があっていいのです。だからこそ、一人で時間をかけて音楽を想像してもいいですし、一緒に来た方と「どう思う?私はね、、、」と話してもいいと思います。じっくり見ることや他の方の意見によって作品の見方を広げて楽しんでください。子どもたちに向けた展覧会ではありますが、大人の方も楽しめる内容と思っています。ぜひ「夏休みこども美術館」へ来てみてくださいね。
 また、同展示室内には、音楽にまつわる図書をお読みいただける「夏休みこどもとしょかん」や、鑑賞をより楽しめるワークシートを置いたコーナーがありますので、どうぞご利用ください。

(教育普及専門員 冨坂綾子)

夏休みこども美術館2025 みる見る きこえる 音楽会
会期:2025年6月25日(水)〜8月24日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時30分
7月~8月の金・土曜日は午前9時30分~午後8時
※入館は閉館の30分前まで。
休館日:月曜日
※7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)は開館し、7月22日(火)、8月12日(火)は休館
会場:1階 古美術企画展示室
夏休みこども美術館2025「みる見る きこえる 音楽会」チラシ

福岡市美術館の季刊誌『エスプラナード』220号にも記事を掲載しているのでご覧ください。

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