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福岡市美術館ブログ

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総館長ブログ

美術の勝ち負けって… プレゼンバトル速報

どーも。総館長の中山です。

11月10日の日曜日、「トークイベント・プレゼンバトル近現代美術編」を明治学院大学教授の山下裕二さんとやりました。昨年の「古美術編」に続く2回目のバトルです。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。事前申し込みの抽選にもれた皆さま、大変申し訳ございませんでした。

山下さんとは昨年と今回だけでなく、10年以上前に横浜で幽霊画に関する対談をしたことがあります。そのときわざわざ福岡から横浜まで聞きにきてくださった熱心な美術ファンの方が今回も来られていて、大変うれしく思いました。講演や対談を山のようにされている山下さんは「あれ、そんなのやりましたっけ」とすっかりお忘れでしたが、円山応挙の美人な幽霊画は、実は《百怪図巻》(福岡市博物館蔵・旧吉川観方コレクション)に描かれている雪女をアレンジして幽霊にしたものという自説を披露したわたしにとっては、思い出深い対談でした。

昨年に続き、会場はバトルを楽しみにされたたくさんの方で満員となりました。

今回のバトルは、山下さんが日本選抜監督、わたしが世界選抜監督(なんと大げさな)になり、当館所蔵の近現代作品からそれぞれ5点を選んで先鋒戦から大将戦まで5対5の団体戦でプレゼン対決をするというものでした。ちなみに、対決のラインアップはこんな感じです。

◇先鋒戦◇ 横尾忠則《暗夜光路 旅の夜》VSアンディ・ウォーホル《エルヴィス》
◇次鋒戦◇ 横山操《溶鉱炉》VSマルク・シャガール《空飛ぶアトラージュ》
◇中堅戦◇ 中ハシ克シゲ《Nippon Cha Cha Cha 》VSアンゼルム・キーファー《メランコリア》
◇副将戦◇ 赤瀬川原平《千円札(風倉匠の肖像)》VSモナ・ハトゥム《+と-》
◇大将戦◇ 藤野一友《眺望》VSサルバドール・ダリ《ポルト・リガトの聖母》

これらの作品は、当館ホームページのコレクション・ハイライト | 福岡市美術館)や、所蔵品検索 | 福岡市美術館からご覧になれますので、ご興味がある方はぜひ。

赤と青のマフラーをまとって、いざ、プレゼンバトル!

メンバーの顔触れを見ると、現在展示中で、当館の目玉的な有名作品からわたしがピックアップし、山下さんはどちらかというとマニアックな作品から選ばれた感じです。わたしが先に世界選抜のメンバーをお知らせしたので、それにどこか対応する作家や作品を山下さんが選ばれた、ということでもあります。前回の「古美術編」は逆で、山下さんが先に選ばれ、それに合わせて(かぶらないように)わたしが選んだので、作品傾向も山下さん好みの名作対私好みのマニア向け作品になり、今年とは逆でした。

バトルでは、横尾さんや赤瀬川さんなどと親交がある(あった)山下さんらしく、作品の裏側にいる作家の素顔が感じられる絶好の機会でもありました。そういう意味では、わたしは9月に作品設置のために福岡まで来ていただいたモナ・ハトゥムさんとランチをご一緒したくらいしかネタがなく、まあしかたがないなあと。バトルの内容については、当館の広報誌「エスプラナード」1月号紙上にレポート記事が掲載される予定ですし、その記事はホームページ(エスプラナード(季刊誌) | 福岡市美術館)でもPDFで閲覧できますからお楽しみに。

昨年に続いて、レフェリーは後藤学芸課長。

当日は後藤学芸課長がレフェリー役で、司会だけでなくバトル開始と終了のゴングも鳴らしてくれましたし、近現代美術担当の学芸員3名がリングサイド(最前列)に陣取り、おもに山下さんサイドのセコンドとして「この作品の収集はいつですか」などという質問にもすぐさま答えてくれたおかげで、バトルは90分の予定を10秒オーバーしただけで無事終了しました。まあしかし、それぞれ5分(後半は時間的に余裕ができたのでそれぞれ8分)の時間内に相手を圧倒するような内容のプレゼンテーションを応酬するのはむずかしいですね。いいたいことは山ほど残っています。それでも終了後、何人もの方からおもしろかったですとか、楽しかったですという好意的な感想をいただき、監督の役目が果たせて満足しています。というか、とにかく両軍とも選手が優秀でしたから。

ではいったい、どっちが勝ったのでしょうか。レフェリーの後藤学芸課長は、「勝ち負けは決めません。みなさんそれぞれ心の中でお考え下さい」と試合前に宣言しましたので、バトル会場では決着がついていません。感想を言ってくださったみなさんに、「どっちが勝ちでしたか?」と聞く勇気はありませんでした。美術品としてはこっちが勝ちでしたけど、プレゼンとしては完全に逆でしたね。なんて言われたらショックですし。そもそも美術家や美術品の勝ち負けって…ね。あるんでしょうか。なくはない。優劣はあるんじゃないかと、みなさんは思われていますか? あるでしょ。でないと値段がつかないでしょ。とか。だから美術館は存在できるのでしょ、などと言われたら、ぐうの音も出ませんね。

考えてみれば、私たち美術史を勉強している人間は、「これは○○で○○であり、優れた作品である」などと断言したりしています。単語として優品とか傑作とかよく使いますし。あれは、いったい何と比べているのでしょうか。もっとつっこんで言うと、本当に自分自身で一から十まで徹底的に調べ、考えて結論を出し、優れていると断言しているのでしょうか。自分が感じた感動をきちんと数値化して、比較して、客観的に評価しているんでしょうか。ひょっとしたら、誰かに、何かに、指摘されたり教えられたりした尻馬に乗っているだけかもしれません。プレゼンバトルしたくせに、こんなことを言うのもどうかと思うのですが、一般の方々から専門家であると認められているとか、美術で飯を食っているという自覚がある者は、そういう責任を負っていると改めて思いました。はい、これ自省です。

とはいえ、美術の見方はまったくの自由であることは事実ですから、当然ながら作品の評価も自由なんです。自由に見比べてください。そもそも展覧会は、どのような展覧会であっても、見比べるという行為が前提ですから。心の中で勝ち負けを決めていただいてかまわないわけです。ああ、やっぱりバトルの勝敗、聞いてみればよかった…。

(総館長 中山喜一朗)

特別展

美術館で感じる!博多の祈りの世界

先月26日から特別展示室にて「博多のみほとけ」を開催中です(~12月8日)。
この展覧会のテーマはずばり、「展示室に博多湾の祈りの世界を再現する」ということです。
これを表現するため、展示室入ってすぐの壁には海側からみた博多湾の写真を大きく掲示しています。

博多湾遠景。左が志賀島で右が糸島

本展はコの字の形をした展示室全体を博多湾に見立てて、それぞれの地域に伝わる尊像や宝物を紹介していて、展示室の入り口がちょうどロゴマークの位置にあたります。
ちょうどこの位置から右(西)を見ると、糸島半島の北東部・小田(こた)にある小田観音堂に祀られる観音菩薩をご覧いただけます。

小田観音堂に祀られる観音像。左から六臂観音菩薩立像、千手観音菩薩立像、十一面観音菩薩立像。(いずれも福寿寺蔵)

左(東)に目を移すと、志賀島の荘嚴寺に祀られる観音菩薩をご覧いただけます。

《聖観音菩薩立像》(荘嚴寺蔵)

糸島と志賀島はそれぞれ博多湾の東西の出入り口にあたります。博多湾を出入りする船を見守るような場所に航海の守護神でもある観音菩薩が祀られているというのは、アジアとの交流をとおして歴史を育んできたこの地域を象徴しているように思います。

古来、大陸の最新の文化を伝えるため、多くの中国人が日本へやってきました。博多は彼らが日本で最初に足を踏み入れる地であり、都がある京都や鎌倉へ上る前にしばらく滞在することもありました。

清拙正澄筆《清拙正澄墨蹟》(福岡市美術館蔵)

本作は、鎌倉時代に中国から来日した禅僧・清拙正澄が、博多の円覚寺の長老であった秀山元中という僧へ贈った漢詩です。恐らく、清拙正澄が来日後、博多へ滞在していた折に依頼されたものでしょう。博多で繰り広げられた国際交流の様子をしのぶことができる貴重な墨蹟です。

僊厓義梵筆《博多図並賛》(福岡市美術館蔵)

本展では博多を代表する名僧として僊厓義梵(仙厓と書かれることが多いですが、本展では正式な僧名である僊厓の表記を用います)の書画も紹介しています。
この作品は石積みの壁に覆われた博多の外観を描いたもの。上部には博多という地名の由来を説いた僊厓による賛(コメント)が記されます。それによると、博愛の君子や博物豪傑が多いから博多というのだそうです。その後に、決して博奕を打つ小者が多いからではないと続けています。博多の人びとを皮肉っているようにも聞こえますが、愛のあるユーモアととらえるべきでしょう。

本展をとおして博多のもつ豊かな歴史を感じていただけると幸いです。
一部の仏像は撮影も可能です。是非みなさま、会場へ足をお運びください!!

(学芸員 古美術担当 宮田太樹)

教育普及

ファミリーDAYで芸術の秋!

 みなさん、こんにちは。美術館に植えてあるイチョウの木がだんだんと黄色に染まり、ひんやりとする空気に秋の深まりを感じます。秋といえば、芸術の秋ですね。福岡市美術館では、毎年開館記念日の11月3日に合わせて「ファミリーDAY」を開催し、未就学児から中学生まで、そしてその保護者の方を対象に、家族で美術館やアートを楽しむプログラムを企画しています。今年は、11月2日(土)、3日(日・祝)の2日間の開催で、3日(日・祝)は大人の方のコレクション展の観覧料が無料となり、家族のお出かけにもピッタリです(福岡市内在住65歳以上と中学生以下はコレクション展観覧料無料)。プログラムには事前応募が必要なプログラムと予約なしで参加できるプログラムがありますが、今回は予約なしで参加できるプログラムについて紹介していきます。

【かいとうキッズ 美術館の謎をとけ! 】2日(土)・3日(日・祝) 対象:5歳くらい~
 福岡市美術館の特色でもある古美術から近現代美術までの幅広いコレクションを活かして、美術館職員が頭をひねって考えたクイズに挑戦するプログラムです。「やさしいクイズ」か「むずかしいクイズ」を自分で選び、名探偵気分で作品を鑑賞しながらクイズを解いていきます。見過ごしてしまいそうなところに新しい発見がかくれています。お子さんと気づいたことをお話ししながら一緒に作品を観賞してみてくださいね。

【お面をつくって作品にへんしん!】2日(土)・3日(日・祝) 対象:3歳くらい~ 定員10人程度(入れかえ制)
 福岡市美術館に展示中の作品をモチーフにしたぬり絵に色を塗ってお面を作ります。作品どおりの色を塗る必要はありません。好きな色を使って、自分だけのお面を作ります。お面の図柄は、なんと13種類!お面を作った後は、本物の作品を見に行くのも楽しみの一つです。

【ミニミニワークショップ】3日(日・祝) 対象:未就学児とその保護者 定員:8組(入れかえ制)
 2階の「キッズスペース 森のたね」に大きなタネのオブジェが登場!これは、アーティストのオーギ・カナエさんがこのワークショップのために制作してくださったものです。このタネのオブジェの中には身近な素材がたくさん入っています。そのタネの中から素材を取り出して、自由に組みあわせながら「森のなかま」を作ります。いろいろな素材に触れて、手触りを楽しむこともできるワークショップです。

【つくって、あそぼう!コブウシくんとおすもさん】3日(日・祝) 対象:小学生~ 定員:6人程度(入れかえ制)
 福岡市美術館の愛すべきキャラクターであるこぶうしくんのもとになった作品《コブウシ土偶》と、誰もがその大きさに圧倒され、つい相撲を取りたくなる中ハシ克シゲ作《Nippon Cha Cha Cha》の動く紙製人形を作ります。動かすための紐を引っ張ると、思いもよらない動きに大人も子どもも笑みがこぼれます。そして、実はチラシには載ってないニューバージョンも登場します…!お楽しみに。

 普段なかなか一緒に作品を見たり、作品をつくったりする機会が少ないご家族や、美術館がなんとなく遠い存在と感じるご家族にとっても気軽に参加できるプログラムとなっています。芸術の秋を家族で楽しめる「ファミリーDAY」へのご参加お待ちしています。

各プログラムの詳細は、ファミリーDAY 2024のチラシを下記よりダウンロードしてご覧ください。 
https://www.fukuoka-art-museum.jp/event/146649/

 

(教育普及専門員 冨坂綾子)

 

 

 

 

 

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