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福岡市美術館ブログ

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教育普及

ファミリーDAY2020 美術館の動物作品は、リアルじゃない?!

すっかり秋になりましたね。11月3日は福岡市美術館の開館記念日です。毎年、この日の前後3日間に親子で美術館を楽しむための「ファミリーDAY」というプログラムを開催しています。※ファミリーDAY2020のチラシはこちら。

今年は新型コロナウイルス感染症の感染対策をしながら、親子で楽しめる活動を考える、という初めての試みとなりました。これまでミュージアムの教育活動は、人と人が直接関わることを前提としていましたが、その前提が覆されることになりました。これは、国内に限らず、世界中のミュージアムが直面することになった課題ではないでしょうか。

ただ、こういうときだからこそ、新しいチャレンジができるとも言えます。そこで、今年のファミリーDAYではオンラインで参加できるプログラムを充実させることにしました。オンラインで開催するワークショップや、作品鑑賞のプログラム、オンライン動画の作成などなど、新しい試みばかりです。

今回は、その中から「飼育員さんとみる美術館の動物たち」というオンライン動画のプログラムについてご紹介します。これは、美術館の動物作品を、動物のプロである飼育員さんたちに見てもらうと何がわかるのか?をテーマにしています。実は、当館では、2013年に同テーマで「美術館でZoo」という展覧会を開催しましたが、その時と同じく福岡市動物園の飼育員さんたちにご協力いただきました。

福岡市動物園の放鳥舎で、フラミンゴが見守る中、動画撮影の打合せ中。

さて、飼育員さんに見ていただいた作品の1つがこちら。江戸時代に描かれた狩野安信の《竹虎図》(二面のうち左面)です。飼育員さんたちは開口一番「これ、ネコだね。」と痛烈な一言。他にも「目が狛犬みたい」「尻尾が長すぎる」「縞模様が不自然にそろっている」など、現実のトラとの違いを的確に指摘されました。

そうなんです。実はネコっぽさには私たちも気づいていました。ご存知の通り、トラは日本には生息していません。また、江戸時代には今のように動物園でトラを見ることもできませんでした。おそらくこの絵は、トラの絵として伝わるお手本や、トラの毛皮などを見た絵師が、ネコの姿から想像してトラを描いたのだろうと、推察されます。そう考えると、ネコっぽい理由もなんとなく分かります。

狩野安信《竹虎図》(二面のうち左面)江戸時代。たしかにネコっぽい。

そして、もう1つのトラをご紹介しましょう。それはこちら。

仙厓義梵《虎図》江戸時代。トラではなくサルだった?

これをみた飼育員さんたちは全員一致で「これはサルですね」と即答。この絵には、サルの特徴はいくつもあるけれど、トラのそれは1つもない、というのが飼育員さんたちの意見でした。それを聞きながら、私は内心「おーっ!」と心が躍りました。というのも、実は近年の研究でこれは作者の仙厓義梵が、見物人を前にパフォーマンスとして即興で描いたもので、まずサルの姿を描きそこに線を加えて虎にしたのではないか、という説が唱えられたからです。(詳細は福岡市美術館研究紀要7号、中山喜一朗「仙厓雑論『虎図』の正体」p.36をご覧ください。)

飼育員さんたちによれば、目の位置、ひげのつき方、前足と後ろ足の様子など、どれをとってもサル(ヒヒ)のようで、トラではない、とのこと。他にもいろいろと作品を見てもらいましたが、これほど全員の意見が一致したものはありませんでした。そう言われて改めてこの作品を見ると・・・もうサルにしか見えないかも。

シマ模様と、ヒゲ、尾を取った《虎図》。サルに見えます。画像は「福岡市美術館研究紀要7号」、中山喜一朗「仙厓雑論『虎図』の正体」p.40より引用

さて、ファミリーDAY2020では、このような飼育員さんたちの貴重なご意見をもとに、当館の動物作品を紹介した動画を制作・公開します。動物のプロが見た、美術館の作品は現実の動物とどう違うのか?当館の作品に描かれた、かわいらしい動物たちをぜひ動画でご覧ください。動画は下記のリンク先で10月31日(土)公開です。

https://www.fukuoka-art-museum.jp/event/12521/

(学芸員教育普及担当 﨑田明香)

カフェ/レストラン

特別メニューで楽しむ 特別展「藤田嗣治と彼が愛した布たち」へ!

特別展「藤田嗣治と彼が愛した布たち」開催に伴い、福岡市美術館 レストラン「プルヌス」(2階)では、フランス・パリで数々の名作を生みだした藤田嗣治の作品にちなんだスペシャルコースをご用意しています。

「藤田嗣治と彼が愛した布たちスペシャルコース」¥3,000(消費税別)
※提供時は一部変更になる場合があります。

本コース料理の魅力を一品ずつ紹介いたします。

【前菜】季節のオードブル盛り合わせ
日本とフランスの両国で活躍した画家 藤田 嗣治をイメージして、和洋織り交ぜながらも、食感・色彩・香りをお皿の上に表現しました。

前菜:季節のオードブル盛り合わせ

【スープ】カブのポタージュ
代表的な作品『乳白色の下地』にある色合いを、「カブ」を使い透き通る白いスープで表現、オリーブオイルとセルフィーユのトッピングで仕上げました。

スープ:カブのポタージュ

【メイン料理】ブイヤベース プルヌス風
エコール・ド・パリと称される《パリ派》の画家たち(ピカソ、モディリアーニなど)と共に藤田嗣治も通ったとされるレストラン、モンパルナスの老舗 Le Bistrot du Domeの人気料理である『ブイヤベース』をアレンジしました。濃厚なソース状の本来のブイヤベースに「カサゴ」のグリル、エビ、ムール貝と色とりどりの野菜を添えました。風味豊かな海の香りをガーリックベースのルイユソースとともにお楽しみください。

メイン料理:ブイヤベース プルヌス風

【デザート】ブランマンジェと洋梨のコンポート シャンパン風味のグラニテを添えて
 藤田嗣治が眠る第二の故郷ランスの街の特産品であるシャンパン”GH Mumm”を使ったデザートです。ブラマンジェに白ワインで煮た洋梨のコンポートを乗せて、クッキーを散りばめました。食感も楽しめます。

デザート:ブランマンジェと洋梨のコンポート シャンパン風味のグラニテを添えて

白という色にこだわった藤田嗣治の作品をイメージし、白を基調にオードブルからデザートまで布の柔らかさを表現したコース料理です。特別展「藤田嗣治と彼が愛した布たち」鑑賞のあとは、シェフが本展のために創作したオリジナルコースで余韻に浸る時間をお過ごしください。

料金:¥3,000 ※ホテルメイドブレッド・コーヒー付き(消費税別)
提供期間:2020年10月17日(土)~12月13日(日) 
店休日:美術館の休館日に準ずる
時間:平日 11:30~15:30(L.O. 15:00)土日祝 11:30~17:30(L.O. 16:30)
福岡市美術館 2階レストラン「プルヌス」 問合せ:092-983-8050

学芸課長ブログ

初体験、ZOOMでフランスにフジタ展の展示作業を中継!

今回の展示は、絵画の世界と布の世界が混然一体となった展示です。

フジタは、フランスのプリント布地をしばしば絵に描きました。ここは、フジタがどれだけ布を正確に描いたのかを検証するためのコーナー。

本展の目玉は、フランスのメゾン=アトリエ・フジタから、フジタが所蔵していた染織品約50点をお借りして日本初公開すること。ただし、今はフランスからクーリエが来られないので、ZOOMで展示立会をしてもらうことになりました。10月13日、14日がZOOMの中継日です。

「朝早いのは大丈夫よ!何時だっていいわよ。」とメゾン=アトリエ・フジタのアン・ル=ディベルデル館長。お言葉に甘えて日本時間の13時からスタートに設定しました…って、時差は7時間なので、フランスではめちゃくちゃ早朝(すみません)。前日に作品チェックを完了させ、コンディションレポートのデータを送付しており、ZOOMでは、展示作業を見てもらうことになります。

13日午後からのZOOM中継に備えて、N通の美術品展示のエキスパートYさん&Tさんと午前中にしたことは…前代未聞、「展示のリハーサル」でした。段取りが悪いと画面越しに見ているアン館長が不安になるだろうからと、綿密な打ち合わせと準備をしましたが、それでもまだ不安だったので、実際に体を動かしてのリハーサルをすることに。「じゃあ、やりますよー。お二人は先にウォールケースの中で待機してください。そうそう、そんな感じ。そこへわたしが、3点セットのアンサンブルを入れた箱を持ってきて…。」「3点ありますけど、並べる順番はどうします?」「えっと、エプロン、ベスト、帽子の順で。てことは、箱に入れる順番が逆だった?ひゃー…」。と、午前中はあっという間にすぎました。

そうこうするうちに、13時(フランスは、朝6時!)。フランス在住のコーディネーターのUさん、そしてアン館長が参加して、ZOOM中継が始まります。タブレットの取り回しと、通訳は国際交流担当の徳永さん。海外経験も豊富なプロのインストーラー(展示技術者)の徳永さんは、こういうイレギュラーな現場も慣れっこです。「それではスタートしますね!」と英語で声掛けをして、流れをリードしてくれました。リハーサルをした最初のアンサンブルがスムーズに展示でき、まずは一安心。とはいっても、次から次へと、展示は続きます。画面の方は、徳永さんに任せっぱなし。時々「ボン(いいわね)!」「トレビアン(素晴らしいわ)」という言葉だけが耳に届きます。準備がもたつくと、Uさんがアン館長にいろいろ話しかけて間を持たせてくれたりします(これがかなり大切なお役でした)。

タブレットで状況を中継してくれる徳永さんと、大活躍のYさんTさんコンビ。

画面右端は、フジタが君代夫人のために縫ったアンサンブル。手前も藤田お手製のキャップとズボン(ご本人用)。おしゃれ!

フジタの浴衣。なんともモダンではありませんか。これもフランスからの里帰り。

気がついたらなんと、6時間も展示の中継をしていました。40点以上は展示したかも。朝からお昼までずっとつきあってくださった、アン館長とUさん、徳永さんに感謝です。でも、へとへと…。

翌14日は、アン館長だけでなくて、国の歴史遺産課の担当者、コレット・エイマールさんもZOOMに参戦。残り3点の染織品を展示した後、最後に残った大物に取り掛かりました。フジタが自宅に飾っていた、スペインのマリア像です。彼が作ったわけではないのですが、わざわざ日本から持ち込んだ、沖縄の紅型の布をまとわせています。晩年、カトリックに改宗したフジタの信仰の対象と日本の思い出が一体化した、フジタならではのマリア像です。

開梱直後のマリア像。梱包材に埋もれていました。

「これは、とても脆弱で安定していないの。」とアン館長。コンディションチェック時に気づいていましたが、マリア像の頭部と台座をつなぐのは、直径1㎝ぐらいの細い軸木のみ。金属の冠の重みで頭部がゆらゆらします。N通さんとは、頭部と台座の間に緩衝材を挟んで安定させようと話していましたが、つい「では、免震台も使いましょう」というと、アン館長もコレットさんも「免震台とは何ぞや!?」と矢のような質問。地震国日本の美術館には、たいがい常備されている備品も、フランスでは例がないようでした。

免震台を実際に見せ、どんな構造なのかを説明している間にYさんが緩衝材を用意。ひとしきり質問に答えたあと、ではこれから緩衝材を挟みますね、と頭部と台座の間にクッションを差し込むところも、ズームアップで中継。「トレビアン」と、フランスから安堵の声が聞こえてきました。その後、免震台の上に像を置いて、フランスからの借用品の展示は全点終了。みなさん安堵して、笑顔で、「オルヴォワール!」とミーティングルームから退出していかれました。

マリア像の下に見えている2段重ねの台が免震台です。地震が起こると2枚の内の下段は動きますが、上段は安定したままで作品を護ります。

日本では海外との行き来が緩和されてきましたが、フランスはまさにこの日、夜間外出禁止令が発表され、まだまだコロナの状況は厳しそうです。この展覧会を全面的にサポートしてくださったアン館長にはぜひ、この会場を見ていただきたい!早々にフランスの状況も改善するように祈るばかりです。

今日は会場の最終チェック。皆様をお迎えするまで、あと少し頑張ります!

(学芸課長 岩永悦子)

当館所蔵のフジタも出ます。ひさびさに下絵と一緒に展示。

看板兼、撮影スポット。裁縫するフジタとご一緒にどうぞ。

 

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