2025年4月9日 15:04
新年度がはじまりました! 新生活がスタートする方々は期待や不安など色々な気持ちが入り混じる頃だと思います。あまり気張らずに自分のペースでいくのもいいかもしれませんね。
早いもので4月も2週目に入り、桜の花が散り始めて若葉が芽吹いているところもちらほらとみかけます。桜といえば、最近気になっていることがあります。現在、2階の近現代美術室に展示してあるインカ・ショニバレCBEの《桜を放つ女性》に関してです。今までは桜が描かれてある作品をみると決まって春を思い浮かべていたのですが、《桜を放つ女性》の銃口から大胆に放たれている桜を見た時には、全く春がイメージできませんでした。理由をよくよく考えてみたのですが結局分からずじまい…。ですが、分からないけどこうだ!と感じるところが、アートの面白いところなのではないかと思ったのでした。
さてさて、前置きが長くなりましたが、今年度も福岡市美術館では様々な展覧会が行われる予定です。開催予定の展覧会についてはホームページやパンフレットからご覧になることができます。まだ見ていない方はこちらのURL(https://www.fukuoka-art-museum.jp/exhibition/)からぜひチェックしてみてください。今回のブログでは、今年度開催される展覧会の中で個人的に気になっている展示について話したいと思います。
私が特に気になっている展覧会は、10月11日(土)―11月24日(月・休)に特別展示室で開催される〈描かれた「南」~日本近代美術の一断章~(仮称)〉です。明治以降、多くの美術家たちが向かった先の「南」で得た体験をどのように表現したのか、描かれた「南」約200点を通して日本近代美術の知られざる魅力を紹介していくという内容です。こちらの展覧会が気になる理由は、展示を見ることで南国に行ってみたいという気持ちが成就するのではないかという超個人的なものなのですが…。それはさておき、そのような自分の中にある様々な思いは展示作品を見ることでどう変化するのか、展示を見ることは自分自身と深く向き合う機会になるのではないかと思っています。また、9月2日(火)-12月21日(日)に近現代美術室で開催される〈「北」へのまなざし〉では、明治以降の美術家が描いた朝鮮半島から中国大陸の風景・風俗を展示し、10月28日(火)-1月18日(日)に古美術室で開催される〈異国へのまなざし〉は、異国の様子を描いた絵画などを通して近代以前の日本の人びとは異国をどのようにとらえていたかを探る展覧会であり、それぞれテーマが通ずる部分があると思います。上記の3つの展示に関しては特に、開催時期が被っているタイミングにあわせて鑑賞することでそれぞれの展示をより深く味わうことができるのではないでしょうか。
それでは、今年度も皆さまのご来館をお待ちしております。
(教育普及係 姜知潤)
(美術館前の桜の木です。(3/31撮影)きれいに咲いておりました。)

2025年3月26日 15:03
当館が所蔵する《泰西風俗図屏風》は、日本においてキリスト教の布教が許されていた16世紀から17世紀にかけて、西洋の絵画技法を学んだ日本人が描いた初期洋風画を代表する作品です。江戸時代に福岡藩を収めていた黒田家に伝来したもので、昭和49年から51年にかけて実施された調査によって見いだされ、翌52年に重要文化財指定、さらにその翌年(53年)に当館へ寄贈されました。

その後、昭和63年に修理が実施され、多くの展覧会で展示公開がなされてきました。ですが、修理から時間を経る中で保存上気になる箇所が出てきました。下に掲載しているのが修理前に撮影した写真です。

一見、特に異常はなさそうですが、よくみると絵具のひび割れや紙がめくれているのがわかります。
このまま放っておくと、普段の取り扱いでひっかけてしまう恐れがあるのはもちろんですが、ちょっとした振動で絵具が落ちてしまう可能性もあります。
一般的に、日本の伝統的な材料・技法で制作された作品は、一度本格的な修理を実施すると、100年くらいは状態が安定するといわれています。ですが、《泰西風俗図屏風》を含む初期洋風画の場合は、西洋由来の材料や技法が用いられているためか劣化のスピードも速いようで、通常よりも短いスパンでケアをする必要があるのです。
そこで、令和6年度国宝重要文化財等保存・活用事業補助金の交付を受けて修理を実施することにしました。修理を手掛けたのは昭和63年時と同じく、東京の半田九清堂です。今回実施した修理は「剥落止め」と呼ばれるもの。絵具のひび割れや紙のめくれ部分の隙間に膠や糊からなる水溶液を注し入れたのち、上から圧すことで接着する、という繊細な作業を劣化の進んだ箇所全体に行いました。

その甲斐あって、絵具のひび割れや紙のめくれも安定した状態に戻すことができました。(左が修理前の写真、右は修理後に同じ個所を撮影した写真)

ところで作品修理は、保存状態を安定させることはもちろんですが、様々な機材を活用した科学調査を実施するための貴重な機会でもあります。今回は、使用されている絵具の材料の特定を主たる目的として、蛍光X線分析(写真左)や顕微鏡写真撮影(写真右)などを行いました。

これらの成果の一部は来月に実施するつきなみ講座「古美術の作品修理について」(令和7年4月19日(土)15:00~16:00 於:福岡市美術館1階、レクチャールーム)でもご紹介します。次年度以降の公開予定についても随時ご案内いたしますので、ご期待ください!
(学芸員 古美術担当 宮田太樹)
2025年3月5日 09:03
はじめまして。2月から福岡市美術館 近現代美術係の学芸員となりました、花田と申します。初めて担当するブログなので自己紹介や2月中の出来事を話してみようと思います。
私は高校までを宮崎で過ごし、大学は大阪にいましたが、父の実家が福岡にあったこともあり、小学生の時にはちょこちょこ福岡に来ていました。また、1年ほど福岡に住んだ際には寮が大濠公園の近くにあったのですが、福岡市美術館はちょうどリニューアル期間だったので足を運ぶことはできませんでした。私が初めて福岡市美術館に来たのは去年の就職試験のときになります。試験前日に展覧会を見に行こうと、どきどきしながら大濠公園駅から歩いてきて、間違えて舞鶴公園の三の丸広場に行ってしまい、ここはどこだ?とウロウロしていたのが懐かしく思い出されます。美術館に着くと、まずチケット売り場はどこだろうとウロウロし、館内でも展示室を見たりカフェに入ったりショップを見たりとウロウロしていました。今改めてホームページを見直すと、フロアガイドにきちんとチケットカウンターの場所が表示されていました。ちゃんと確認しておかないといけないですね。そんなこんなで、かつて近くを行き来していた場所で今働けることに勝手ながら縁を感じています。
ところで、私は大学院の頃は近代日本美術、なかでも鏑木清方について勉強しており、清方が歌舞伎などの芝居好きだったこともあって、画家が芝居をどのように考え、どのような意図や工夫をして描いていたのかについて考えていました。また、画家によって都市の捉え方、都市のなかで興味を持って見る対象が異なっており、画家が都市をどのように見ていたのか、どのように作品に描いていたのかという点にも興味を持っていました。福岡市美術館には清方の弟子である福岡市出身の小早川清や久留米市出身の吉田博の作品があるので、師の清方と弟子たちの展覧会はどうだろうか…と漠然と考えてみたりしていますが、今の目標はまず館や日々の業務に慣れることです!2月からの勤務だったので、修士論文を出してすぐ福岡に来て、このブログを書いている現在は働き始めて約1ヵ月が経ちました。2月中は、収蔵庫を案内していただいたり、展示室などにある乾湿計の用紙交換のやり方を教えていただいたり、他館に挨拶に伺ったり…見るものほとんどが新鮮で、恥ずかしながら知らないことばかりでした。日々の業務の一つに閉館業務というものがあり、閉館時間前に作品の状態の確認や設備の点検をするのですが、2月担当の私は17時頃に展示室、特に2階の近現代美術室を見回っておりました。初日はどのような点を確認するのかを教えていただき、監視員の方に挨拶しながら見回りました。最近は館内のどこにどの部屋があるのか、やっと覚えてきましたが、たまに収蔵庫までの道や階段を歩いていると迷路のように感じ、このドアを出たらここに出るのか…!という面白さがあります。さらに、業務とは関係のないことですが、通勤で通る福岡城の水堀にいた鳥が「はっはっはー」という声で鳴いていたこともありました(笑われていたのかも?)。日々、勉強し、新しいものを見て、そして反省の毎日です。
かつて小学生だった私が見ることのできた福岡の地域は限られていますが、街の様子がだいぶ変わったように感じます。記憶にある建物やお店がなくなっていたり、新しい建物がかなり増えていたり。知っているけれど知らない街という印象です。福岡にもっと慣れるために休みの時には色々な場所に行ってみようと考えています。
…というとりとめもない話をダラダラとしてきましたが、今年は早速「つきなみ講座」を担当する予定もありますので(かなり緊張していると思いますが)、みなさまにお会いできる日も近いと思います。精一杯努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

帰りがけに撮影しました。夜の美術館は灯りがきらきらして昼とは違う雰囲気です。
(学芸員 近現代美術担当 花田珠可子)