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福岡市美術館ブログ

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学芸課長ブログ

会えないなら、つながろう

現在福岡市美術館は、新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、5月7日(木)まで休館しております。

休館のち、開館そしてまた休館。目まぐるしいですが、今回は1か月の長期戦になりました。その間の美術館の活動ですが…。え、あなた誰って?すみません、申し遅れました。学芸課長の岩永悦子と申します。筆不精&出不精で、恥ずかしながら、ブログ初登場です。

4月1日付で、学芸課長と兼務で運営部長を拝命し、今年度から、運営部長が「館長」を務めます。「えーっ!中山館長ファンなのに、どうしてくれるの!」という皆様ご安心を。中山館長はこのたび「総館長」となられまして、いままでと変わらず大活躍されます。「館長」は実務面を受け持ちます。どうかよろしくお願いいたします。

一日も早く安全に開館できる日が来てほしいと願っておりますが、美術館に来ていただけない間にも、美術を楽しんでいただけるよう、休館中にさまざまな発信・取り組みをしていきたいと思います。新しい取り組みは、HPとSNSでお知らせしていきます。今後ともよろしくお願いいたします。

(館長 岩永悦子)

教育普及

福岡市美術館の「ぬりえ」ダウンロードしませんか?

新型コロナウィルス感染症のために、福岡市美術館も休館中です。その間、私たちが何をしているかというと・・・開館に向けての準備を粛々としています。よく考えれば年度末。新年度に向けての展示や印刷物制作、発送など意外にやることはあるんですよね。とはいえ、美術館が開いていないって寂しいものだなぁ、早くこの事態が収まらないかなぁ、と思う日々です。

さて、新型コロナウィルスのためにいろいろ予定が狂ってしまったのは、美術館だけでないですね。特に、急に休校になってしまった子どもさんたちは、おうちでどうやって過ごしているのかぁ、と思います。そこで、子どもたちのために何かできること・・・例えば、おうちでできる美術館体験はないかしら?と過去のワークショップなどなどの資料を探してみました。これは使えるかもと思ったのが、ささやかですが、福岡市美術館の「ぬりえ」です。実は、この「ぬりえ」、毎年、秋に開催する「ファミリーDAY」で使っている、当館所蔵作品をもとにした私たちの手作りのもの。一見シンプルな図案ですが、どんな色をぬるか、あなた次第で劇的に変わりますよ。兄弟姉妹で、あるいは家族でぬりくらべてみてもおもしろいと思います。もちろん、大人の方にも楽しんでいただければ、さらに嬉しいです。このページの下にPDFを置いていますので、ダウンロードして使ってみてください。

どうしても実物の色が知りたい!という方は、福岡市美術館のホームページの所蔵品検索で検索してみてくださいね。

所蔵品検索 https://www.fukuoka-art-museum.jp/archives/

 

▽作品タイトルをクリックするとPDFが表示されます。

※全て「古美術」作品です

 

(主任学芸主事 教育普及担当 鬼本佳代子)

コレクション展 近現代美術

時間をかけて見つめよう

1970年代末から90年代にかけて多くの作品を手掛けた渡辺千尋(1944-2009)のエングレーヴィング作品を近現代美術室Bで展示中です。

エングレーヴィングは、ビュランと呼ばれる鉄の刃物を用いて銅の板に細かな溝をつけ、インクを詰めて刷る凹版の一種です。日本の紙幣も用いられている、慎重さと集中力が必要な技法を駆使した渡辺千尋作品。「超絶技巧」の絵画とも言えますが、それだけで片付けられるものではありません。例えば、《風の遺跡》という作品。遺跡のような構造物のなかに無数の線が引かれており、よく見ると人間の体や植物の様々な形が浮かび上がってきます。私はこの作品にこちらを向いている顔を見つけたとき、時を超え、作家と目が合ったような感触を得ました!緻密に作りこまれた渡辺の作品は、息をひそめて見つめられるのを待っているかのようです。

 

左:会場内にはルーペを置いています 右:展示風景

渡辺作品は時間をかけて見つめることでより深い意味を読み取ることができるのですが、実は「見ることを通した作家との対話」は彼の文筆活動にも通じる姿勢です。

『殉教(マルチル)の刻印』(2001年)は故郷である長崎県南高来郡有家町に伝わるキリシタン銅版画《セビリアの聖母》を復刻した際の経緯を綴ったルポルタージュです。《セビリアの聖母》は、日本で初めて制作された銅版画の一つで、1597年に26人がキリシタン弾圧によって殉教したその年に彫られたものです。渡辺氏は、制作の背景を理解するために26聖人のたどった京都から長崎・西坂までの道のりを徒歩で踏破し(!)、その後に模刻を行います。作業をする過程で、渡辺氏はイメージのもとになったスペインにある壁画や、中国に伝わる別のバージョンの版画にあったはずの鳩が消えていることを発見し、ここから、キリシタンであった作者がある心境の変化を迎え、手を加えたことを推察します。渡辺氏は、あくまで銅版画家の一意見だ、として、自身の考察が適当かどうかは保留していますが、真摯に作品を見ることで導き出した解釈には説得力が宿っています。

渡辺千尋『殉教(マルチル)の刻印』小学館、2001年

展示室で、「この作品のメッセ―ジは何ですか?」と聞かれることがあり、自分もまた、1つの正解を探すようにしてものを見てしまうときがあります。「作品の解釈は無限に開かれていて、答えは無限!」とは思わないのですが、まずは目の前の作品をじっくりと見て、それが発するものを受け止めることが第一歩なのでした。渡辺千尋作品はそんな姿勢を改めて教えてくれます。

渡辺千尋展は、4月19日(日)までです。是非お見逃しなく。

(学芸員 近現代美術担当 忠あゆみ)

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