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カテゴリー:教育普及

教育普及

いつもどおりではないけれど・・・今年の「どこでも美術館」の活動について

みなさんは「どこでも美術館」をご存知ですか?
このブログでも一度「版画ボックス」について紹介していますが、覚えていらっしゃるでしょうか。

その冒頭にもあるとおり、「どこでも美術館」は、美術館のスタッフが館外へ出かけ、オリジナルの美術鑑賞教材(ボックス)を使って、美術鑑賞や創作体験のプログラムを行う活動です。主に特別支援学校や離島の学校、高齢者向けの講座を行う公民館など、美術館に来てもらうことが難しい方々のもとへ出向き、活動しています。

ということで、今年も教育普及係を中心に学芸課のスタッフで公民館や学校へ出かけてきました。今回はその様子を少しだけご報告します。

今年のどこでも美術館は、いつもとは違った活動になりました。そう、新型コロナウイルス感染症です。4月の申し込みを受け付ける段階ですでに緊急事態宣言が発令され、学校も公民館も休校・休館に。なので、今年は活動ができるのだろうかと不安をかかえながらのスタートになりました。

そんな状況だったので、学校からの応募は1件だけ。それでも、公民館からは、昨年同様8件の応募があり、館の方からは「できるかどうかわからないけど、状況が良くなるという期待も込めて応募します」とのありがたい言葉も。その言葉に勇気づけられ、日々の報道にも注目しながら活動開始の時を待つことにしました。

緊急事態宣言も明け、ようやく活動が始まったのは、公民館が再開した7月でした。活動開始を予定していた6月からは1ヶ月遅れてしまいましたが、公民館や学校の方と話し合い、館内でも対策をいろいろ考えて準備を整えました。

手洗い、消毒、検温、マスクの着用はもちろんですが、一番気を使ったのが密にならないこと。どこでも美術館のプログラムでは、とにかく密になることが多いのです。例えば絵画のプログラムでは、みんなで絵の前に集まって、会話をしながら作品鑑賞をしたり、染め・織りもののプログラムでは、グループでアイデアを出し合って、カンガという東アフリカの布の着方を考えてもらったり。創作活動をする時も、机を向かい合わせにして座ってもらうのが基本です。こんなふうに参加者同士でコミュニケーションをとって、話題を共有したり、誰かの言葉に新しい発見をしたりするのも活動の楽しい部分であり、大事な要素のひとつなんです。今年は参加人数もいつもの半分に限定し、お互い距離をとりながらそれぞれで活動してもらうという少し寂しい形になってしまい、もどかしく感じる時もありました。それでもそんな心配をよそに、参加者のみなさんは、普段なかなかできない体験を純粋に楽しんでくださったようです。

いつもはこんな感じで集まって鑑賞します

今年行ったのは、絵画、染め・織りもの、油彩画の技法のプログラムでした。絵画のプログラムでは、あまり近くで絵をじっくり見ることができず、手元のプリントを見ながらの鑑賞となってしまいましたが、みなさん絵を見て気づいたことや想像したことを活発に発言してくれましたし、学芸員の話に熱心に耳を傾け、いろいろな質問も飛び出しました。染め・織りもののプログラムでは、初めて見るカンガにみなさん興味津々で、それを身にまとっていろいろな着方を試すのも、新鮮な体験だったようです。油彩画や日本画の創作活動も初めて使う絵の具や道具を使って、慣れないながらもそれぞれの表現を楽しんでくれました。

今年は離れたところから

いつものように、みんなでわいわいとというわけにはいきませんでしたが、「楽しかった」、「はじめての体験で面白かった」「美術が身近に感じられた」そして「コロナで沈んでいた気持ちが明るくなった」などと言ってくださったことに、改めて今年も活動ができたことにほっとし、こういう時だからこそ活動することの大切さをより感じることができました。そしてみなさんのコロナでたまったストレスを少しでも解消できていればいいなと思った今年の活動でした。

グループでとはいきませんでしたが、カンガの着方を考えて披露してもらいました

当初予定の日程から延期を余儀なくされた公民館もありましたが、結果的には無事に全ての館・学校で実施することができて本当によかったと思います。そして、「次回もまたお願いします」と言っていただいた公民館や学校の方々のうれしい言葉にとても励まされました。まだまだこの不安な状況は続きそうですが、またもとのように、密を気にせず活動ができる日を心待ちにして、来年の準備をしたいと思います。

(教育普及係 中原千代子)

教育普及

大掃除したら出てきたワークシート

皆さま、師走ですね。師走と言えば大掃除です。今年はなかなか難しい年でしたが、そんな困難さも払ってしまおうと、私たち教育普及係も、これまで引っ越ししてきたままになってきた資料やら、この1年でいらなくなってしまったものなどちょっと整理しようということなりました。資料室の奥やキャビネットの中を出し、いるものいらないものと分類していると・・・なんと、出てきました!1991年からの「夏休みこども美術館」のワークシートが!夏休みこども美術館は1990年から始まっているのですが、その頃は、教育専門の学芸員がおらず、さまざまな専門の学芸員たちが持ち回りで担当していたそうです。90年代の最初のころはまだ常設展示のリーフレットを転用してワークシートにしており、デザインもちょっぴりそっけないものですが、解説あり、クイズありと、それぞれ担当した学芸員が試行錯誤しながらワークシートを作っているようすが垣間見られます。

常設展示のリーフレットを転用した「夏休みこども美術館」のワークシート

1990年代半ばからは、ワークシートも豪華になり、カラー化。デザインも凝ったものになり、ちょっとしたお土産のような感覚のものに。正直、今のワークシートより、だんぜん紙も印刷もいいです・・・。だんだんと「夏休みこども美術館」に、学芸員たちが力を入れだしたことがわかります。それにしても、判型も内容も雰囲気も年ごとに違っていて、担当者の個性が爆発!していますね。

担当者の個性が爆発?なワークシートたち

そして、90年代末から教育専門学芸員が「夏休みこども美術館」を担当することになり、1999年から2007年まで「美術館蔵おじいさん」が登場して作品案内をするワークシートになりました。

「美術館蔵おじいさん」が作品紹介をするワークシート

実は、私、このワークシートを2007年まで担当しておりました。ついつい、ページをめくっては、まだまだ内容が練れてないなぁとか、この文章意外にいいな、など思ったり、あの時に一緒にワークショップをやった学生ボランティアさんはどうしているだろう?などと思い出したり・・・おっと、いけない!これでは大掃除がすすまない!
しかし、昔、「夏休みこども美術館」に来ていたこどもも、今はもしかしたら親として「夏休みこども美術館」に来ているのかもなぁ、など30年分のワークシートを見て感慨深く思いました。たまには大掃除もいいものです。

2000年代後半からまた判型がいろいろに。2012年にはワークシートではなく、記録集を作成しています

リニューアル直前からリニューアル後のワークシート

(主任学芸主事 鬼本佳代子)

教育普及

こども連れで美術館に行っていいと? いいよ、きぃーよ!

最近、美術館で小さなこどもを連れた人をよく見かけるようになったと思いませんか?え、こどもと美術館?無理でしょ、と思った方も多いかもしれません。

福岡市美術館では、毎年11月3日の開館記念日の前後3日間に、ファミリーDAYを開催しています。ファミリーDAYはこどもと一緒に親子で美術館を楽しむための3日間です。毎年、美術館に初めて来たというファミリーがたくさん参加しています。

今年は、新型コロナウイルス感染症の影響もあって、美術館で開催するプログラムに加えて、オンラインのワークショップや、動画の制作にも初挑戦しました。10月22日のブログで紹介した、飼育員さんとのコラボ企画もその1つです。(ブログはこちらから)

中でも、オンラインワークショップは全く初めての試みです。タイトルは「つくろう!羽ばたく色トリ鳥」(ダジャレ)。アーティストの佐土嶋洋佳(さどしまひろか)さんを講師に迎え、当館所蔵の古美術作品《百鳥図》を鑑賞した後で、自分の「羽ばたくトリ」を制作するワークショップを行いました。

伝・辺文進《百鳥図》明時代

初めての試みで、苦労もありましたが、当日は佐土嶋さんが丁寧に制作の説明をし、分からないところは質問をしてもらうという流れで、順調に進みました。分割されたモニター画面の中で、24組の親子が、楽しそうに会話しながら、時に真剣に「羽ばたくトリ」を作る姿は、見ているこちらも思わず微笑んでしまうような光景でした。最後に、全員で自分の作った「トリ」を画面いっぱいに羽ばたかせて、ワークショップは無事に終了しました。

オンラインワークショップで、講師の佐土嶋さんが参加者に話しかけている様子。

モニターを見ながら参加者とコミュニケーションをとります。

オンラインワークショップの難しいところは、参加者と「場の空気」を共有できないこと。当たり前かもしれませんが、実際に面と向かって「対話」するのと、画面を通して「会話」するのとは、違うものです。オンライン上では、相手の細かい表情の変化を読み取ることが難しく、伝わっているか、退屈していないか、判断しにくくなります。人って(もしかすると動物も?)相手の顔色を見ながら、コミュニケーションを取っているんだなーとつくづく感じました。

一方で、美術館で開催したプログラムにも、たくさんの親子が参加してくれました。展示作品のクイズに答えてお宝をみつける「かいとうキッズ!お宝みっけ」や、ガイドマップを見て、親子で会話をしながら作品鑑賞をする「ガイドマップで君もアートマスター」など、驚くことに参加者数は過去最大となりました。

作品のクイズに答える「かいとうキッズ!お宝みっけ」に挑戦

クイズの答え合わせをしたら、くじ引きをしてお宝を手に。やった!

美術館に来た親子のアンケートでは「普段は子連れで気軽には入れないので、今日は楽しかった」「おしゃべりしていいのが良かった」という声が多く、今後も「行ったことないけど、こどもと美術館に行ってみようか!」と思ってもらえる活動を続けていきたいと心新たにしました。やっぱり親子の笑顔があふれる美術館っていいものです。

ガイドマップをヒントに作品鑑賞中。何が描いてあるのかな?

(学芸員 教育普及担当 﨑田明香)

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