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珠玉の近代絵画─「南国」を描く。
福岡市美術館ブログ

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南国の猫たち
珠玉の近代絵画─「南国」を描く。

「珠玉の近代絵画─「南国」を描く。」展も、残り10日余りとなりました。本展ブログの3回目は、猫に注目してみましょう。
さて、この猫たちはどこにいるでしょうか? 
文中の紹介文をヒントに、ぜひ会場で「本物」の猫たちを見つけてみてください。難易度の高いものもいます。

[難易度:低]つい目が合ってしまう黒猫、睨まれると怖い

 まるまると太った黒猫です。きっとおいしい魚をたくさん食べているのでしょう。生まれは八丈島。生みの親は千種掃雲という日本画家です。
 この黒猫、その名も《南国》(1927年、京都国立近代美術館所蔵)という作品の主人公です。じっとこちらを睨む目には凄みがあり、目が離せなくなります。
 黒猫の住処は、たくましい葉を四方に伸ばすリュウゼツランの根本。日がな一日、この草陰で過ごすのが日課のようです。周りにまかれた金砂子が、強い陽射しをあびてキラキラしています。

[難易度:低]ああして昼寝したい…午睡する猫

 

 体は白で頭としっぽが黒ですが、さっきの黒猫と同じ親から生まれたので、黒猫とは兄弟です。
 八丈島のカシワのような木のある民家に住んでいます。この木の葉は一枚一枚が大きいため、地面に大きな陰をつくってくれます。この《木陰》(1922年、京都国立近代美術館所蔵)が、この猫のとくにお気に入りの場所。涼しいし、チラチラ揺れる木漏れ日が心地良いし、お昼寝に最適みたいです。
 この家の主人も、先ほどまで作業をしていたようですが、臼と杵をおいてどこかに行ってしまいました。午睡の時間でしょうか…。

[難易度:中]すまして、こちらをうかがう白猫

 

 すまし顔の白猫は、カボチャ棚の農家の住猫です。住まいは、日本画家の堅山南風さんと同じ郷里の熊本。
 雨が降らずに《日和つづき》(1914年、福岡市美術館所蔵)のため暑くて、白猫も動かずにじっとしています。カボチャ棚の陰で唐臼をつくおじいさんも暑いようで、上着を脱ぐだけでは足らずに、大きな団扇を握っています。
 カボチャの葉陰からカタンカタンと聞こえてくる唐臼の音をききながら、白猫は、近くの赤いカンナも気になるようで、金色の目でじっと見つめています。

[難易度:高]ジジ?! 見つからないように隠れています

 

 「魔女の宅急便」(スタジオジブリ1989年)の「ジジ」と思いきや、目は金色(ちなみにジジの目は白)、生まれも育ちも大島です。
 100年以上も前に、伊豆諸島の大島に三原山を見に来た坂本繁二郎さんが見つけました。坂本さんは、大島のいろいろなことに興味をもったようです。遠くで噴煙をあげる三原山はもちろん、裸で髪を洗う女性、頭に野菜を載せた人、洗濯物をほす人…牛のお尻まで。小さな黒猫も含めて、どれも《大島の一部》(1907年、福岡市美術館所蔵)だったのでしょう。

 大島や八丈島、熊本の猫を紹介しました。しかし、今回の展覧会では、台湾や南洋諸島、東南アジア、インドに取材した絵に猫は登場していません。もちろん、各地に猫はいますが(例えばタイの猫はシャム猫)、南へ旅した日本人画家にとって、とくに珍しいものではなく、描きたい生き物でもなかったのでしょうか…。
 日本人画家が目にとめた動物は、台湾では水牛、インドでは背中にコブのある印度牛(カンクレージ)や象、孔雀や極楽鳥などでした。やはり「南国」イメージにあう動植物こそが、理想的な「南国」の絵を飾るのに欠かせない要素だったのです。その中から1点紹介します。

荒井寛方 聖牛図 1919年頃 さくら市ミュージアム -荒井寛方記念館-所蔵

 牛は、インドのヒンドゥー教徒にとって聖なる存在です。その聖性を表現するため、寛方は牛の周囲をぼかすことで、白い体が発光しているように描いています。菩提樹には尾の長いつがいの鳥がとまり、その上空にも鮮やかな色の鳥が飛び交っています。

 猫たちが(ほかの動物や鳥たちも)会場でお待ちしています。どうぞ発見と出会いをお楽しみください。

 

珠玉の近代絵画─「南国」を描く。
会期:10月11日(土)~11月24日(月・休)
作家数60名、作品と資料合わせて227点のボリュームで近代の日本人が描いた「南国」を紹介します。

(近現代美術係長 ラワンチャイクン寿子)

 

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