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福岡市美術館ブログ

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総館長ブログ

美術館のいろ、またまた増色(殖)。

どーも。総館長の中山です。

みなさんは地下鉄大濠公園駅、ご利用になられますか? 降りたことない? お花見のときだけ?

2年前の2019年3月21日の美術館リニューアルオープンから、「福岡市美術館口」という副駅名をつけていただきました。同時に、構内の太い円柱が、ダリやミロ、シャガール、草間彌生の作品写真でドーンと装飾され、駅が美術館色に染まりました。また一年後には、上り下り両方向のホームのベンチ4か所全部に、桜をテーマにした様々な美術館所蔵作品による壁面装飾も登場して、駅に着いたとたんに美術館の癒され空間が広がっています。桜といえば、駅のシンボルマークが桜ですし。もう開花宣言もあったし。季節ですね。

今回、さらにさらに美術館へと続く3番出口(とはいっても大濠公園を歩いて10分はかかりますけど)にも美術館の色が増えたんです。それがこちら↓↓

撮影:﨑田明香学芸員

撮影:﨑田明香学芸員

撮影:﨑田明香学芸員

階段の側面に広がっているのは黒田家に伝来した土佐光起の「磯千鳥図屏風」からアレンジしたデザイン。金箔が輝く感じもよく再現されています。群れ飛ぶチドリがかわいいです。全部同じ顔ですけど。見とれて足元がおろそかになりませんよう。

踊り場の壁面には郷土作家吉田博による版画シリーズ「桜八題」から選んだ3作品。そう、ここにも春が。桜が。屏風も版画も実物よりもかなり巨大化されていて、細部がよくわかります。大濠公園駅をご利用の際は、是非注目してみてください。

ところで、大濠公園駅の開業はわたしが美術館に奉職した1981年と同じ年。もう40年前です。お互い、ちょっとくたびれたかな。最近、「まあ、いいか」とエレベーターに乗りがちなんです。我ながら情けない。チドリに笑われますね。がんばって、階段を登ろうっと。

総館長 中山喜一朗

ミュージアムショップ

マスターロードに新しい仲間が増えました。

創業100年を超える博多人形工房の中村人形様が制作・監修をした、大人から子供まで気軽に人形の絵付け体験が楽しめる素焼きの博多人形『マスターロード』に新しく、レオナールフジタ《仰臥裸婦》をモチーフにした『フジタの猫』と、電力の鬼との異名を持つ松永安左エ門のコレクションより《地獄草紙断簡・勘当の鬼》をモチーフにした、『地獄草紙の鬼』の2種類が12月より発売中です。製作者である中村弘峰様のSNSで紹介して頂いた翌日にはどちらも完売してしまう程の人気商品です。

オーソドックスに水彩絵の具で塗るもの楽しいですが、お勧めの画材は色鉛筆です。何度も研ぐ必要があり少し大変ですが、はみ出したりせずに塗りたい箇所だけ塗る事が出来るので、初心者の方には特にお勧めです。私は《勘当の鬼》を水彩色の色鉛筆で、赤オニさん風に塗ってみました。目元などの細かい部分は、色鉛筆を何度も研いで極細にして塗り、それでも芯が届かない箇所は、奈良筆で有名な『あかしや』のカラー筆ペン『彩』で重ね塗りをしています。こちらは筆職人が一本ずつ手造りで穂先を仕上げている為、非常に塗りやすく、絵手紙や水彩画にも描く際にもお勧めです。ミュージアムショップでは勿論、文具店様でも購入できます。

赤オニさんの次は《フジタの猫》を、4月29日(木)~7月18日(日)に開催される『高畑勲展』に合わせて、高畑勲さんが監修された大阪を舞台にした某アニメに登場するキャラクター、『月の輪の〇蔵』こと『小〇』と、首に赤いスカーフを巻いた『アン〇ニオJr.』をモチーフに塗ってみました。こちらはそれぞれ水彩色と油彩色の色鉛筆で塗っています。

私のように絵心が全くない素人が塗った見本だけでは心もとなかったので、絵が得意な上司に無理やりお願いをして塗ってもらいました。こちらはオーソドックスに水彩絵の具を使用しています。プライスカードを付けていたら、普通に売れていきそう…。

皆様も鬼にオシャレなスーツを着せてみたり、ご自宅で飼われている猫と同じ模様を描いたり、思い思いの色で自由に彩色し、オリジナルの博多人形を作ってみましょう。今回、ご紹介した『フジタの猫』と『地獄草紙の鬼』以外にも、福岡市美術館の所蔵品をモチーフにした、『うさぎ』・『鳳凰』・『若君』・『姫君』も好評発売中です。

・マスターロード フジタの猫   1,760円(税込)
・マスターロード 地獄草紙の鬼  1,980円(税込)
・マスターロード うさぎ     1,760円(税込)
・マスターロード 鳳凰      1,760円(税込)
・マスターロード 若君      2,200円(税込)
・マスターロード 姫君      2,200円(税込)

絵の具で塗った「マスターロード」

色鉛筆で塗った「マスターロード」

教育普及

認知症の方のための回想法プログラムをやってみました

この2月は、福岡市博物館、福岡アジア美術館と一緒にオンラインを利用した「回想法」にチャレンジをしました。ところで「回想法」とは何でしょう。高齢の方々が昔のことを思い出し、その頃のことを語ってもらうことで、生き生きとした気持になっていただき、そのことが、認知症の予防や症状の緩和が期待できるとされています。しかし、それだけではなくコミュニケーションの力や人生を前向きに進む気持ちを育むことなど、様々な効果が挙げられています。昨年末に「令和2年度戦略的芸術文化創造推進事業『文化芸術収益力強化事業』、博物館等における【新しい関係性の構築】による収益確保・強化事業』事業A①歴史博物館、自然史博物館、美術館における認知症対応プログラム実践事業 歴史博物館、自然史博物館を対象とした収蔵品等活用による『回想法』プログラム」という長~い名前の委託公募がありまして、かねてから「回想法」をやってみたいと思っていたこともあり、せっかくなので、3館一緒に応募しよう!ということで応募したのでした。お陰様で公募に通り、3館が連携して行う「回想法」プログラム、名付けて「福岡市ミュージアム・シニア・プログラム」を実施することになったのです。

このプログラムでは、「過去のことを話す」手掛かりとして、それぞれの所蔵品を使いました。しかし、プログラムの主要メンバーであるスタッフのうち、回想法経験のあるのは2人ほど・・・他は皆無です。そこで、回想法の経験のある外部の方や認知症を研究しておられる医療関係者の方に相談したり、福岡市の保健福祉局を訪ねたり、いろんな人たちの協力を得て、おっかな、びっくり活動を始めることになったのでした。しかも、始めるにあたって困ったことが一つ。そう、新型コロナウイルス感染症です。今回、福岡市内の高齢者通所施設に協力してもらい、その利用者の方に参加していただいたのですが、コロナのお陰で、参加者の皆さんに直接会うことはもちろん、施設に入ることもはばかられました。しかし、ここでめげるわけにはいきません。これまた、おっかなびっくり、オンラインで実施することにしたのです。

さて、このプログラムは5回のオンラインでの対話で構成されました。毎回同じ方が3人参加され、皆さんそれぞれ症状は違いますが、軽度の認知症を患っておられます。初回は参加者ご本人たちのことを知るためのヒアリングです。参加者の皆さんとはもちろん初顔合わせ。しかも、オンライン上ですから、相手の反応も良く読み取れず、否が応でも緊張が走ります。参加者の皆さんも「何が起こるのかしら?」と不安だったのではないかと思います。とはいえ、施設の方のサポートもあり、色々とお話を引き出すことはできました。しかし、会話というよりも質疑応用のような雰囲気になってしまったのも否めません。次回からが正念場です。

そして、2回目、「回想法」の初回を担当したのは福岡市博物館です。使用したのは、レコードプレーヤーと懐かしの歌謡曲、そして昔の福岡を映した写真でした。まずは、レコードプレーヤーを足掛かりに、参加者の皆さんの思い出などをききました。最初はまだ緊張もあったのか、短い返答や「あまり思い出せない」など言っていた参加者の皆さんですが、懐かしの歌謡曲が流れると、手拍子をしたり、ハミングをしたり、合わせて歌を歌ったりされ出しました。歌の力、スゴイ!その後、福岡の昔の町の様子の写真を見ながら、デパートに行った話や、自分の仕事の話、そして幼いころの話などをされました。

3回目は、福岡アジア美術館の所蔵作品図版カード「アートカード」を使ったプログラムでした。カードの中から「家族」をテーマに図版を選び、その図版カードを見ながらご家族のお話や思い出をうかがいました。すると、イワシ漁に行ったお話や近所の人とお酒を飲んだ話、畑仕事を手伝った話や、福岡アジア美術館の作品図版を見ていたからでしょう、ご家族とシンガポール旅行に行った話も出てきました。そして早くに亡くなったご姉妹のお話などされて涙ぐまれる瞬間もありました。「家族」を描いた作品図版だったせいか、次々とお話が出てきました。しかも、前回よりもずっと打ち解けた様子でお話しされていたのが印象的でした。

そして4回目。いよいよ福岡市美術館の番です。今回のプログラムのために、冨田溪仙が描いた《御室の桜》の60%の大きさの複製屏風を制作しました。

そして、それを施設に設置していただき、鑑賞しながらお花見の思い出を語っていただきました。さらに、桜の木片も用意し、版画の版木などに山桜の木が使われていることを伝えて、吉田博《櫻八題 花盛り》などの複製画も鑑賞してもらいました。

「お花見」は、高齢の皆さんも、そして私たちも馴染のある習慣なので、桜の花の絵を見ながら思い出を掘り起こせるんじゃないか、との思いからこのような流れにしたのですが、「もし、お花見をしたことが無かったらどうしよう・・・」という一抹の不安もありました。しかし、屏風を見ながら「花の色がそれぞれ違う」や「きれい」という感想を言っていただいたり、動物園近くにお花見に行ったこと、お弁当に花びらが落ちてきた話や、幼いころに近所の桜を見に行ったお話など次々と昔の思い出が出てきて、ほっとしました。また、参加者の皆さんが花見に行った場所などは、私たちが今も行く桜の名所でもあり、私たち自身も共有できる話題として楽しめました。そして、ヒアリングの時には見られなかった、お互いに質問をしたり、説明を補足したりというコミュニケーションが参加者の皆さんの間に生まれたことが、何より嬉しく感じたことした。また、後ほど施設の方がおっしゃっていたのは、屏風を使うことで、施設の中に異空間が出来上がり、それが皆さんの高揚感にもつながったとのことでした。

実は、福岡アジア美術館の回想法終了後に家族の絵を、そして当館の回想法終了後に桜の絵を描いていただいたのですが、三人三様の表現となっていました。それを見て、回想法に「表現」を加えた、高齢者のための新たなプログラムが考えられるのではないかとも思いました。

おっかなびっくり始めたこのプログラムですが、参加者の皆さんの思い出を引き出すことができ、美術館・博物館の新しい可能性を感じることができました。しかし、まだまだ私たち自身が気づいていない、いろいろな可能性があるはず!今後も福岡市立の3館、そしてそれだけでなくさまざまな人々、施設と協力しながら、その可能性を探っていきたいと思います。

(主任学芸主事 教育普及担当 鬼本佳代子)

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