2021年12月17日 09:12

先週のブログでお届けした「『想いの種』をつくろう!」ワークショップ。油山市民の森で開催した1日目につづき、今回は福岡市美術館で開催した2日目についてご紹介します。
なお、先週のブログを読んでいない方のために、「想いの種」ワークショップとは何か簡単にご紹介しておくと(以下先週のブログより)
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「想いの種」をつくるワークショップを、11月23日と28日に油山市民の森と福岡市美術館で共同開催しました。「想いの種」とは何か?このワークショップはアーティストの小林重予さん(1957-2017)が行っていたものを、当館で再構成して実施するものです。小林さんは北海道に生まれ、幼少期から植物の神秘性や不思議な物語性を感じながら育ったそうです。その中で、特に人間の感情について、自分が悲しいときには「相手の気持ちが毒のある種になって、自分の中で芽を出し」たり、誰かを喜ばせたときには「自分の気持ちが誰かの心で花を咲かせ」たり、まるで『植物の種』が人の中に飛び込んで芽吹いているみたい、と感じていたそうです。そして、それをテーマに「自分の感情を、種の持つ物語に重ねて表現する」というこのワークショップが生まれました。
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【2日目】11月28日(日)
場所:福岡市美術館 天気:晴れ
ワークショップ1日目は雨模様でしたが、2日目は晴れ。この日は美術館のアートスタジオで、「想いの種」を立体作品にして制作します。
始めに、1回目の最後に考えた「種の物語」のワークシートを読み返しました。油山市民の森でひろった種で作った標本も机に並べてワークシートを見ると、どんな「想いの種」をつくろうとしていたか、皆の中にイメージがよみがえってきたようです。

準備万端になったところで「種」の設計図をつくります。アーティストの小林重予さんが残してくれた種のパーツから「自分の気持ちに似ている」ものを選びます。パーツはすごくたくさんあって、選ぶだけでもワクワクです。そして、選んだパーツを全てトレーシングペーパーを使って丁寧にうつしとっていきます。


このとき、コピーしてしまえば一瞬で済むけれど、あえて線をなぞるという時間がかかって地道な作業をしました。でも、とっても細かい線を真剣になぞっていると、同じ種のパーツでも、なぞった線の微妙な太さや揺らぎによって、その人だけのものになっていくような感覚があります。そして、こうやって意識を集中させて線を引くという、普段は効率が悪くて避けてしまう作業も、やってみると意外と楽しくて、年齢にかかわらず夢中で線をなぞっていました。
次に、なぞった数々のパーツを組み合わせて、種のかたちを設計していきます。小林重予さんの言葉を借りると「種が外へはじけていくのか、内に入っていくのか、密になっているのか。同じパーツでも少し動かすと印象がかわっていくのがわかるはず」ということ。自分の「想いの種」はどんな形をしているのか、手を動かしながら考えていきました。

昼食をはさんで、午後からはついに材料を使っての制作です。石塑粘土を中心に、針金やコットンパール、フィルムなどさまざまな素材を使って設計図を立体にしていきます。つかう素材はさまざまですが、色は全て「白」を選びました。これは小林さんのアイディアで、生前「白いほうが、かたちがよく分かるよね」とおっしゃっていたそうです。

石塑粘土を手の中でこねたり、水をつけて表面を滑らかにしたり、針金で不規則なパーツを作ったり。そんな作業をしながら、親子で笑ったり、美術館のスタッフに質問したり、隣のテーブルをのぞいて驚いたり、いつの間にか、知らない人同士だった参加者が、自然と打ち解けていく空間がありました。この2年、新型コロナウイルスが、人々に物理的な距離を強制し、それがいつの間にか心理的距離も助長させていたような毎日の中で、こういった空間は心を温かくしてくれて、個人的にも嬉しいものでした。

午後はしっかり時間を制作に費やし、ついに作品が完成。どんな「想いの種」をつくったか、みんなで見せあいました。親からこどもに届ける種、おばあちゃんに飛んでいく種、未来への種・・・いろいろな種がありそれぞれに物語がありました。

2日間のワークショップはこれで終了です。このワークショップは来年からも継続して開催する予定です。たくさんの「想いの種」が芽を出すことを想像すると今から楽しみでなりません。

(学芸員 教育普及担当 﨑田明香)
2021年12月7日 16:12
寒くなってきましたね。紅葉がきれいだった大濠公園の木々もあっという間に散って、師走だなと実感します。
さて、10月7日のブログでご紹介した「想いの種」をつくるワークショップを、11月23日と28日に油山市民の森と福岡市美術館で共同開催しました。「想いの種」とは何か?このワークショップはアーティストの小林重予さん(1957-2017)が行っていたものを、当館で再構成して実施するものです。小林さんは北海道に生まれ、幼少期から植物の神秘性や不思議な物語性を感じながら育ったそうです。その中で、特に人間の感情について、自分が悲しいときには「相手の気持ちが毒のある種になって、自分の中で芽を出し」たり、誰かを喜ばせたときには「自分の気持ちが誰かの心で花を咲かせ」たり、まるで『植物の種』が人の中に飛び込んで芽吹いているみたい、と感じていたそうです。そして、それをテーマに「自分の感情を、種の持つ物語に重ねて表現する」というこのワークショップが生まれました。
10月に福岡市植物園でも同ワークショップを行いましたが、今回それと大きく違うのは2つ。1つは、油山市民の森と福岡市美術館と場所を変えて計2日間のワークショップであること。もう1つは、制作するものが平面ではなく立体作品であることです。
で、結局なにしたの?って声が聞こえたような。もったいぶってごめんなさい。では、どんなことをしたのか、時間軸に沿ってご紹介します。
【1日目】11月23日(火祝)
場所:油山市民の森 天気:寒気が流れ込み、朝から雨
この日は朝から福岡市内に厚い雨雲が垂れこめ、あいにくの雨模様。前日から天気予報を見てはハラハラしていましたが、やっぱり雨か。。と嘆きながら10時にワークショップ開始。このワークショップを考案した小林重予さんについて、また彼女の作品を鑑賞し「想いの種」とは何か、2日間でどんなことをするのか、を共有しました。

そんな話をしていると、奇跡的に雨雲が流れて雨がやみました!「いまだ!」と全員で植物の種を探しに施設内の散策へ。散策のナビゲーターは油山市民の森の小川さんです。

はじめに「種はその生存戦略として『遠くへ、遠くへ』いこうとする」という話を小川さんから聞き、種をさがして草むらに入ると「あー!服に何かついてる!」「ギャー」とこどもたちは大騒ぎです。「種の作戦に引っかかりましたね」としたり顔の小川さん。そうです、皆さんも小さいころに外で遊んで帰ると、洋服に何かくっついていたことがありませんか?私の住む地域ではくっつき虫とその草を呼んでいました。こんなふうに獣にくっついて「遠くへ、遠くへ」いこうとする種がいます。


また、ちょうどこの日は紅葉まっさかりで、モミジの葉が黄色や赤に色づいていました。思わずその美しさに見とれていると、小川さんから「種がついてるの見つけられた?」と。「え?種?」と、みんな一斉に木の下に集まって種を探します。少しすると「あった!見つけた!」の声が。

モミジってこんな種をつけるんですね。羽のような、ブーメランのような形で、風にのって「遠くへ、遠くへ」行こうとする種だそうです。

その後も、油山市民の森を散策し、いろいろな種(や葉っぱや枝など)を見つけました。散策の時間が終わりになると、タイミングよくちょうど雨雲が戻ってきたので、急いで室内に戻ると、ちょうどお昼の時間。それぞれ昼食をとって、午後の活動へ。
午後からは、まず集めた種をボードにならべて小さな標本をつくります。種それぞれの特徴(物語)を思い出しながら、標本をデザインしていきました。みんなの作った標本を見比べてみると、それぞれの個性があふれていて、外の寒さとは裏腹に、会場がとっても暖かい雰囲気になりました。

そして、最後に行うのは2日目に美術館で制作する「想いの種」に向け、自分の気持ちを重ねて種の物語を考えるということ。うーん、ちょっと難しそう?小林さんが残してくれたワークシートを使いながら、どんな種に、どんな気持ちを乗せていくかを考えました。
「自分の気持ちを種に重ねて物語にする」ことに、苦労していたのは、実は大人です。(保護者も1人の参加者として自分の作品をつくります!)こどもたちは、驚くほどあっと言う間に自分なりの種の物語を想像していました。「おかあさん、がんばって~」という声が微笑ましい時間でした。

さあ、これで1日目は終了です。2日目は福岡市美術館に場所を変えて、立体作品を制作します。ブログも長くなってきましたので、続きは次回のブログでご報告いたします!
(学芸員 教育普及担当 﨑田明香)
2021年12月2日 09:12

前回ご紹介した美術品と箱の話①で、輸送時に梱包する箱についてお話をしました。箱で輸送時に気を付けるべきことは主に移動時の温湿度変動と振動がメインとなります。そのため、輸送用の箱は移動に特化した作りとなっています。
では収蔵時に使用する箱はどうでしょうか?
収蔵庫で保管する際は移動というよりも、適切な保存環境で安全に設置されていることが重要となります。
美術作品が損傷しないように気をつける、ということはなんとなく分かっていただけるかと思うのですが、なぜそもそも美術作品は損傷するのでしょうか?
実は美術作品は下記の環境要因によって損傷が起こると言われています。
①温湿度
②光
③空気
④生物
⑤振動
⑥火災・地震
⑦盗難・人的被害
(参照:京都造形芸術大学(編)『文化財のための保存科学入門』2002)
最近は水害も多いので⑥に水害も加えた方が良いかな?と思います…が、それはともかく箱に話を戻しましょう。
輸送用に使われている段ボールは一般的に再生紙を使っておりpH値は酸性となります。そのため、そのまま輸送用の箱で保管すると内部に酸性ガスが充満し、美術作品にも悪影響を与えてしまいます。先ほど紹介した③空気というのがこれに該当するわけですね。
そこで開発されたのが下記の箱です。

これは中性紙保存箱と呼ばれる中性紙を用いて作製された保存専用の箱になります。つまり、この中に保管された美術作品は正常な空気環境下に置かれることになります。もう一つ重要なのは中に何が入っているかラベルや資料情報が書かれた紙も一緒に同梱して整理することです、これが紛失予防にもつながります。

この中性紙保存箱は上の図のように組み立てるだけの簡単なタイプもありますが、そのサイズに入らない美術作品も福岡市美術館は多く所蔵しています。そのため、サイズが無い場合はせっせと気合(!)で作る、という選択をします。適度な強度があるため、一般的な段ボールと同様に工作が可能なんですね。
最近作った箱がこちらです。

これは額装されていないむき出しのキャンバスを保管するために考えた方法です。キャンバスを裏面で固定しているもので、輸送箱にも同様の形状がありトランジットフレームとかトラベルフレームと呼ばれています。この形状をそのままに素材を変えて応用したものがこちらです。裏面の金具が出てるところはちょっとだけ穴を空けて壁や柱に固定できるようにしました。これで安全に棚の中にも入れられますし、移動時に壁や柱にちょっとだけ仮置きする際にも固定が可能となります。
手作り感が溢れる感じはご愛敬、このように地道に手間暇かけるとその分結果が返ってくるなぁ、と実感する時があります。
所蔵品は今もしっかりと収蔵庫に保管されており、皆さんに展示でお披露目される日を待ち続けています。
(学芸員 作品保存修復担当 渡抜由季)