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アンゼルム・キーファー《メランコリア》公開修復のお知らせ
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コレクション展 近現代美術

美術館で、作品はどう守られているのか
アンゼルム・キーファー《メランコリア》公開修復のお知らせ

美術館の作品は、一度完成したら、その姿のまま長く残っていく。そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。

けれど、その裏側では、作品を未来へつないでいくための地道な調査や修復が続けられています。今回、福岡市美術館では、所蔵作品であるアンゼルム・キーファー《メランコリア》の公開修復を実施します。普段は見ることのできない、修復家が実際に作品と向き合う現場を間近で見られる貴重な機会です。(開催情報については末尾に記載しています。)

作品の基本情報や画像は、本ウェブサイトの作品紹介ページをご覧ください。

今回対象となる《メランコリア》は、1989年に制作された立体作品です。内部は木材とウレタンフォーム、外側は薄い鉛板で覆われています。
しかし2021年、この作品頭部で鉛の一部が膨張・崩壊し、脱落するという損傷が発生しました(図1)。

図1 頭部から鉛板の一部が脱落して出来た穴

調査の結果、原因は作品の外側ではなく内部環境にありました。内部の木材やウレタンフォームから放出された有機酸やホルムアルデヒドといったガスが、長い時間をかけて鉛を腐食させた可能性が高いことが判明したのです。

ただし、原因が分かったからといって、簡単に内部を作り替えることはできません。
現代美術の保存修復では、「元通りに直す」ことだけが正解ではなく、素材や変化そのものが作品コンセプトの根幹を担っている場合もあるからです。

キーファーは、15~16世紀の画家アルブレヒト・デューラー《メランコリアⅠ》や、錬金術の思想に着想を得てこの作品を制作しました。鉛は、金(ゴールド)へ変化していく始まりの金属として古くから特別な意味を持っていました。また、柔軟に変形する能力を持つ一方で、密度が高いためにX線等の放射線から保護できるという特質も、作家が特に鉛に惹かれた理由でした。

つまり作家にとって鉛は作品を制作するうえで重要な構成要素であると同時に、鉛が変成すると作家が知った上で、あえて採用しているため、作品のコンセプトにも着目しなければなりません。そのため修復にあたり、美術館と作家側に確認した上で修復方針を検討しました。

「積極的に修復するのか」「現状を維持するのか」「劣化そのものを受け入れるのか」。

検討の結果、損傷した部分のみを補修し、作品の現在の姿を維持するという考え方を採用しました(図2、3)。

図2 修復中

図3 修復後

そして現在、さらに劣化が進行した鉛板について、追加の修復作業を行うことにしました。

今回の公開修復では、作品の保存と向き合う現場そのものをご覧いただけます。

完成した作品を鑑賞するだけでは見えてこない、「作品は時間とともに変化し、その変化と向き合いながら受け継がれている」という事実。美術館が担うもう一つの活動そのものを、ぜひ鑑賞ください。

 

【公開修復概要】

日時:令和8年7月7日(火)~7月18日(土)
            午前9時30分~午後5時30分
            ※日曜・休館日を除く
会場:福岡市美術館 2階 近現代美術室C
参加費:無料(コレクション展観覧券が必要)
※修復家の休憩等により、作業を中断する場合があります。
※作業進行状況により、修復家へのお声がけをご遠慮いただく場合があります。

作品を「見る」だけでなく、「守る」現場に出会える期間限定の機会です。ご来館をお待ちしています。

(学芸員 作品保存管理担当 渡抜由季)

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