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福岡市美術館ブログ

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学芸課長ブログ

「藤田嗣治と彼が愛した布たち」展、終了。みなさま、ありがとうございました!



10月17日から12月13日までの、開館50日間。今考えれば、この会期のまま開催することができたというのは、当たり前のようで、当たり前ではありませんでした。これまで、その当たり前に気づかずに、展覧会を開催してきたことを振り返させられた今年ではありました。たくさんの皆様のご協力なくして開催できず、また、たくさんの皆様のご来場なくして展覧会はありえませんでした。心から御礼申し上げます。

ふりかえれば、いきなり、「はい明日から休館!」となって、ぐらぐら揺さぶられた3月、4月。とつぜん、「美術館から開館します」というコロナ相のコメントの報道に驚愕したGW。もしも、休館になったとしても、赤字が出ないように予算書を真っ赤に書き直した、初夏。そういえば、まだ図録原稿書いてなかった…と手を付け始めた、夏。はじめてのズームで汗をかいた、展示中。そして、オープン。
今振りかえっても、クラクラします。

それでも、なにより嬉しかったのは、多くのお客様によかったよ、と言っていただけたこと。そして、「藤田嗣治という人に触れた感じがする」と言ってくださる方が多かったことです。ありがたいお言葉でした。野見山暁治先生をはじめとし、藤田ゆかりの方々-盟友・中村研一のご遺族、研究者の方々にご来場いただけたのも幸いでした。特に、中村研一・琢二 生家美術館の中村嘉彦館長には、会期の途中から貴重な御所蔵品の出品をいただき、改めて感謝申し上げます。

さてさて、今回の展覧会では、展覧会づくりをする同業の方々から、コロナ禍のなか国際展を開催したことへのエールと、「ブログ読んだよ」というお声をいただきました。ZOOM立会レポが新鮮だったとのこと。撤去時もZOOMしたのかって?…はい。しました。というわけで、顛末を。

今回は全点の梱包作業を中継しました。展示時は、こちらの13時がフランスの6時だったのですが、なんと今は冬時間で、同じ時間だとフランスは5時!?それは、あんまりにもあんまりだろうと、12月15日、16日の福岡14時、フランス6時からのスタートとなりました。

前回通り、ZOOMの前にコンディションチェックをすませました。空輸時の木箱は3つ。それぞれの木箱は3~5個程度の内箱にわかれており、ZOOMで中継しながら、出荷時と全く同じ畳み方、収納順になるように、箱におさめます。TVの料理番組ではありませんが、準備万端、あとは材料を鍋に入れるだけ、状態にしておかなければなりません。

開梱時に逐一写真を撮っておいたので、コンディションチェック後に、写真を頼りに元通りの畳み方を再現(着物の畳み方が日本と違っていて一苦労)。内箱ごとに作品をまとめて仮置きし、翌日のパッキングに備えました。

開梱時の資料写真。撮っててよかった。

12月15日14時すぎに、メゾン=アトリエ・フジタのアン・ル=ディベルデル館長ほかの招待者が揃ってZOOMでの作業中継開始。今回も、国際交流担当の徳永さんが、タブレットを取り回し、流れをリードしてくれました。昨日の準備のおかげでスムーズに、パッキングを進めることができました。

初日は、黙々と作業しているうちに、あっという間に時間がたち、アン館長からそろそろオフィスアワーが始まるから今日はこれぐらいにしてもいいかしらとお声がかかり、終了。本当は、その日(15日)に再開館するはずだったメゾン=アトリエ・フジタ。結局開館できないままだったようですが、きっとバタバタされていたのでしょう。

翌日のパッキングは残りわずかで、立体作品中心となりました。藤田がペイントした裁縫箱、着物を縫ってあげた日本人形、台座を作り紅型のケープを被せたマリア像の3点です。撤去時はもちろん作業に集中しているのですが、前々日のコンディションチェック時に、ちょっと感傷的になった瞬間がありました。

日本人形に取り掛かろうとして、向かい合った時のことです。なぜか、とてもキラキラして見えたのです。

目にお星さまが!

「ああ、この子にとっては、初めての里帰りだったんだ。」
「なんか嬉しそう。目がキラキラしてる。」
「立派な勲章つけちゃって。ニコニコして。」

ふと、藤田自身が、レジオンドヌール勲章をつけて帰ってきたのかな、と思ったのでした。

一瞬その記憶がかすめたものの、作業はどんどんすすみ、最後にマリア像を箱に収め、外箱のボルトを電気ドリルでぎゅっと締めて終了。

さて、フランスから来た藤田の染織品、もう帰路についたのかといいますと、実はまだ。

その、ごく一部ですが、秋田県立美美術館の特別展「藤田嗣治 布と対話-筒描・藍染を慈しむ―」(2021年1月16日(土)から3月7日(日)まで)で展示されます。お近くの方は、ぜひお訪ねください。詳細は、秋田県立美術館にお問い合わせください。

展覧会・イベント 秋田県立美術館 – (akita-museum-of-art.jp)

また、コロナで移動ができなくて、見逃しちゃったわ、という方は、「アートスケープ」美術館・アート情報 artscapeのサイト内の「360°ビュー」会場の様子ととともに、経緯やみどころも掲載していただいています。ぜひ、ご覧ください。描かれた染織品や衣装から画業をひも解く──藤田嗣治と彼が愛した布たち:360°ビュー|美術館・アート情報 artscape

図録は、福岡市美術館オンラインショップで販売開始!どうかご利用ください。

懐かしのメゾン=アトリエ・フジタ。次に行けるのはいつだろう…。

さて、クリスマスですね!
特別展示室では「ヒグチユウコ展 CIRCUS」が始まりました(~2月7日まで。オンラインによる事前予約が必要です。)

なんだかんだで、ブログも今年はもう店じまい。美術館は12月27日まで開館しております。年明けは、1月5日(火)から。当館の企画展「ソシエテ・イルフは前進する 福岡の前衛写真と絵画」もこの日から始まります!(~3月21日まで)。

「来年は、鼓舞丑年。」

どうか、みなさま、よいクリスマスとお正月を過ごされますように。
来年もどうかよろしくお願いいたします。

(運営部長・学芸課長 岩永悦子)

教育普及

いつもどおりではないけれど・・・今年の「どこでも美術館」の活動について

みなさんは「どこでも美術館」をご存知ですか?
このブログでも一度「版画ボックス」について紹介していますが、覚えていらっしゃるでしょうか。

その冒頭にもあるとおり、「どこでも美術館」は、美術館のスタッフが館外へ出かけ、オリジナルの美術鑑賞教材(ボックス)を使って、美術鑑賞や創作体験のプログラムを行う活動です。主に特別支援学校や離島の学校、高齢者向けの講座を行う公民館など、美術館に来てもらうことが難しい方々のもとへ出向き、活動しています。

ということで、今年も教育普及係を中心に学芸課のスタッフで公民館や学校へ出かけてきました。今回はその様子を少しだけご報告します。

今年のどこでも美術館は、いつもとは違った活動になりました。そう、新型コロナウイルス感染症です。4月の申し込みを受け付ける段階ですでに緊急事態宣言が発令され、学校も公民館も休校・休館に。なので、今年は活動ができるのだろうかと不安をかかえながらのスタートになりました。

そんな状況だったので、学校からの応募は1件だけ。それでも、公民館からは、昨年同様8件の応募があり、館の方からは「できるかどうかわからないけど、状況が良くなるという期待も込めて応募します」とのありがたい言葉も。その言葉に勇気づけられ、日々の報道にも注目しながら活動開始の時を待つことにしました。

緊急事態宣言も明け、ようやく活動が始まったのは、公民館が再開した7月でした。活動開始を予定していた6月からは1ヶ月遅れてしまいましたが、公民館や学校の方と話し合い、館内でも対策をいろいろ考えて準備を整えました。

手洗い、消毒、検温、マスクの着用はもちろんですが、一番気を使ったのが密にならないこと。どこでも美術館のプログラムでは、とにかく密になることが多いのです。例えば絵画のプログラムでは、みんなで絵の前に集まって、会話をしながら作品鑑賞をしたり、染め・織りもののプログラムでは、グループでアイデアを出し合って、カンガという東アフリカの布の着方を考えてもらったり。創作活動をする時も、机を向かい合わせにして座ってもらうのが基本です。こんなふうに参加者同士でコミュニケーションをとって、話題を共有したり、誰かの言葉に新しい発見をしたりするのも活動の楽しい部分であり、大事な要素のひとつなんです。今年は参加人数もいつもの半分に限定し、お互い距離をとりながらそれぞれで活動してもらうという少し寂しい形になってしまい、もどかしく感じる時もありました。それでもそんな心配をよそに、参加者のみなさんは、普段なかなかできない体験を純粋に楽しんでくださったようです。

いつもはこんな感じで集まって鑑賞します

今年行ったのは、絵画、染め・織りもの、油彩画の技法のプログラムでした。絵画のプログラムでは、あまり近くで絵をじっくり見ることができず、手元のプリントを見ながらの鑑賞となってしまいましたが、みなさん絵を見て気づいたことや想像したことを活発に発言してくれましたし、学芸員の話に熱心に耳を傾け、いろいろな質問も飛び出しました。染め・織りもののプログラムでは、初めて見るカンガにみなさん興味津々で、それを身にまとっていろいろな着方を試すのも、新鮮な体験だったようです。油彩画や日本画の創作活動も初めて使う絵の具や道具を使って、慣れないながらもそれぞれの表現を楽しんでくれました。

今年は離れたところから

いつものように、みんなでわいわいとというわけにはいきませんでしたが、「楽しかった」、「はじめての体験で面白かった」「美術が身近に感じられた」そして「コロナで沈んでいた気持ちが明るくなった」などと言ってくださったことに、改めて今年も活動ができたことにほっとし、こういう時だからこそ活動することの大切さをより感じることができました。そしてみなさんのコロナでたまったストレスを少しでも解消できていればいいなと思った今年の活動でした。

グループでとはいきませんでしたが、カンガの着方を考えて披露してもらいました

当初予定の日程から延期を余儀なくされた公民館もありましたが、結果的には無事に全ての館・学校で実施することができて本当によかったと思います。そして、「次回もまたお願いします」と言っていただいた公民館や学校の方々のうれしい言葉にとても励まされました。まだまだこの不安な状況は続きそうですが、またもとのように、密を気にせず活動ができる日を心待ちにして、来年の準備をしたいと思います。

(教育普及係 中原千代子)

教育普及

大掃除したら出てきたワークシート

皆さま、師走ですね。師走と言えば大掃除です。今年はなかなか難しい年でしたが、そんな困難さも払ってしまおうと、私たち教育普及係も、これまで引っ越ししてきたままになってきた資料やら、この1年でいらなくなってしまったものなどちょっと整理しようということなりました。資料室の奥やキャビネットの中を出し、いるものいらないものと分類していると・・・なんと、出てきました!1991年からの「夏休みこども美術館」のワークシートが!夏休みこども美術館は1990年から始まっているのですが、その頃は、教育専門の学芸員がおらず、さまざまな専門の学芸員たちが持ち回りで担当していたそうです。90年代の最初のころはまだ常設展示のリーフレットを転用してワークシートにしており、デザインもちょっぴりそっけないものですが、解説あり、クイズありと、それぞれ担当した学芸員が試行錯誤しながらワークシートを作っているようすが垣間見られます。

常設展示のリーフレットを転用した「夏休みこども美術館」のワークシート

1990年代半ばからは、ワークシートも豪華になり、カラー化。デザインも凝ったものになり、ちょっとしたお土産のような感覚のものに。正直、今のワークシートより、だんぜん紙も印刷もいいです・・・。だんだんと「夏休みこども美術館」に、学芸員たちが力を入れだしたことがわかります。それにしても、判型も内容も雰囲気も年ごとに違っていて、担当者の個性が爆発!していますね。

担当者の個性が爆発?なワークシートたち

そして、90年代末から教育専門学芸員が「夏休みこども美術館」を担当することになり、1999年から2007年まで「美術館蔵おじいさん」が登場して作品案内をするワークシートになりました。

「美術館蔵おじいさん」が作品紹介をするワークシート

実は、私、このワークシートを2007年まで担当しておりました。ついつい、ページをめくっては、まだまだ内容が練れてないなぁとか、この文章意外にいいな、など思ったり、あの時に一緒にワークショップをやった学生ボランティアさんはどうしているだろう?などと思い出したり・・・おっと、いけない!これでは大掃除がすすまない!
しかし、昔、「夏休みこども美術館」に来ていたこどもも、今はもしかしたら親として「夏休みこども美術館」に来ているのかもなぁ、など30年分のワークシートを見て感慨深く思いました。たまには大掃除もいいものです。

2000年代後半からまた判型がいろいろに。2012年にはワークシートではなく、記録集を作成しています

リニューアル直前からリニューアル後のワークシート

(主任学芸主事 鬼本佳代子)

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