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福岡市美術館ブログ

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カテゴリー:コレクション展 近現代美術

コレクション展 近現代美術

「コレクションハイライト」がかわりました!

 2階の近現代美術室は、6月12日から21日まで展示替作業のため閉室していましたが、22日(木)より新しい展示が始まっています!
 今回のブログでは、私が担当しました、近現代美術室Aの前半とCでおこなっている「コレクションハイライト」についてご紹介いたします。

 まず、近現代美術室Aの前半は、「コレクションハイライト① 福岡市美術館のスターたち」です。福岡市美術館の近現代美術の所蔵作品のなかから、選りすぐりの作品、コラン、シャガール、ミロ、デルヴォー、ダリ、ウォーホル、バスキア、草間彌生の9作家10点を展示しています。まずは名作ぞろいの濃密な空間を味わっていただけたらと思います。入った瞬間から、作品がもつパワーに圧倒されるはずです。

*「コレクションハイライト① 福岡市美術館のスターたち」(近現代美術室A)

 近現代美術室Cは、「コレクションハイライト② 美術散歩にでかけよう」です。
 難しいととらえられがちな近現代美術ですが、気軽な気持ちで向き合ってもらえたらと思い、企画したものです。所蔵作品を、テーマごとに4つの場所(「現実と夢の森」、「物質と感覚の海」、「色とかたちの宇宙」、「歴史と記憶の都市―未来へ」)にみたてて展示しています。作品は、ゆるやかに時代順に並んでいますので、20世紀以降の美術の流れをたどることもできます。コーナーごとに雰囲気が全く異なる空間となっており、感覚的に楽しめる展示となっていますので、ぜひぜひ体感していただければと思います。

作品リスト

*「コレクションハイライト② 美術散歩にでかけよう」(近現代美術室C)

1 現実と夢の森

2 物質と感覚の海

3 色とかたちの宇宙

4 歴史と記憶の都市-未来へ

 さて、ブログですので、担当者の生の話をお伝えしておきます。
 この「コレクションハイライト」は、その名のとおり、美術館を代表する作品を一堂に集めて展示する、という趣旨でおこなっています。毎年5-6月頃に内容を一新し、約1年間ご覧いただくことになります。
 通常コレクション展というと、担当学芸員は、自館のよく見知った作品から選んでいくわけですが、私は、福岡市美術館に異動して1年と少し。企画展や新しい事業を担当していたため、所蔵品とゆっくり向き合う時間があまりとれていませんでした。そんな状態で、この責任重大な「コレクションハイライト」を担当することになり、かなりのプレッシャーを感じました。
 当館の近現代美術の所蔵品は1万2千点。その概要を把握するだけでも大変な仕事です。そこからテーマを設定し、展示プランを作りこんでいかないといけません。まずは、データベースとにらめっこしながら、気になる作品に印をつけるところからはじめ、作品の画像を確認したり、作家について調べたりしながら、候補作品をしぼっていきました。
 ある程度作品がしぼれてきたら、展示室の図面に画像を落とし込んでいきます。この作品とこの作品をならべたらおもしろそう、といった感覚的なことを起点に、歴史的な流れをふまえて、肉付けをしていきました。ああでもないこうでもないと、作業をくりかえすことで、データベースの作品たちが、自分の頭の中にしっかりと入っていくようになり、新たなアイディアがうまれていきます。
 一方で、収蔵庫で作品を確認すると、想像以上に作品が大きく(サイズは事前に確認しているのですが)、うまく壁におさまらないのではないかと不安になることも。実際に展示室に作品を並べた後に、しっくりこなくて、展示順を変更した箇所もありました。

 さて、そのできあがりですが、当初の不安とは裏腹に、なかなかいい展示になったのではないかと自負しています(個々の作品がよいので、悪くなりようがないともいえますが)。ぜひ足を運んでいただき、美術散歩を楽しんでいただければと思います!

(近現代美術係長 山木裕子)

 

コレクション展 近現代美術

「海」をわたる-着任のご挨拶

 この春から学芸課近現代美術係の一員となった山田です。東北と北陸の間あたりで生まれ育ち、関東、関西と移り住んだ後、何かの縁に導かれるように関門「海」峡を渡り、ここ福岡にまいりました。
 はじめまして。以後、どうぞよろしくお願いします。
 今回、初めてのブログ投稿ということで、移住にあたっての心構えを書かせていただきました。まとまりのない文章で恐縮ですが、よろしければ最後までお付き合いくださいませ。

「異邦人」として
 以前、関東から関西に移り住んだときの印象を「言葉が通じる『異国』に来た」と表現した記憶があります。これは司馬遼太郎の小説『峠』(昨年、映画化されました)のある場面を意識した言葉です。主人公の越後長岡藩士・河合継之助が、新潟から京都に赴いたとき、「他国」である京都の風景や文化の違いを目の当たりにし、「他国者」の自分と「京者」とを「異邦人の関係にある」と感じた、という場面です。
 もちろん、河合継之助が生きた幕末の日本と、今の日本は大きく異なります。1日あれば日本国内のどこにでも行けますし、日本中どこでも、同じ食べ物、同じ服装、同じ風景に出会えます。国内で「異邦人」として暮らすことなどもう不可能に近いのかもしれません。(実際のところ、私自身も既に福岡生活に慣れてしまってます。これはもしかしたら、毎日のように通う当館が、慣れ親しんだ地元の美術館と同じ前川建築だからかもしれませんが・・・)。
 とは言うものの、グローバル化の名のもとに均質化しつつある現代社会でこそ、あえて各地の文化的差異を意識することが重要であると常々感じております。だからこそ「異邦人」として福岡のユニークな文化と歴史に触れてみても良いのではないか。多様性に満ちた福岡には異国要素溢れるものが沢山あります。ふと目の前に現れる街中のパブリック・アート、大濠公園内で出会う何だかよくわからない歴史の断片、スーパーや飲食店で目にする初めての食材、お菓子、街中を歩く人々の装いと表情の豊かさ。そういったものに、これからもどんどん触れていけることを、今から楽しみにしています。

近現代美術係からのご案内
 稚拙な感想はここまでにして、最後に一つご案内がございます。
 私が所属する近現代美術係では、6月12日から6月21日まで近現代美術のコレクション展示室を全て閉室し、年に一度の「大展示替え」を行います!
 新しい展示は6月22日(木)にオープン。
 どうぞお楽しみに!!
 ちなみに、今期の私の「推し」作品はポール・デルヴォーの《夜の通り (散歩する女たちと学者)》。たまには現実世界を離れて、ただただ、不可解な「超」現実世界に浸ってみてはいかがでしょうか。静寂の漂う夢のような世界が、日常の喧騒を忘れさせてくれるはず。
 他にも興味深い作品が数多く展示されます!
 ぜひ、それぞれの「推し」作品を見つけてみてください。

(学芸員 近現代美術担当 山田隆行)
 

★★コレクションハイライト★★
2023年6月22日(木)〜通年展示 | 近現代美術室C

★★山好きな画家たち★★
2023年6月22日(木)〜8月27日(日) | 近現代美術室A

★★時代で見る美術 1940年代★★
2023年6月22日(木)〜9月10日(日) | 近現代美術室B

 

コレクション展 近現代美術

福岡アートアワード受賞者、鎌田友介さんとチョン・ユギョンさんのスピーチ

 現在、近現代美術室Bでは、「第1回福岡アートアワード受賞作品展」が開催中です。
「福岡アートアワード」とは、福岡市が昨年度からおこなっている「Fukuoka Art Next」の一環として、新たに創設した事業で、この3月に初めての受賞者・受賞作品が決定しました。本展は受賞作品の初のお披露目の場となります! 
 82名の応募のなかから選ばれた「第1回福岡アートアワード」の受賞者と受賞作品は以下のとおりとなります。

 ◇市長賞:鎌田友介
    《Japanese houses (Taiwan/Brazil/Korea/U.S./Japan)》
                     (2021年/平面作品)

日本占領下の韓国や台湾で作られた日本家屋や、戦時中にアメリカで焼夷弾実験のために作られた日本村などの調査をもとに制作された作品です。調査で撮影した写真や図面、材木等が「床の間」を模した構造の中にずれを伴いながら接ぎ合わされ、歴史における日本家屋が持つ多様な意味を示しています。

 

 ◇優秀賞:チョン・ユギョン
     《Let’s all go to the celebration square of victory!》
                                                                   (2018年/絵画作品)

 印刷物のドットのような円い形によって構成された絵画作品です。よく見ると、大きな黒いドットの部分は、左腕を挙げた人の形をしています。これは、朝鮮民主主義人民共和国のプロパガンダポスターの構図を用いています。明確な線はないのにその形を見てしまう認識のありようは、 在日コリアン3世として日本で生まれ育った作家にとっての祖国という存在や祖国との距離感が重ね合わされています。

 

 ◇優秀賞:石原海《重力の光》
                                   (2021年/映像インスタレーション作品)

 福岡県北九州市にある東八幡キリスト教会とNPO法人「抱撲」が運営する生活困窮者支援施設を舞台とした作品です。元ホームレスや元ヤクザ、NPOのスタッフなど、教会に出入りする9名と試みたキリスト受難劇の演劇のもようと、演者らへのインタビューによる映像作品には、それぞれの人生や祈り、様々な重荷からの解放が表されています。

 そのほか、受賞作家のコメント、事業の概要、選考委員の講評など、下記のリーフレットにまとまっていますので、こちらを参照ください。
https://www.fukuoka-art-museum.jp/uploads/Leaflet_The_1st_Fukuoka_Art_Award_Exhibition.pdf

鎌田友介さん(左)とチョン・ユギョンさん(右)の作品の展示風景

 3月29日(水)に開催された授賞式では、鎌田友介さん、チョン・ユギョンさんのお二人に出席していただき、高島市長がプレゼンターとして登壇しました(残念ながら石原海さんは海外滞在中のため、出席が叶いませんでした)。
 お二人にはご挨拶をしていただいたのですが、そのスピーチは、作品を通して社会と向き合おうとする真摯な姿勢があらわれた、大変すばらしいものでした。ぜひ多くの方々に知っていただきたいと思い、お二人よりご許可いただき、ここに全文を紹介させていただきます。

 ◎鎌田友介さんスピーチ全文

みなさま本日はお集まりいただきありがとうございます。
この度の福岡アートアワードの受賞を大変うれしく思っております。
この受賞は、私個人の取り組みの結果ではなく、作品制作に関わってくれた多くの方々や私の作品に興味をもってくれた美術関係者の皆様がつないでくれたバトンが、こういった場所に私を押し出してくれたのだと私は思っています。
そしてこの機会に、どのような状況でもかすかな希望であろうとあきらめないということをその皆さんから私は学びました。この場を借りてあらためてお礼を申し上げます。
今回の受賞作品は、私が長年おこなってきた海外に存在する日本家屋の調査をもとに制作してきたものです。
アジアにおける日本の植民地政策や南米の移民政策、また第2次世界大戦の歴史の中でさまざまな日本家屋が異なる政治的な理由を背景に建設され、その一部は未だに世界各地に現存しています。
これらの日本家屋は、物理的に日本国外に建設されたが故に、日本に住んでいる私たちは、その歴史を日常の風景の中に感じ取ることができません。これらのみえないもの、またはないとされてきたものを、どのように美術作品として可視化させるか、これが私の作品の重要なテーマになっています。
昨今の日本の現代美術界では、繊細な歴史をあつかった美術作品に対して、公権力からの検閲や介入が最近特に話題になっていると思います。しかし歴史を向きあわないと新しい文化は創出できないと私は考えております。
そういった意味において、この作品が福岡市美術館に収蔵されることを大変うれしく思うと同時に、次の世代にバトンが届くことを切に願っております。
この度はありがとうございました。

 

 ◎チョン・ユギョンさんスピーチ全文

本日は朝早くからお集まり頂き、ありがとうございます。
私は日本で在日コリアンとして生まれ育ちました。
皆さんご存知のように日本では外国籍の人には選挙権が認められていません。
なので、4月9日に行われる統一地方選挙にも投票する権利が私にはありません。
そんな私にとってアートは社会に対して発言していく一つの手段です。
昔からアーティストは炭鉱のカナリアと例えられて来ましたが、
アーティストはこの社会を共に生きる一人の人間でもあります。
今回の収蔵が一人の人間の表現に耳を傾け、社会の豊かさを学んでいく動きに
寄与できたら幸いですし、美術館がそのような場になることを望みます。
そして、アートがただの観光資源や、為政者の自己顕示欲を満たすためだけの
飾りに成り下がらないことを心より願っています。
ご静聴ありがとうございました。

 

 お二人のスピーチがあったことで、授賞式に取材でこられたメディアのかたや業務でこられた外部スタッフのかたからも、「今日は参加してよかったです」という言葉をかけられました。

 この福岡アートアワードについては、昨年初年度ということで、大変な1年ではありましたが、無事受賞者・受賞作品が決定し、作品を収蔵できたこと、そしてその作品を多くの人に知っていただく場を設けられたことは、大きな成果であったと思います。
 受賞者のみなさま、選考委員のみなさま、また応募していただいたすべてのアーティストのみなさま、また関わっていただいたすべての方々に感謝申し上げます。
 一方で、初年度ということで、反省点や改善すべき点などもたくさんありました。反省点をしっかりとおさえ、可能な部分は改善していきながら、「福岡アートアワード」を、アーティスト、そして福岡市民にとって、誇りとなるような賞に育てていければと思っています。
 最後に、「第1回福岡アートアワード受賞作品展」は、受賞作家のみなさまのご厚意により、撮影、SNSへのアップが可能となっております。6月11日(日)までの開催です。ぜひご来場ください!

(近現代美術係長 山木裕子)

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