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福岡市美術館ブログ

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ミュージアムショップ

今年こそ、
こぶうしくんに王冠と錫(しゃく)を‼

 美術館HPを遡って調べてみたら、約一年半ぶりのブログでした。学芸課の皆様や総館長に混ざって書かせて頂くのは、少し緊張をしますが福岡市美術館の公式マスコット《こぶうしくん》の魅力を皆様に知って頂けるように頑張ります…。

 こぶうしくんの事をご存知ではない方々のために、こぶうしくんの写真とプロフィールをご紹介させて頂きます。

・名前 こぶうしくん
・誕生日 3月21日
・年齢 4,000歳(推定)
・職業 みんなに幸せを届けること
・趣味 収蔵品の琵琶の演奏をこっそり聴くこと
・好きな曲 幸せの予感
・宝物 琵琶 銘「青山」
・コブウシの土偶。泳ぐのは苦手。こぶの中身は秘密。

 こぶうしくんのモデルは、背中に特徴的なコブがあるコブウシの土偶です。インダス文明(紀元前2600年~1900年)の遺跡からたくさん発掘されるそうです。コブウシのコブは筋肉や脂肪で出来ているらしいのですが、こぶうしくんのこぶの中身は秘密です。みんなに届ける幸せがたくさん詰まっていると良いなと思っています。

 そして、なんとミュージアムショップには、本物のコブウシ土偶が飾ってあります。自称こぶうし普及係長でもある学芸課長が私物のコブウシ土偶をお貸ししてくれました。凄いです。約4,000年前の本物の土偶です。ショップに約4,000年前に作られた土偶が飾ってあることが私の密かな自慢です。
 お客様から『こぶうしくんって何ですか?』って質問されたときに、実物を見せながら説明を出来るので、いつも活躍してくれます。お店が暇なときに「この土偶、約4,000年前に生きていた人が作ったんだ。ここ、指の跡が残っている…。」とか考えながら眺めていると、だんだんと愛おしくなってきます。

※コブウシ土偶とこぶうしくん

※お尻の部分にある指の跡がチャームポイントです。

 ミュージアムショップで販売している、こぶうしくんグッズもコブウシ土偶の愛らしい魅力をお伝えできるように、学芸課の皆様と試行錯誤しながら作成しました。ぬいぐるみの個体差で、左右の目の位置や首の角度などが微妙に違っているので、ミュージアムショップにお越しの際には、一頭ずつ手に取ってお気に入りのこぶうしくんを見つけて下さい。

 こぶうしくんは、現在開催されているミュージアムのキャラクター日本一を決める「ミュージアムキャラクターアワード2025」に参加中です。昨年は残念ながら惜しくも2位でした。今年こそ優勝して、こぶうしくんに『王冠』と『錫(しゃく)』を渡せるように、皆様のご協力をお願いします。こちらは一人一票を毎日投票できます。
まん丸おめめで、いつも何処を見ているのかイマイチつかめない、とぼけた感じが魅力のこぶうしくんを宜しくお願い致します。

こぶうしくん(福岡市美術館) | ミュージアムキャラクターアワード2025 | アイエム[インターネットミュージアム]

福岡市美術館ミュージアムショップ 井上大輔(こぶうしくんの中の人)

学芸課長ブログ

ゴキブリとコオロギ

4年前の夏、残業して深夜に帰宅した時のお話です。怪談ではないのでご安心を。

自宅マンションのエントランスを入ると、エレベータの前に高校生くらいの女子が立っていました。たまに見かける人なので同じマンションに住んでいるのでしょう。

「こんばんは」と挨拶しても返事はなく、なんだかソワソワした様子。エレベータの扉が開いても、彼女は乗ろうとしません。あ、そうか、このくたびれたオッサンが怖いんだな。

「お先にどうぞ。行って下さい」

そう言ってあげるしかありませんでした。
すると「あ、いや、あの…」と手をパタパタ横に振りながら2秒ほどの間をおいて、彼女はこう言いました。 

 

「ゴキブリ、倒せますか?」

 

敬遠球を打たれてピッチャー返しをくらったような気分でした。
聞くと、さっき帰宅したら玄関扉の前にでっかいゴキブリがいたので引き返してきた。家族に連絡したがみんな怖がって扉を開けられない。困っていたところにオジサンが現れたので助けを求めた、と。

 

「よし。うちから殺虫剤とってくるけん、ちょっと待っとき。」

 

かくして私は右手にゴキジェット、左手にチリ紙をもって決闘の場へ。
玄関の前で佐々木小次郎のように泰然と待ち構えるは、なるほど対峙した瞬間に引き返したくなるほど巨大なクロゴキブリ。うす暗い通路の照明をうけて艶めかしいほどの光沢を放つその姿に一瞬ひるみましたが、勝負は一撃で決しました。息絶えたコジローはチリ紙に包んで持ち帰ってあげました。後日、彼女は親御さんと一緒に菓子折をもってお礼に来てくれました。

 

さて私は、善いことをしたのでしょうか、悪いことをしたのでしょうか。

 

困っている人を助けて、菓子折をいただくほど感謝されたということでは善い行いに違いないけれども、そのために、ただそこに居ただけの虫を殺すことは、悪い行いに他ならないのではないか。だってシッシッと追い払えば済んだ話だもの。いやまて、でも、うちで同じことが起きたらやはりゴキジェット使うだろうな…

そもそも私は、虫好きを自任しています。エンマコオロギはその鳴き声が好きで、季節になると好んで捕まえて飼育して愛でたりするのに、それと外見や雰囲気のよく似たゴキブリには、視界に入ってきたとたんに拒絶反応を示します。

ついでにいうと息子が世話しているムーアカベヤモリは生きた虫しか食べず、困ったことにコオロギが好物なのです。だからAmazonで餌用コオロギを定期購入して、ヤモリの食料庫ということで飼育しています。成長した餌用コオロギが美しい声で鳴き出すと、とても複雑な心持ちになります。

こういう行為の善悪を問いだすと、キリがありません。

同じような種であっても、自分に何らかの不都合をもたらす生き物と、自分に一定の幸福をもたらす生き物に接するとき、誰しもこのような自問をすることがあるはずです。

コジローを倒して感謝された私は、この問題を思い出すことが多くなりました。

 

ほんとうにむずかしい問題というのはね、「答えが出せない問題」じゃなくて、「答えがたくさんあって正解がない問題、あるいは、どれもが正解であるような問題」のことなんだ。(内田樹『街場の現代思想』文春文庫、2008年)

 

まさにその通りです。

善でも悪でもないと同時に、善でも悪でもあるのだ、と片づけることは出来ます。

大切なのは、まず様々な「答え」の存在を知ることはもちろん、自分なりに最も適切と思う「正解」を導き出すことよりも、そのためにあれこれ思いを巡らし、考え続けるという行為それ自体にあると思います。善と悪、是と非、美と醜、真と偽など、事象や物事への価値づけにつながるそれぞれの対立概念の間にある混沌に心を寄せるほどに、誰かが決めた、あるいは自分なりに導き出した「正解」を、いろんな角度から捉えることができるようになるのではないでしょうか。

私自身は、どれだけ思い考え続けたところで、台所をコソコソと這い回るゴキブリを看過できるような心境に至ることは当面ないと思っていますが、しかしゴキジェットの噴射レバーを引く瞬間までに胸中に去来する想い、指にかかる重みをかみしめるようにはなるでしょう。餌用コオロギをピンセットでつかまえてヤモリのケージに運ぶときも然り。いずれヤモリが寿命を迎え、次の飼育の是非を検討するときは、息子と色んなことを話し合うことでしょう。

「多様性」を受け入れることと「包摂性」を高めることの重要性が叫ばれて久しく、さらに重要視されている昨今です。誰の耳にも分かりやすく、大切であることが自明の理念であるのに、実践することがいかに難しいことか。私はその入口の扉を、恥ずかしながらアラフィフになってようやく見つけたような気がしています。

 

美術館のブログなのに、美術(アート)のことは全く言及しませんでした。

美術(アート)の存在価値というのは、この「多様性」、「包摂性」に深く関与するものだと思っていて、以前もブログで少し触れました(「買い物あるある」を「美術鑑賞あるある」に)。そのあたりを少し深めて、季節の体験談をダシに書きなぐってみようと思ったのですが、虫ネタを選んだら思わず長くなってしまいましたので、稿を改めます。興味をもって下さった方は、どうか気長にお待ちください。

 

(学芸課長 後藤 恒)

教育普及

夏休みこども美術館2025
「みる見る きこえる 音楽会」開催中!

 みなさんこんにちは。照りつける日差しと蝉の大合唱。夏真っ盛りとなりました。夏と言えば、福岡市美術館では1990年から夏休みこども美術館を開催しています。
 今年の夏休みこども美術館は、「みる見る きこえる 音楽会」というタイトルで「音楽」がテーマとなっています。当館コレクションの古美術と近現代美術作品を織り交ぜ、3章に分けて展示をしています。音は目には見えませんが、美術作品では様々な色や形で音楽が表されています。作品を見る方には、「音楽」をめぐる様々な表現の面白さとともに、作品からどのような音楽がきこえるのか想像することを楽しんでほしいと思っています。このブログでは、企画担当者自身が想像した音楽を交えながら、展示から作品を3点ご紹介したいと思います。

図1 板谷房《動物のための宴》1969年、油彩
図2 演奏する動物(《動物のための宴》から一部 抜粋)

 まず、第1章「奏でる楽器」から《動物のための宴》です。猿や犬、キツネなど様々な動物たちがテーブルを囲んで宴を開いています。画面の左端のほうで演奏しているのは、ギターのような弦楽器を持った猫とラッパを吹く大きなネズミ。その2匹の前には、寝転がった猫がラッパを口にあてていいます。さて、彼らはどんな演奏をしているのでしょうか。私は最初、場を盛り上げるようなにぎやかな明るいメキシコ風の曲を演奏しているようだと思っていました。しかし、何度も見ていくうちに猫の怒ったような表情や床の色が黒いことから、緊張感のある張り詰めた曲の演奏もかもしれないと思うようになったのです。ちなみに、私の息子は「ドアから出ていこうとする動物がいるから閉店の曲を流し始めたのでないか。」と言っていました。全く頭になかった「閉店の曲」ですが、それはそれでありですね。

図3 小早川清《ダンサー》1932年、木版

次は、第2章「舞・ダンス」から《ダンサー》です。なんという体のそり具合!私が同じように踊ると、確実に腰を痛めます。作者の小早川清は、制作のために人物にわざわざポーズをとらせることはせず、人物の動きを観察して魅力的な瞬間をとらえて作品にしたそうです。さて、この女性はどんな曲に合わせて踊っていたのでしょうか。私は、小さな丸や大きな丸のワンピースの柄からリズムを感じ、
「タ・タ・ダン、タ・タ・ダン」とアクセントのついた速いビートのエレクトリックな曲を想像しました。(昭和7年制作なので電子機器を使う楽器が普及するずっと前ですが…。)私の母は、「ノリノリのダンスミュージックの最後に大きなシンバルが鳴って体を反らした。」と言っていました。そういわれると、曲のフィナーレも感じられますね。

図4 《人面文壺》 ガンダーラ墓葬文化、紀元前1500年~前200年、土器、
森田コレクション

 最後は、第3章の「音楽の色・形」から《人面文壺》です。展示室では、多くの人がこの作品の前で足を止めています。丸いフォルムに、小さな穴の目と口、そして板状の高い鼻。今のパキスタンあたりで約3500年~2200年前に作られ、死んだ人の骨を入れための壺だったのではないかと考えられています。私は、この作品の小さな穴で表された口が歌っているように見えるのです。亡くなった方を包むような優しい声で、「ホ~ホ~ホ~」と歌詞のない音程だけの歌がきこえてきます。ガイドボランティアさんの中には、「なんだか口笛を吹いているみたいだね。」とおっしゃった方もいました。どんな意図でこのような顔がつけられたのか分かっていないのですが、そのミステリアスなところも想像する音楽の幅を広げてくれます。

 ここで紹介した3つの作品を見て、読者の皆さんはどのような音楽を想像しますか。おそらく、見る人によってそれぞれ異なる音楽を連想するのではないでしょうか。一人ひとり違う想像の仕方、感じ方があっていいのです。だからこそ、一人で時間をかけて音楽を想像してもいいですし、一緒に来た方と「どう思う?私はね、、、」と話してもいいと思います。じっくり見ることや他の方の意見によって作品の見方を広げて楽しんでください。子どもたちに向けた展覧会ではありますが、大人の方も楽しめる内容と思っています。ぜひ「夏休みこども美術館」へ来てみてくださいね。
 また、同展示室内には、音楽にまつわる図書をお読みいただける「夏休みこどもとしょかん」や、鑑賞をより楽しめるワークシートを置いたコーナーがありますので、どうぞご利用ください。

(教育普及専門員 冨坂綾子)

夏休みこども美術館2025 みる見る きこえる 音楽会
会期:2025年6月25日(水)〜8月24日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時30分
7月~8月の金・土曜日は午前9時30分~午後8時
※入館は閉館の30分前まで。
休館日:月曜日
※7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)は開館し、7月22日(火)、8月12日(火)は休館
会場:1階 古美術企画展示室
夏休みこども美術館2025「みる見る きこえる 音楽会」チラシ

福岡市美術館の季刊誌『エスプラナード』220号にも記事を掲載しているのでご覧ください。

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