開館時間9:30~17:30(入館は17:00まで)

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福岡市美術館ブログ

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アーカイブ:2020年 7月

コレクション展 近現代美術

夏休みこども美術館2020こどもギャラリー「みるみるこわい絵の世界」開催中

みなさま、こんにちは。
毎年こどもたちの夏休みに合わせて開催している『夏休みこども美術館』、1990年から始まり今年でなんと30周年を迎えます。今年は「みるみるこわい絵の世界」と題しコレクション展示室近現代美術室Aにて開催しています。夏といえば怪談やこわいおばけがつきものですが、美術館の「こわい」は一味違います。みればみるほどこわい絵やこわいお話がかかれた絵、はらはら・どきどきする絵などいろいろなこわい絵の世界へみなさんをいざないます。

さて、この展覧会は「こわい」がテーマなのですが、みなさんが最近「こわい」と思うことはなんですか?私も幼いころはテレビで見る幽霊や怪談がこわかったです。今でもあまり得意ではないですが、今はそれよりも「こわい」ものがあります。例えば今だったら、〆切がこわいです(学芸員の方には結構多いかもしれません)。放っておいて後から手を付けようとすると時間がなくてとても焦ります。あとは、今までにやったことがないことも、こわくてなかなかチャレンジできません。でも、前に進むためにはこの「こわい」にちゃんと向き合うことが大切だと、私自身の経験の中で思いました。今回の展覧会では、こどもたちが「こわい」、「よくわからない」に向き合う機会にしてほしいと思い、あえて「こわい」をテーマに選びました。

展示会場の照明は、「こわい」雰囲気が出ると思い、普段より少し暗めに設定しています。

展覧会では、4つの章にわけて作品を紹介しています。章ごとに、作品をみるときに注目してほしいことを書いた、写真のようなパネルをおいています。作品を見る前に、ぜひパネルを読んでみてください。

各章はこのようになっています。

◆みればみるほどこわい
 ぶきみでおそろしいものがかかれている。よーくみてみよう。何がみえたかな?
◆はなしがこわい
 ここにかざってある絵には物語があるよ。どんなおはなしなんだろう?
◆はらはらしてこわい
 あぶない!なにをしているんだろう?登場人物たちのセリフを考えてみよう。
◆こわいってなんだろう?
 この絵、くらくもみえるけど、あかるくもみえるな。この絵はこわい?こわくない?どうしてそう思ったんだろう?

展示している作品は全部で13点あります。今日はそのなかから2点だけご紹介します。
1つめはこちらの作品です。

吉村忠夫《地獄変》1950

こちらは ◆はなしがこわい の章に展示している1点です。いったいどんなはなしが描かれているのでしょう?

闇の中には鳥の影、燃え盛る牛車のなかにはなんと女性が!?その周りの人たちは何をしているのでしょうか?登場人物をみてみましょう。

火の粉が上がる牛車の中にいるのは女性。縛られているみたいです。これだと自力で脱出はできないかも。

いちばん右の男性は松明を持っています。この人が火をつけたのでしょうか?

真ん中にいる男性は手を伸ばしています。炎の中にいる女性を助けようとしているのでしょうか?

いちばん左にいる男性は慌てることもなく平然と座って、燃え盛る炎をじっとみつめています。

こちらは吉村忠夫が描いた《地獄変》です。小説家芥川龍之介の同名小説「地獄変」の一場面を描いた作品です。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この小説のあらすじは、絵師が地獄変(地獄を描いた絵)を依頼されて、燃え盛る女の姿が描きたいが自分は見たものしか描けないから、せめて牛車が燃える姿を見せて欲しいと依頼主に頼みます。しかし意地の悪い依頼主が用意した牛車には、絵師の娘が縛られて入れられていました。最初は戸惑い助けようとする絵師も、牛車に火がつけられると炎の中で苦しむ娘の姿をただ見つめるばかり。その後、絵師は立派な地獄変を完成させ自殺するというものです。

この作品を見ていると、自分の美や理想を追求するためにどこまで許されるのか、自分は大丈夫だろうか、などいろいろ考えさせられます。みなさんはいかがでしょうか?もし物語を知らなくても、描かれた情景や人物たちから、想像して絵から読み取ることを楽しんでみてください。

もうひとつの作品はこちらです。
こちらは ◆はらはらしてこわい の章で紹介している作品です。
さっそく見てみましょう。

アンリ・マティス《ジャズ サーベルをのみこむ人》1947

紫と青、赤、そして白と黒、鮮やかな色が使われています。
いったいなにをしてるのでしょう?

以前いらっしゃったお客さまはおふだを飲み込んでいる姿だと言われていました。たしかに薄っぺらい紙を口に入れているようにもみえます。しかし、タイトルは《サーベルをのみこむ人》です。どうやらサーベルを飲み込んでいる人を表しているようです。いろいろ想像が膨らみます。ちなみに私は最初にこの絵をみたとき、口に丸太3本を突っ込まれて目は涙目になっていて拷問されているのかと思いました。

実は、こちらの作品はサーカスから発想を得て描かれています。フランスの画家アンリ・マティスの作品です。サーカス、そう言われると「あらよっ!」という掛け声が聞こえて、あれよあれよと3本のサーベルをのみこんで得意げになっているようにみえます。また「ジャズ」というのは挿絵本の名前で、この作品はその本の中にある挿絵の一枚です。なので、左端には本のページ数の90という文字が入っています。よーくみると、私はなんだか楽しげな作品に見えてきました。みなさまはいかがでしょうか?もしかすると、作品のタイトルよりもっと面白い情景に見えた方もいらっしゃるかもしれません。この作品は、シンプルな造形ですが人によって見え方が違う、私はその違いが楽しい作品だなと思います。ぜひいっしょにいらした方に、「この絵どうみえる?」ってこっそり聞いてみてください。きっと自分が見ている見方とは違う見方が返ってくると思います。

以上ご紹介した2作品のほかにも、会場には美術館ならではの「こわい」作品が展示されています。
また特別なガイドマップもあります!

ガイドマップには作品ごとに絵を見るときのヒントが書かれているので、そちらを見ながらいっしょに来た人、あるいは自分自身と対話しながら、じっくり絵を見てみてください。よく見る前とよく見た後では絵の見え方が変わってくるし、また他の人の見方や意見にも耳を傾けると全然違っておもしろいかもしれません。
今年の夏は、ちょっとこわいけどでも楽しい、そんなアート体験はいかがでしょう。みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

(教育普及係 上野真歩)

企画展

80年前の海辺に思いをはせる

明日は海の日ですね。
海の日だから何がある、というわけでもないですが、ちょっと海に散歩に行きたくなってきます。海のない県で育ってきた身としては、少し歩けば海にたどり着くことって、かなり異常事態なのです。福岡市美術館のある大濠公園から草ヶ江の方までぶらぶらしていると、磯の香りがしてきて、えも言われぬうきうきを覚えます。百道浜へ向かうバスに乗った日には、きらめく水面やさびれたコンテナ(と読解不能な文字)が海の果てへと想像力を刺激します。

福岡市美術館の中で貝殻を発見!

今から80年ほど前に活動していた前衛美術グループ、ソシエテ・イルフにとっても、海は重要なモチーフでした。ソシエテ・イルフは、1930年代に福岡市を拠点に前衛写真や絵画を制作していた7人組です。実は、来年1月に開催する企画展「ソシエテ・イルフは前進する 福岡の前衛写真と絵画」に向けて、彼らの作品と資料についての情報を集めているところなのですが(ご存じの方がいらしたら、ぜひ情報をお寄せください!)、彼らの作品には頻繁に海が登場するのです。

久野久《海のショーウインドウ》1938年

例えばこの作品《海のショーウインドウ》は、彼らが海辺での創作を楽しんでいたことがよくわかる作品です。
アクリル板のようなものを組み合わせ、海岸に絶妙なバランスで作り上げられた構造物。板と板の隙間にできた四角形・三角形のなかには海で拾ったと思われる様々なものが配置されていて、砂からカニの手がぬっと伸びていたり、海藻のようなものがびろーんと垂れ下がったりしています。「ショーウインドウ」のマネキンのように、貝殻や海藻は三角形・四角形の中でポーズをとり、そのポーズが整然とした空間に動きや物語を生みだします。余白が多くすっきりとした印象の写真ですが、8枚の板を崩れないように組み合わせ、貝殻や、カニのはさみを集めてそっと乗せる作者の姿を想像すると、なかなかチャーミングです。
作者の久野久(1903-1946)は結核療養のために12歳で宗像郡津屋崎に転居し、生涯津屋崎を拠点にしていました。療養のため身動きを制限された久野にとって、撮影場所は必然的に身近な場所が多くなり、海岸をたびたび写しました。1939年にはソシエテ・イルフのメンバーを津屋崎に招いています。
やがて貝殻に魅せられ、貝の幾何学的な形態をクローズアップした作品を集中的に撮り始めます。この時代は愛好家向けのカメラ雑誌に、被写体を効果的に写し取るための技術がさかんに紹介されていました。久野にとって、レンズを通して貝殻の造形を精密に記録することは写真家としての使命となっていきます。

久野久《貝殻その5》1941年

浜で拾つた小さい貝の、レンズによつて拡大された像、それは肉眼で見る貝とは丸で違つた感覚を持つた貝となつて、私の前に現れたのであつた。之れは私にとつて大変な発見であつた。小さい生命を宿す此の貝にも、造形の神は想像を絶した美を与へ給ふた。正に想像を許さないその美しさではある。私は此の美しさを究めなければならぬと思つた。写真する私の、世の人々への解答を此の貝によつてこそと考へたのであつた。
(久野久「貝の話」『寫眞文化』1941年8月、アルス)

ソシエテ・イルフのメンバーにとって海がどのような場所だったのかについては、いくつもの読み取り方ができます。まっさらな砂浜と水平線は、「ここではないどこか」の象徴、とも解釈できます。しかしその一方で、福岡を拠点にしていた彼らにとって、海は自分たちの生活と地続きの場所でもあり、何よりも、創作意欲をそそられるモチーフとの出会いの場だったのかもしれません。

(学芸員 近現代美術担当 忠あゆみ)

学芸課長ブログ

晴れました!

今日、福岡市はひさびさに晴れ!というわけで、ひさびさに、昼休みを美術館のカフェで過ごしました。お目当ては、これです。夏になると、いろんなところに、ソフトクリームの大きな立体の看板?が出てきますよね。普通は「ああー」と思いつつ、通り過ぎるわけですが、職場で毎日遭遇するとなると、誘惑に抗しきれない…。

ソフトクリームにもいろんなフレーバーがありますが、美術館のカフェのおすすめは、「木酢(きず)」。木酢は、福岡や佐賀で栽培されている柑橘類で、酢みかんとも呼ばれるそうです。しっかり酸っぱいけど、くせがない。個人的には、木酢とミルクのミックスにして、爽やかな酸味とミルクの濃厚な味を同時に堪能しております。

おかげさまで、美術館にもゆるやかにお客様が戻ってきてくださっています。本当にゆっくり見ていただけますので、とっても居心地がよいと思います。日常的に、まだまだ密をさけて行動しなければなりませんが、街の中心にほど近く、天井高が4mも5mもある、広々とした美術館の空間は、今こそお役に立てると思っています。自慢のコレクションと、夏休みの子供向け企画(~8月30日まで)で、お待ちしております。よければ、ソフトクリームも。

(館長 岩永悦子)

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