開館時間9:30~17:30(入館は17:00まで)

メニューを閉じる
ホーム > ブログ
福岡市美術館ブログ

新着投稿

コレクション展 近現代美術

第4回福岡アートアワード授賞式の記念スピーチ

 2022年から始まった福岡アートアワードについて、ついに昨年度で4回目を迎えました。51名の応募の中から、市長賞は宮本華子さん、優秀賞が谷澤紗和子さん、川辺ナホさん、平野薫さんの4名が選ばれ、偶然にも全員女性という結果となりました。

授賞式の様子(左から順に、谷澤紗和子さん、宮本華子さん、高島市長、川辺ナホさん、平野薫さん)

 第4回福岡アートアワード受賞作品展が3月28日(土)から始まり、初日に開催した授賞式において、受賞者の方々の記念挨拶をいただきました。その挨拶文を作家許諾の上掲載いたします。

宮本華子氏(市長賞)

宮本 華子《在る家の日常》(2024年/インスタレーション)

 本日は、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。本作「在る家の日常」は、個人的に非常に大切な作品です。
相容れない家族という他者と、向き合うために制作を続けてきました。近年、両親よりも長く一緒に暮らした祖父母を家から見送りました。彼らの老いていく姿と、終わりは私にはとても悲しく、同時にとても美しく見えました。「在る家の日常」は、何処にでもある家の出来事を「家」を作ることで形にした作品です。
祖父母は大正 11・12 年生まれでした。 2 人は私にとって安心できる「家」 という存在を与えてくれた存在でした。 祖父母は彼らの時代の出来事をあまり語らない人たちでした。ただ彼らが、今在る日常を大切にして、人を大事にして生きていることは、一緒に暮らす中で感じていました。人は一人では生きていないのだと、誰かの手に助けられながら、生きているのだと 2 人は知っていたんだと思います。
この作品を作るために沢山の人が手を貸してくれました。それらの人たちは、今では大切な友達になりました。私は広い世界を知りません。 直ぐに自分のことで手一杯になります。目の前のことしか見えていないことが多いです。ただ友達になった人には、強く関心を持ちます。その人が過ごす土地にも興味を抱きます。4月から、母校の女子美術大学のプログラムでパリに 1 年間滞在します。大学の恩師である高間夏樹先生に「平和外交」が出来るねと言っていただき勇気が湧きました。祖父母が大切にしていたとを私も大切にしたいと思います。
最後にこの作品が地元九州の美術館・福岡市美術館に収蔵されることが本当に嬉しく、 心から有難く、ほっとしています。この作品は観た通り、家なので大きいです。家は家の中に置くには大き過ぎました。とても困っていました。そんな状況を知って、福岡アートアワードに応募することを助言し、そのために協力してくれた九州の大人たちに心から感謝しています。この作品に関わってくれた全てのみなさま、そしてこれから作品を観て下さるみなさま、本当にありがとうございます。在る家の日常を楽しんでいただけたら幸いです。

谷澤紗和子氏(優秀賞)

谷澤 紗和子《お喋りの効能》(2025年/切紙)

 こんにちは、谷澤紗和子です。
 本日はこのような賞をいただき、ありがとうございます。
 近年、異性愛男性中心的な美術の構造を問い直し、女性や多様なバックグラウンドをもつ芸術家の再評価が世界中で進められています。福岡市美術館は、日本において早い段階から収蔵作品における女性作家の作品調査を行い、その再評価の視点を明確に打ち出してきた先駆的な美術館です。
そのような視点のもとで築かれてきたコレクションに、自作を加えていただくことを大変光栄に思います。
 今回の受賞作の制作発表にあたりお力を貸してくださった皆さま、そして、女性の表現が十分に評価されることのなかった時代から、その歴史を丁寧に掘り起こす研究に携わられてきた方々に、心より感謝申し上げます。
 かつての日本では、権力に迎合することでしか表現の場を持ち得なかった時代がありました。とりわけ女性にとっては、自らの声を社会の中で言葉やかたちにすること自体が難しい歴史がありました。
そうした歴史を思うとき、いま私がこの場に立ち、自分の思いを表現できていることに深い幸せを感じています。
 表現者が自らの声を率直に届けられる世界は、決して当たり前のものではありません。
「表現の自由」が強い力によって脅かされることのない社会が、社会に参加する人々の力によって守られていくことを、切に願っています。
 本日はどうもありがとうございました。

川辺ナホ氏(優秀賞)

川辺 ナホ《樂園を探して(-Et in Arcadia Ego)》(2024年/インスタレーション)

 この度は、第4回福岡アートアワードにおいて《樂園を探して(-Et in Arcadia Ego)》の優秀賞をいただきありがとうございます。以前より、その活動を追い、素晴らしい作品を作られていると感じていた作家の皆様と、一緒にこの賞をいただけたことを、本当に光栄に思っております。
 この作品で福岡の賞をいただけたこと、私はとても特別で嬉しく思います。というのも、本作は2023年度に福岡アジア美術館でのレジデンスの機会に制作したものであり、インスタレーションに使っている石炭とシャモットは、福岡の地理と自然があってこそ形成されたものだからです。そしてまた、制作プロセスそのものが福岡の町で育った1980年代の記憶を、自分自身が改めて辿り直すような体験でもありました。この作品では、福岡の炭鉱の歴史とカーボンナノチューブの研究が、異なる時代でありながらも炭のリサーチを軸としてつながっています。かつて炭鉱はエネルギーとして社会を支え、現在では原子から人工的に生成される新素材が未来の技術として研究されています。かつて、当時、そして今も語られる技術革新がもたらす豊かな生活や輝かしい未来。未来がしばしばユートピアとして語られますが、私たちが生きている現在もまた、先人たち、そしてかつての私たち自身にとっての未来です。ではその中で私たちはどのような今を生きているのか、そしてこの社会や情勢の中でどのように生きていきたいのか。その問いを自分自身にも問いかけています。本作の制作にあたり、本当に多くの方に支えていただきました。たくさんの話を聞かせていただき、またそのコーディネートや制作にはレジデンス事業の皆様、技術協力の皆様、インストールチームの皆様のご尽力がありました。この場を借りて関係者の皆様に感謝申し上げます。
 今日は本当にありがとうございました。

平野薫氏(優秀賞)

平野 薫《空の衣服(untitled -war kimono-)》(2025年/インスタレーション)

こんにちは、平野薫です。この度はこのような賞をいただき、大変嬉しく思っております。
 私は誰かが使ったものに残る気配に着目して制作をしています。これまでは主に布に残る気配に注目して古着などの布を一本ずつほどき、それらを結び、繋ぎ合わせていくという方法で制作してきました。25年の間、その方法を用いて制作をしてきましたが、私は長崎の生まれでありながら、九州での発表の機会がなく、去年初めて福岡のエウレカで発表することができました。九州での初めての展覧会のために制作した作品が、このような賞をいただけたことに大変光栄に思っております。今後は福岡をはじめ、実家の長崎、そして広く九州での活動を視野に入れながら制作を続けていきたいと思っております。
 今回、福岡での展覧会の機会をくださったエウレカの牧野さんをはじめ、この賞にかかわるすべての皆様と、これまで私の活動を支えてくださった方々に心より感謝を述べたいと思います。ありがとうございます。

選考委員のコメントや作家による作品の説明等はリーフレットにも掲載しています。
https://www.fukuoka-art-museum.jp/uploads/list_the4th_Fukuoka_art_award.pdf

 授賞作品はどれも本当に素晴らしいもので、改めて収蔵することの責任を強く感じるものでした。美術館としてしっかり保存・活用していきます。
 受賞者のみなさま、選考委員のみなさま、また応募していただいたすべてのアーティストのみなさま、また関わっていただいたすべての方々に感謝申し上げます。

(学芸員 作品保存管理担当 渡抜由季)

 

 

 

教育普及

福岡市美術館のソーシャルガイド&やさしい日本語で楽しむ作品鑑賞

福岡市美術館のソーシャルガイド

満開の桜はあっという間に終わってしまいましたが、今は新緑の鮮やかな緑に包まれている大濠公園です。個人的には、萌黄色の爽やかな風に吹かれるこの季節の大濠公園がとても好きです。

暖かくなり、外出する機会も増える春。大濠公園を散歩しながら、美術館に初めてご来館くださる方も多いのではないでしょうか。今回ご紹介するのは福岡市美術館の「ソーシャルガイド」です。

ソーシャルガイドは、主に発達障がいのある方とその家族や関係者に安心してご来館いただくために、美術館までの道のりや館内の様子を、写真や分かりやすい言葉で紹介したもので、ソーシャルストーリー、ソーシャルナラティブ等とも呼ばれます。当館でも、来館に不安を感じる方が、美術館に安心して来ていただけるように新しく制作しました。

福岡市美術館のソーシャルガイド(部分)

当館のソーシャルガイドは昨年から制作を始めました。市内の特別支援学校や特別支援学級の先生方に試験的にご利用いただき、いただいたご意見を反映しながら、今年の3月に完成しました。4月からは当館ホームページに掲載しています。

障がいの有無にかかわらず、美術館に初めていらっしゃる方や、利用に不安を感じる方など、どなたでもご利用いただけます。下記のリンクからダウンロードできますので、ぜひご利用ください。

https://www.fukuoka-art-museum.jp/guide/barrierfree/

 

「やさしい日本語」で楽しむ作品鑑賞

また、3月末には「お花見」をテーマに「やさしい日本語ツアー」を開催しました。同ツアーは福岡市に住む日本語を母語としない方を対象に、「やさしい日本語」でコレクション展を鑑賞するというものです。2022年から始め、これまで対象を「親子」に限定していましたが、ありがたいことに「大人が1人で参加したい!」という声が多数寄せられ、今年は「親子」以外にも対象を拡大し、たくさんの方にご参加いただきました。

ツアーでは、古美術と近現代美術のコレクション展から「お花見」をテーマに作品を選び、参加者と一緒に作品について語り合いながら、鑑賞をしました。当然、同じ作品を見ても各人が考えることは違います。しかし、大切なことは、作品を前に自分が思ったことを表現できること、そしてその意見がどれも同じように尊重されること、だと思います。同ツアーでは、私自身と参加者はもちろん、参加者同士も意見を交換しながら作品鑑賞をしました。その過程で、この至極当然なことを当たり前に行えることの大切さを改めて考えました。

「やさしい日本語ツアー」の様子

「やさしい日本語ツアー」の様子

 

また、「やさしい日本語」で当館のコレクション作品を紹介した冊子の第2弾も完成しました。下記URLよりダウンロードすることができます。コレクション展示室内にも配架していますので、ご来館の際にはぜひお手にとってご覧ください。
https://www.fukuoka-art-museum.jp/topics/219624/

「やさしい日本語」の冊子はコレクション展示室内に配架中

(教育普及係 﨑田明香)

 

館長ブログ

着任のごあいさつ

皆さん、はじめまして。

4月より福岡市美術館の館長に着任しました吉武です。

美術館では組織の変更がありまして、これまでの美術館運営業務と昨年まで私が担当していましたアートのまちづくり推進業務(通称:FaN)を美術館長が所管することになりました。

私は学芸員ではないため、美術の重要な部分は優秀な当館の学芸員さんにお任せすることにしまして、私は、これまで担当してきた市民のためのまちづくりやアーティストの成長支援などの経験を生かしながら、更に多くの市民の方などに当館の貴重な所蔵品を見ていただけるような事業を学芸員の方々と進めていきたいと考えています。

ここでは、これまで担当してきた「アートのまちづくり推進事業=Fukuoka Art Next(通称FaN)」について少し触れさせていただきます。

令和4年度からスタートした本事業は、「アートのある暮らし」と「アートスタートアップ」を2本の柱として市民の皆さんが身近にアートに触れる機会の創出やアーティストの成長支援に取り組んでいます。

皆さんがご存じであれば嬉しいのですが、メインとなる事業は毎年9月中旬ごろから開催しているアートイベント「FaN Week」と、旧舞鶴中学校を活用して開設したアーティストの成長・交流拠点である「Artist Café Fukuoka」の運営です。

これらの詳細はまた別の機会にお話しすることにしますが、4年間の取り組みにより少しずつではありますが、アートに接する機会やアーティストとの交流、福岡からアーティストを海外などにつないでいくことなどが実践できると感じています。

これまでの取り組みにおいて大変重要だと思っていることは、このアートのまちづくりの根本にはこれまで福岡市が積み上げてきた「福岡市美術館」と「福岡アジア美術館」があるということです。

2つの美術館は国内外から高く評価されるコレクションを所蔵しており、市民をはじめとする多くの方々に展覧会をご覧いただいています。

今後も福岡市美術館の展覧会などを楽しみにしていてください。

(館長 吉武寛志)

新着投稿

カテゴリー

アーカイブ

SNS