開館時間9:30~17:30(入館は17:00まで)

メニューを閉じる
ホーム > ブログ
福岡市美術館ブログ

新着投稿

教育普及

春の訪れとともに、美術館に遊びに来てみませんか?
-3月に開催する各種プログラムのご紹介

 寒さに震えつつコートにマフラー、手袋と完全防備で外出していたのはついこの間の気がするのですが、三寒四温の日が続くなと思っているうちに鼻と目がむずむずしてきました。そういえば、舞鶴公園の梅が満開だったのは少し前のことですし、美術館の周りの植物もそれぞれ蕾が膨らんできていて、春の気配をそこここで感じます。来週、3月を迎える頃には季節の変わり目がもっとはっきりしてくるかもしれません。
 そんな春の予感を感じつつ現在、教育普及係では3月に福岡市美術館で行ういくつかのプログラムの準備をしていますので、今回のブログではそれぞれについてご案内したいと思います。いずれも事前募集で参加者を募っております。寒くて家籠りしているという方も、そろそろ外に出かけてみませんか?というお誘いとして、ぜひお読みいただければと思います。

●第11回いきヨウヨウ講座
「アートとヨガで心と体をすこやかに―ミュージアム・ヨガ」

・開催日時:3月16日(月)13:30~15:30

・定員:20人程度(65歳以上の方対象)

・講師:中村英子、松村栄子 [Yoga 輝 (HIKARI)]

・参加費無料 ※

・申込み方法はこちらをご覧ください 

※3/16は休館日となるためプログラム実施エリア外での活動は行いません。鑑賞の時間もありますが、コレクション展全体の観覧は行いませんので、ご了承ください。

 “いきヨウヨウ講座”は、65歳以上の方に向けて例年3月に開催しているプログラムで、今年で11回目となります。各回テーマを設けて作品鑑賞と関連する制作体験など、参加者の想像力を刺激し、感性を引き出すさまざまな取り組みを行ってきました。例えば、作品にまつわる香りを展示室で嗅いだ後、調香体験で香り袋をつくるプログラムや、彫刻作品に触れて鑑賞した後、参加者それぞれの彫刻づくりに挑戦するなど、年ごとに違った内容で参加の皆さんと楽しんできました。 

 さて、今年の講座は何にしよう?と考え続けて頭が疲れてきた時に、ふと思いついたのが、美術館での「ヨガ・プログラム」です。ヨガは深く呼吸をし、自分自身の状態に意識を向けつつ、リラックスして心身の調子を整える運動です。そうした特徴は「ミュージアムという場」にも合うのではということで、近年では各地の美術館、博物館でもミュージアム・ヨガの取り組みが行われています。自分自身も仕事では作品よりもパソコンに向かう時間の方が多い日が続き、身体が固くなってきているのを感じていました。美術に触れて心を豊かにするには、まずは体を整えることも大事なのでは?ということで、今年は美術館でのヨガにトライします!
 福岡市美術館の館内でのヨガは初めての試みとなりますが、いきヨウヨウ講座で行うヨガということで、当日は近現代美術室のモナ・ハトゥム《+と-》の空間で、 “チェア・ヨガ”を行うことを計画しています。チェア・ヨガは椅子に座ることで、体への強い負荷を減らしながら運動するプログラム。ヨガはやったことがなくて少し不安、という方も無理なく参加いただけるものになりますので、皆さまからのご応募をお待ちしています。毎日の雑事で疲れがちな心と体を、美術館ですこやかにほぐしてみませんか?

 

●バリアフリーギャラリーツアー「車いすで、ゆったり鑑賞ツアー」

・開催日時:3月19日(木)10:30~12:00

・定員:5人程度(介護者を除く)

・参加費無料(観覧料についてなど、詳細は以下のリンクを参照)

・申込み方法はこちらをご覧ください

 3月19日(木)に予定しているのは、「車いすで、ゆったり鑑賞ツアー」です。これは当館でバリアフリーギャラリーツアーとして2020年から実施しているギャラリーツアーのうちのひとつで、普段車いすを利用している方や、あるいは長時間歩行しての鑑賞が難しい方にご参加いただければと思い、開催するものです。ツアーでは参加者皆さんのペースに配慮しながら、館内やコレクション展を紹介する予定です。福岡市美術館は1階と2階に展示室が分かれており、思った以上に体力が必要だったり、少し混みあっている時などは、良い距離感で作品を見られなかったり・・・作品と出会うためにはいろいろ難しいことがあるかもしれません。このツアーでは当館のコレクション展展示室の作品について、皆さんとお話しをしながらゆっくりと回ります。普段、美術館を利用するのに何かしら心配事やためらいのある方、普段から個人で利用しているけれど、たまには他の参加者と話しながら鑑賞してみたい方など、もし少しでもツアー参加にご興味がわきましたら、気軽にお申込みいただければと思います。
 どこかに外出することは楽しいことではありますが、たくさんエネルギーを使うことでもありますよね。3/19のツアーではリラックスして気兼ねなく、美術館を楽しんでいただく時間となるよう、準備をしてお待ちしたいと思います!

 

●やさしい日本語(にほんご)ツアー

 

・開催日時:3月29日(日)10:30~12:00

・定員:20人(申込み順)

・参加費無料

・申込み方法はこちらをご覧ください

 このブログを読んでくれている皆さんは、「やさしい日本語」という言葉を聞いたことはありますか?これはミュージアムだけに関わる用語ということではなく、日本の社会で暮らす人々が多様になる中で注目され、近年さまざまな場面で導入されてきているものです。とくに災害の時などに、誰にでも情報をはっきりと伝わりやすくすることの重要性から広がりました。具体的にどういった日本語なのかを説明すると、「文法や、言葉、単語のレベル、文章の長さに配慮し、日本語を母語としない人たちにも、伝わりやすく配慮したもの」です。やさしい日本語にはこれが正解というものはありません。伝わりやすさを考えて、その都度、言葉の選び方や表現の仕方を工夫していくもの。簡単なようで、簡単ではありません(いま「やさしい日本語」とは?ということを説明するために書いているこの文章自体も、日本語ネイティブでない人には、長くて難しいものになってしまいました。文章を書く、読んでもらうということも、使う状況を意識すると難しい!)
 ミュージアムを利用する人も多様になっている現代、福岡市美術館でも導入していこうということで、館内配布物として「やさしい日本語パンフレット」を設置したり、解説や案内の一部にやさしい日本語での掲示を行ったりしています。3月29日のツアーでは、この「やさしい日本語」を使って、日本語を学んでいる方や、まだ日本語に慣れていない日本在住の方とコレクション展を見ていきたいと思っています。
 このブログでの説明は長く、少し難しいものになってしまいましたが、ホームページの方に優しい日本語で書いたチラシと、応募の仕方を掲載していますので、もし身近に日本語を学んでいる方、日本に暮らすなかでやさしい日本語が必要な方がいましたらご紹介いただければと思います。

 3月はその他にも、「つきなみ講座」(3月21日)や、「第4回福岡アートアワード受賞作家 ギャラリートーク」(3月28日)など年度の最後まで様々なプログラムを予定しています。また、福岡市で開催する「Fukuoka Flower Show」(3月22日~26日)に合わせて、花にちなんだ展示や美術館建物の装飾を行います。春が近づく気配を感じるこの時期、少し足をのばし福岡市美術館に遊びにいらしていただければと思い、様々な予定をご紹介してみました。

(教育普及係長 髙田瑠美)

 

館長ブログ

紺屋の星条旗

出品番号62番《戦争シーン文様更紗腰衣》(部分)

 筒描と呼ばれる日本の染物の調査のため、四国を訪れた時のことでした。とある染物屋さんのご主人が話してくださった、忘れられないエピソードがあります。

 その方は第二次世界大戦の時に召集されましたが、戦後、命からがら復員することができました。ところが、染物をしようにも材料は全く手に入らず、家業は開店休業。仕事ができない日々が続きましたが、ある時、役場の人たちが店を訪ねてきます。何の用かといぶかっていると、彼らはこういいました。「アメリカの国旗を染めてくれないか」。
 ご主人は驚き、そして断固として断ります。ついこの間まで、敵として戦っていたやつらの旗なんぞ、絶対染めたくない!ところが、役場の人々も進駐軍の依頼とあっては、おいそれと引き下がれません。いや、それでは困る、なんとしても染めてくれ、いいや、嫌なものは嫌だ…と押し問答が続きます。が、役場の人々の窮状を見かねて、ついに引き受けることに。そうはいっても、材料も何もないというと、材料などお安い御用だ、いくらでも持ってくる、といって、あっという間にどこから調達したのか、依頼分を超えてあまりある材料が届きました。
 ご主人は、星条旗を染めました。そして余った材料を、役場の人々は感謝をこめて店に置いていきました。はからずも、星条旗のおかげで家業を再開することができたのです。おりしも、戦争に行っていた漁師さんたちが復員し、改めて船を仕立てて漁を再開する人が増えつつあった頃であり、お店では、大漁旗をたくさん染めて、店を繁盛させたのでした。

 そうだ、藍と茜があれば、星条旗は染められるんだな、と感慨深く思ったことを覚えています。世界に青と赤と白の旗が多くみられるのは、それらが天然染料で染めることができる色だったからでしょう。なぜ、久しぶりにこのエピソードを思い出したかといいますと、まさに、紺屋が染めた星条旗を見つけてしまったからなのです。といっても、インドネシアの紺屋(バティック・メイカー)が染めた星条旗ですが。

出品番号62番《戦争シーン文様更紗腰衣》

 現在開催中の「一杉コレクション展-魅惑のインドネシア染織-」(~3月15日)の出品作品に、よくみると星条旗(らしきもの)が!出品番号62番《戦争シーン文様更紗腰衣》は、いわゆる「カイン・コンパニ」と呼ばれる、兵隊や船、飛行機が染め出されたバティックですが、隊列を組む兵士の先頭に、進軍ラッパを吹く兵士と旗を掲げる兵士が描かれています。最初は、ただ旗が描かれていると気にも留めなかったのですが、どう見ても星条旗。しかも、19世紀初期の星(州)の数が少ない頃の。しかし、なぜオランダの旗でなく、星条旗なのでしょう。確かにアメリカの商船はバタビア(ジャカルタ)に出入りしてはいましたが…。一方で大きな蒸気船の旗をよく見ると、月と星が描かれていて、イスラムの国からの船かと思わされます。この布の持つ物語はいまだ紐解けていません。どうか、なにかご存じのことがあれば、ぜひ教えてくださいませ。

(館長 岩永悦子)

コレクション展 近現代美術

ときめきBOX、オープン!
-浦川大志の個展が開幕しました

福岡を拠点に活動するアーティスト・浦川大志の個展「スプリット・アイランド」が開催中です。(~3月22日)

 浦川さんにとって、本展は美術館で行う初個展となります。福岡市美術館がその会場となることは、高校時代に福岡市美術館で見た「菊畑茂久馬 戦後/絵画」(2011年長崎県美術館と共催)をきっかけに美術の道に進んだ浦川さんにとっては感慨深いことだったそうです。菊畑茂久馬作品の「圧倒的な存在感」に衝撃を受けて美術の世界に足を踏み入れ、高校生のころは宗像市のご実家から自転車で片道2時間半かけて、福岡市内のギャラリーや美術館に出没していたというのは、知る人ぞ知る話。
 今回の展示は、「プロローグ:そこにあるカタチを捉えるために」「第1章:予兆から風景へ」「第2章:風景と幽霊と画像」「第3章:複数の断片たち」「第4章:合作と協働」「第5章:風景画を更新する」そして、ロビー壁面での公開制作「第6章:スプリット・アイランド」のセクションに分けて、活動初期からこれまでに至る十数年間の作品と現在の境地をありったけ詰め込んだ展覧会になっています。

 

展示前半の様子

 

 会場には、出し惜しみなく初期の作品から近作までが展示されています。浦川さんには子供の頃から収集癖があり、お菓子のパッケージやシール、切手、化石、土器などを気になるものを集め、「ときめきBOX」と称するダンボールに入れて保存していたとか。何かを集め保存しておきたいという嗜好は美術館・博物館施設の性質とシンクロしており親しみを覚えますが、今回の展示室の空間自体も「ときめきBOX」的といえるかもしれません。
 プロローグから第3章までは、特にこれまでの活動が凝縮された構成になっています。初期の作品は、おもちのような有機的な形がパステルカラーの背景に浮遊しているのですが、やがてそれが引き延ばされ、グラデーションとなります。グラデーションの登場とともに、画面は彩度を増し、「デジタルネイティブ世代」を思わせる鮮やかな表現になっていきます。
 第3章の黒く長い壁には、大小さまざまな作品が散りばめられています。様々な方向に思考を巡らせて、「風景を描く」ことに取り組んできたことを物語る作品群です。浦川さんは言葉の表現も巧みな作家ですが、“風景と幽霊” “カメラロール”、“遠くって見えない”、“ATLAS”といったタイトルとイメージの組み合わせは「例えばこれを風景としたら、これも風景といえるだろうか」といった思考の過程を覗き見るようです。筆者は、古い観光絵はがきの建物の輪郭に太いグラデーションを引いた習作が気になっています。以前福岡市美術館では吉田博の水彩画を中心に風景と絵画の関係についての展示「絵になる景色 吉田博を中心に」を行ったことがあるのですが、そのテーマと同じく、風景はそれ単体で存在しているのではなく、常にメディアを通して生みだされるということに改めて気づかされる作品です。

プロローグより。古銭や雑多なものが貼り付けられた黒い画面は、九州派や菊畑茂久馬に強くひかれていた時期の作品(撮影:竹久直樹)

第1章より。学生時代の作品には、表面のなめらかさへの追求が目立つ。(撮影:竹久直樹)

第1章より。卒業制作展で発表した《LOG#02》(撮影:竹久直樹)

第2章より。「VOCA展」で大原美術館賞を受賞した《風景と幽霊》と、左手にある風景をテーマにした壁面(撮影:竹久直樹)

 

 

展示後半の様子

 

 第4章から第6章は、大半が2025年以降の作品です。CDのジャケットとして依頼を受け制作された作品や、先輩作家との共同制作、工房に通い初めて制作した銅版画。ここにある作品群には、他者と協働することによって従来の制作手法を見直さざるを得なくなった浦川さんの、新たな境地が現れています。
 特に昨年夏に滋賀県の信楽で行われた作家の梅津庸一さんとの二人展と合宿を紹介するゾーンは大きな割合を占めています。これまでに確立してきたグラデーションの技法を梅津さんにひとつ覚えの「固定砲台」と厳しく評価されながら共同制作をしたことは、浦川さんにとって強烈な体験となっていたようです。「はぁ~ほめられた~い」「別に梅津さんに褒められてもうれしくないもん」(合宿の様子を見ていた安藤裕美さんのマンガより)と、悔しがりながらも前を向き、変化しようとする姿には共感を覚えます。
 特訓の成果といえるでしょうか(?)、第5章で紹介する最新作では、絵具の扱いや線の引き方のバリエーションが増え、引き出しが増えているように見えます。

第4章より。会場中央にはコレクションを再現した棚(撮影:竹久直樹)

第5章。新作《セクションとしての世界》(撮影:竹久直樹)

 

 なお、このゾーンの中央には、木でできた棚が浮島のように据えられています。この棚は、浦川さんが集めたコレクションの一部を再現したコーナーで、棚の中にラベリングされたコレクションの梱包箱が詰まっています(実際の作品も、ところどころ露出しています)。冒頭で紹介した「ときめきBOX」の延長として、現在浦川さんは、500点を超える近現代美術作品をコレクションしているのです。
 その事実を紹介するこのゾーンを、浦川さんは開幕ギリギリまで力を注いで作っていました。九州派を含む様々な美術をインプットしながら自身の制作と向き合ってきた、浦川さんのアイデンティティを象徴する一角になっています。

 

 

日常とつながる浦川絵画

 

 筆者が浦川さんの作品に初めて接したのは、2019年に《Saida-wo nominagara tochi wo aruku》(2018年)が当館に新収蔵になるときでした。鮮やかで現代的な作風だな、と思いましたが、収蔵前の時点でこの作品は実家のベッドの下?に12分割で保存されていると聞き、親しみのわくエピソードと画風がちぐはぐな気がしました。
 しかしながら、今回作品を改めて展示することになり、「シュッとして現代的」というのは作品の表面的な見方であり、じつは意外に泥臭い、アナログな手つきで作られていることがわかりました。また、スマートフォンに通ずる滑らかな画面、鮮やかな配色は、表層的な心地よさだけを求めて追及されたものではなく、あくまで生活に根差して生み出されていることもわかりました。…このブログを読んでいる皆さんは、PCまたはスマートフォンのなめらかなスクリーン越しに眺めているはずです。つまり、浦川さんの絵画は、私たちの日常と地続きなのです。
 矛盾するようなことを書きますが、浦川さんの絵画は、画面越しではなく実際に見ることでしっかりとその味わいが伝わってくるものです。展示が開き、改めてそう実感しています。ぜひ多くの来場者の方に、画面上で行われている試行錯誤の連続、そして立ち現れる風景を直接ご覧いただきたいと思います。

 

 

お知らせ

 

・2月7日に浦川さんによるトークイベントを開催します。軽妙な語り口の浦川さんのトークをお楽しみに!

・今回の展示に合わせて初期から新作まで、約80点の図版を収めた図録も発売中です。「ガチャガチャ」をキーワードに、デジタル化に向かう時代のうねりを浦川作品の表現の特性に見出した千葉雅也さんの寄稿など、浦川作品を知る多種多様な寄稿者の語りを読めば、作品を見るのがもっと楽しくなること間違いなしです。
当館ミュージアムショップで販売中ですので、是非お手に取ってご覧ください。

 忠あゆみ(近現代美術係)

新着投稿

カテゴリー

アーカイブ

SNS