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福岡市美術館ブログ

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総館長ブログ

2千5百万人達成!

 2022年7月20日、福岡市美術館は1979年11月3日の開館から数えて2千5百万人の総観覧者数を達成しました。これを記念して、1階と2階のコレクション展示室と、特別展示室にご来館いただきました3組のお客様に記念品を贈呈しました。また、21日からの3日間、コレクション展示室の観覧者に当館オリジナル缶バッジ(個数限定)をプレゼントします。
 約2年半のリニューアル休館や、最近ではコロナ禍のための臨時休館も3度ありましたが、開館から43年で2500万人という数字は、地方の公立美術館として大いに胸を張れる数字です。誇れるのは展覧会をご覧いただいた人数だけではありません。約1万6千点を数える所蔵品の半数以上が寄贈によるものであることを思うと、いかに多くの市民に親しまれ愛されてきたか、歴史の重みがズシリと肩にのしかかるようです。
 日常生活のすぐ近くにありながら、普段では味わえない特別な体験や感動をお届けするために、さまざまな努力を積み重ねてきましたが、過去の実績に胡坐をかいている場合ではありません。さらに多くの皆さまに愛される美術館になれますよう、館員一同決意を新たにしています。  
 当館にとって記念すべき今年、70年ぶりに博物館法が改正されました。新しい博物館法は来年4月1日から施行されます。そこでは、これまでの社会教育施設としての基本的な役割にくわえ、観光拠点としての活動や文化資源の積極的な活用など、よりダイレクトな社会への貢献が求められています。
 特別で深い体験と、広範囲でインパクトのある集客事業をいかに両立させていくのか、いかに融合させていくのか、これまで以上に真剣に議論し、計画し、実行していかなければなりません。また同時に、福岡にこの美術館が、この作品があってよかったと感じていただくために、コレクションの一層の充実も図っていかなければいけません。
 美術館がさらに成長し進化していくためには、皆様からのご意見やご要望に真摯に向き合うことほど重要なことはないと感じています。
 当館のホームページを閲覧し、このブログを読んでいただいているあなたも、2千5百万人という観覧者数に入っていないかもしれませんが、もちろん美術館にとって大切なお客さまです。ぜひとも館の施設や活動について、ホームページについて、なんでもかまいません。遠慮なくご質問、ご意見をお寄せいただければ幸いです。

お問い合わせ | 福岡市美術館 (fukuoka-art-museum.jp)

(総館長 中山喜一朗)

 

2500万人達成記念品を贈呈した3組5名の方々と記念撮影

豪華記念品(左)と観覧者プレゼント(右・オリジナル缶バッジ7種)
記念品:こぶうしくんぬいぐるみ・仙厓やわらかクッション 猫に紙袋図・カラーペンシル・フランクステラ《バスラ門Ⅱ》ダイカットノート・ミュージアムランチペアチケット・図録『福岡市美術館ザ・ベストーこれがわたしたちのコレクション』・市美オリジナルトートバック(2色)・特別展ペア招待券

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その他

私と英語と犀の角

 こんにちは、4月1日から国際渉外担当員として福岡市美術館に仲間入りしました、太田早耶と申します。文書の日英翻訳や、海外との通訳を担当しています。ブログそろそろどう?という視線から逃げられなくなったところへ、自己紹介でいいよ!という気軽な言葉に背中を押され、このたび筆を執ることになった次第です。
 さて、翻訳・通訳を担当しているものの、私は英語が専門というわけではありません。大学では近現代の西洋芸術、大学院では文化財関係について学びました。どこで英語を学んだのか。一言では答えにくいのですが、私の英語習得に多大なる影響を及ぼしたのは何かと聞かれれば、万感の思いを込めてインドと答えざるを得ません。インドでは英語が準公用語として憲法で定められていて、とくにインド南部では、インド全体の公用語であるヒンディー語より、英語の方が通じる場面も多いです。私は、南インドはカルナタカ州の州都ベンガルール(旧称バンガロール)で2年間、外交関係の事務所に勤務していました。

緑豊かなベンガルールは、庭園都市とも呼ばれています。

 仕事では、日本人とインド人の間で諸々の調整を行う業務が多く、知る人ぞ知るインド英語の世界が私を待ち受けておりました。イントネーションは聞き慣れないし、やたら早口だし、独特の表現もあるし。ほほう、これが噂の。こいつはハードモードだぜ。インド出身のお釈迦様がおっしゃるように、犀の角のようにただ独り歩みたくとも、あらゆるものが圧倒的存在感をもって立ちはだかるこの国では、やっぱり種々の苦難に躓いて七転八倒するしかないのでした。しかし人間とは慣れる生き物で、毎日の停電や、穴だらけの道路を闊歩する牛、大音量でクラクションを鳴らす車とバイクとオートリクシャ、そして常に漂うスパイスの香りと同じく、インド英語も最終的には日常と化します。そんなこんなで、英語のみならず心身ともに日本人とインド人の間で(そしてそこに不可避的に起こる摩擦の中で)揉まれた私は、時間や交通ルールへの意識が若干緩くなった一方、強い胃と太めの神経を手に入れたのでした。あと、手でカレーを食べるスキルも習得しました。インド人の同僚のお墨付きです。

たまに牛もいます。これはおそらくゴミを漁っているところです。

夜の長距離バス乗り場。運転手さんの腕の見せ所ですね。

 福岡もどうやら、近年カレー激戦区と化しているようで、我ながら良い時期に福岡入りしたものです。旅行で少し立ち寄ったことがあるだけの福岡では、未だいろんなものが目新しく、これからここで生活し、働いていくのが楽しみです。どうぞよろしくお願いいたします。

(国際渉外担当員 太田早耶)

コレクション展 近現代美術

お帰りなさい、ミロ

 7月12日、ジョアン・ミロ《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》が福岡市美術館の展示室に戻ってきます。
 黒い画面の中央に灰色の石のようなかたちが表され、その内と外にのびのびとした線で生き物や三日月のようなモチーフが踊るこの作品。スペイン・バルセロナ出身の画家であるジョアン・ミロが1945年に描きました。1940年から42年にかけて戦禍を逃れるために滞在した、マヨルカ島での日々が着想源になっています。福岡市美術館の開館当初にコレクションに加わり、長い間、多くの方に愛されています。
 「戻ってくる」ってどういうこと?と思っている方へ。この作品、「ミロ展 日本を夢みて」(東京会場:Bunkamura ザ・ミュージアム、2022年2⽉11⽇ – 4⽉17⽇、愛知会場:愛知県美術館、2022年4⽉29⽇ – 7⽉3⽇)への貸し出しのため、少し長めの出張をしていたのです。展覧会のポスターや、「新美の巨人たち」「ニコニコ美術館」「日曜美術館」といった番組での展覧会特集でこの作品をご覧になった方もいるのではないでしょうか?

左から、愛知会場、東京会場のポスター

 「ミロ展」は、ミロ作品と日本との関係や、ミロの創作の秘密を、カタルーニャで起こった日本趣味の流行(いわゆる「ジャポニズム」)、ミロの来日にまつわる資料等とともに紐解いていく企画です。約20年ぶりの日本での回顧展で、この間にアップデートされたミロ研究の最新の成果が盛り込まれています!《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》は、「第3章 描くことと書くこと」という章で紹介されています。
 この章では、文字から絵、絵から文字へと行き来するミロの特色と、スペイン内戦と第二次世界大戦というふたつの戦禍に見舞われて、身を潜めながら描いていた状況について説明されています。本展図録によると、《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》には「和紙を用いて描線の肥痩や濃淡、潤渇をさまざまに試す実験を繰り返し、従来の丁寧で細い線で描き出した人物たちとそれを共存させようとする」、「その美しい例」が見られるのだそうです。筆者も愛知会場に行ったのですが、中央のひときわ太い線は、ミロが筆を動かす一連の動作や時間をたっぷりと含んでいるように感じられました。反対に、周囲の人物たちを縁取る白い線は、画面から浮き出して、光っているようです。解説を踏まえて鑑賞すると、細部を見て気付くことが増えます。他館が企画した展覧会への出品は、作品への理解が深まる絶好の機会になるということを、改めて確認しました。

Bunkamuraザ・ミュージアム(東京会場)風景  photo:Yuya Furukawa

愛知県美術館(愛知会場)風景

 実はもう一つ裏話が。「ミロ展」担当学芸員である愛知県美術館の副田一穂学芸員は福岡のご出身で、当館で初めてミロ作品を見たのだそう。お聞きしたところ、小学校高学年の時にお祖父様に連れられてきた当館で《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》を気に入り、そのポストカードと1986年の『ミロの世界』図録をねだって買ってもらったとか。大学で美術史を専攻したときにそれを思い出して、「せっかくだからミロやるか!」と卒論のテーマに選んだ、ということです。
 気に入った、という感覚を突き詰めた先に、展覧会担当学芸員となる未来が待ち受けていた、とは…コレクション展示室の可能性を感じさせる、素敵なエピソードではないでしょうか。

副田さん小学生のころの福岡市美術館機関誌「エスプラナード」81号
(1994年7月15日)。
「夏休みこども美術館」の記事でミロが紹介されていました。

コレクションハイライト、2021年度展示風景 

さて、東京・愛知で多くの方にご覧いただいた《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》は、出張を終え、7月12日から当館の展示室A「コレクションハイライト①」にて再展示します。会期中に、お客様による撮影が可能な「ミロデー」も予定しています(7/13,16,23,26,30の3【ミ】と6【ロ】が付く日)。ミロ作品との再会をどうぞお楽しみに!

(学芸員 近現代担当 忠あゆみ)

参考文献:
「ミロ展 日本を夢みて」図録(Bunkamuraザ・ミュージアム、富山県美術館、愛知県美術館、中日新聞社編、2022年)
吉岡知子「ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いていたジョアン・ミロ 1940-1945」『モダンアート再訪』(鳥取県立博物館、埼玉県立近代近代美術館、広島市現代美術館、横須賀美術館、美術館連絡協議会、2018年)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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