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福岡市美術館ブログ

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「夏休みこどもとしょかん」開催中

 8月も中旬に差し掛かり、子どもたちの夏休みも後半に突入しましたね。美術館では毎年この時季に夏休みこども美術館を開催していますが、同時に図書も毎年その企画に合わせて選書をし、夏休みこどもとしょかんと題した子ども向けの図書の特集をしています。
 今年の夏休みこども美術館のテーマは「水のリズム」。これに関連して、夏休みこどもとしょかんでは水をテーマに、19冊の図書を特集しています。今回はその中から筆者おすすめの図書を4冊ご紹介します。

・『みず』(五味太郎 作/絵本館/1981) 「あまいみず」、「ちいさなみず」など、「~みず」という言葉と五味太郎さんの優しい絵が見開きで対になり、次々に色々な水を紹介しています。絵本のサイズは小さめで、文字は「~ みず」という短いひらがなのみ。字が読めるお子さんなら一人でも読める絵本です。大人も一緒に“確かにこれも水、あれも水だな”とうなずきながら、想像しながら読むのも楽しいかもしれません。

 

・『エイサー!ハーリー ―きゅーはくの絵本 3 沖縄の祭り―』(山﨑克己 画・九州国立博物館 企画・原案/フレーベル館/2006)
九州国立博物館の所蔵品や施設に関連した「きゅーはくの絵本」シリーズのうちの1冊です。沖縄県大宜味村塩屋湾で行われる豊穣祈願祭「海神祭(ウンガミ)」で使われるハーリー船を主人公にし、お祭りの一日が描かれています。普通なら祭を見に行かないとお目にかかれないであろうハーリー船ですが、“九州国立博物館のロビーで展示されていたあの船”と言われればピンとくる方も多いのではないでしょうか。巻末にはお祭りの写真と詳しい解説付きです。
ちなみに、「きゅーはくの絵本」シリーズは全部で10冊発行されており、他の9冊は美術情報コーナーでご覧いただけます。

 

・『どしゃぶり』(おーなり由子 ぶん・はたこうしろう え/講談社/2018)
地面も焼けるように熱い、暑い日に、家から出たぼくが空を見上げると、「あれ?くも。まっくろの くも。」…「ばら ばら ばらっ」、「とん ととん ぼつんっ」、「じゃばばば ざばああああ」
目で耳で全身で雨を感じる男の子と雨との対話、画面いっぱいに描かれる雨の表情とそれを思いっきり楽しむ男の子の姿が、雨の前のむうっとする空気とにおい、どしゃぶりの雨の音と振動、水の感触までもこちらに届けてくれるような絵本です。

 

・『ぼくのいちにち どんなおと?』(山下洋輔 文・むろまいこ 絵/福音館書店/2016)
主人公こうちゃんの生活の中にあふれる音をオノマトペで表現した絵本で、ジャズ・ピアニストの山下洋輔さんが著者です。「ぱしゃら ぺしゃらだ ぱしゃ」、「むかか もかか がみごみげめ だみどめ…」、「ごけれ ごけれ ずずりん ずずりん」…さあ、これらは何の音を表現しているでしょうか?

登場人物などは絵で描かれていますが、声や水しぶきなどの音は陶器で表されており、音がより立体的に聞こえてくるようにも感じられます。

夏休みこどもとしょかんは夏休みこども美術館「水のリズム」と同じく8/21(日)まで。
美術館のリニューアル以前は1Fにあった読書室で毎年夏休みこどもとしょかんを開催していましたが、リニューアル後は展示室内にコーナーを設けて開催しています。とは言ってもコロナ禍で去年一昨年はSNS上で図書を紹介するのみにとどめていましたので、実際に展示室で図書を特集して配架したのは2019年以来三年ぶりです。
展示室内にコーナーを設けることの良い点は、作品を間近で見ながら関連する図書に触れられることでしょうか。
ほかにも魅力的な図書を配架していますので、「水のリズム」の展示を見て感じて、時折流れてくる水の音とともに、図書の世界もぜひお楽しみください!

(司書 中務美紀)

「夏休みこどもとしょかん」の様子(近現代美術室A)

 

 

 

所蔵品貸出

作品貸出と懐かしい再会

画像:状態調査で使用する道具類の一例

 皆さんの聞きなれない学芸業務の一つとして、作品貸出(さくひんかしだし)というものがあります。作品貸出というのは名前の通り、他の施設から作品の借用依頼があった際に作品を貸し出す業務のことを指します。この業務は作品を安全に貸し借りが出来ることを目的としているのですが、作品の借用依頼の打診からはじまり、事前に詳細確認、手続きといった過程をクリアします。貸出当日は借用側の担当者が当館に訪れ、貸出担当の学芸員と共に作業(作品の状態調査と写真記録、注意事項の確認・共有、輸送)をします。信頼関係が非常に重要な業務でもあるわけですね。

 さて、かなり前のお話です。とある美術館から作品借用の依頼がありました。郷土作家の展覧会を行うために当館の所蔵作品を借用したいというものでした。申請や許諾諸々の手続きを済ませた後、展覧会担当学芸員の方から、当日の立ち会いに別の学芸員が向かう旨のメールが届きました。Cc:の欄には当日対応される学芸員さんのメールアドレスが。たまたま、通りがかったM田学芸員が私のパソコンを覗き「あ、Yさんが来るんですか」と言いました。ぽかんとする私にM田学芸員は「え、分からないんですか、あのYさんですよ」とニヤニヤ。もう一度アドレスを確認し、ようやくYさんの正体が福岡市美術館でかつて一緒に働いていたYさんと理解したのでした。Yさんは、育休をとっていた学芸員の代替職員としてしばらく当館に勤務していたのでした。実は、私が福岡市美術館に勤めはじめてから、他にも数名の方が美術館に勤務し、経験を積んだ後に様々な道へ旅立っていきました。Yさんもその職員の一人です。貸出当日、予定時刻よりも早く到着するという事前の電話で、懐かしい声を聞くことが出来ました。久しぶりに会ったYさんは髪を切り、以前よりもずっと大人びた表情をしていました。

 このように、作品貸出業務は懐かしい面々と再会できる場になることもありますし、普段、聞くことの出来ない他館の様子や貸出作品に関わる展覧会の話、果ては各館ご当地の話に触れる貴重な機会のため、貸出対応業務は私のささやかな楽しみの一つとなっています。ちなみに「福岡あるある」なのですが、冬の時期に来られる学芸員さんからは「福岡は暖かいと思ってたのに思ってたより寒い」と言われます。福岡は日本海側かつ緯度が意外と上の方であるため、と思いますが、青森から来られた学芸員さんからそう言われた時は軽くショックでした。言われて気づくことが多々あります。

(近現代美術係 渡抜由季)

作品貸出業務の一例を紹介しています。
「黒田官兵衛 伝説の法螺貝「北条白貝」などを貸し出す一部始終(福岡市美術館)」

 

教育普及

夏休みこども美術館2022ワークショップ「水と色であそぶマーブリング」

 はじめまして。4月から福岡市美術館の教育普及係に着任しました森元と申します。今回初めてブログを書くのでドキドキしながら書いていますが、ご一読していただければ幸いです。

 さて、今日のブログでは、7月23日(土)に行った子ども向けワークショップ「水と色であそぶマーブリング」の様子を紹介します。マーブリングとは水面に絵の具を垂らして、混ぜたりしてマーブル模様をつくって紙に写し取る技法です。このワークショップは現在開催中の「夏休み子ども美術館2022 水のリズム」展のテーマにちなんで企画されました。

 皆様はマーブリングの経験があるでしょうか? 私は小学生のときに図画工作の授業でやったことがあるのですが、紙に写った絵の具がとても薄くて「……?」と微妙だった思い出があります。当館の先輩から「マーブリングのワークショップをやります」と言われたときに、そのときの微妙な気持ちを思い出し、参加者に楽しんでもらえるのかな?と心の中でやや不安に思っていました。
 しかし、その不安はすぐに払拭されました。ワークショップ講師として福岡教育大学の加藤隆之准教授をお招きしたのですが、加藤先生にいろいろと考えていただき、私たちにご教授いただいたおかげで、リハーサルそして本番とも、とても鮮やかなマーブリング作品ができあがりました。このワークショップでは、マーブリング技法専用の水よりとろりとした液体とアクリル絵の具を使用したのですが、それらの材料が発色の良い作品ができた秘密のようです。なるほど、私が小学生のときにやったのはただの水道水だったから薄くなったのか~と十数年経って気づくことができました。

美術館のスタッフがつくった試作品

リハーサルや準備を進め、来たる7月23日(土)。11時、13時半、15時と計3回に分けて実施の予定だったのですが、ありがたいことにどの回も定員の20名の倍の人たちが集まってくれました。そこで、午前の回は定員のほぼ倍の子どもたちを受け入れ、午後は急遽2回追加で行い(つまり計5回ワークショップをしました!)、なんと約120名もの子どもたちにマーブリングを楽しんでもらうことができました。

 では、その内容もここで少しご紹介します。まず初めに、加藤先生と一緒に福岡教育大学から来てくれた学生スタッフさんに手順を見せてもらいます。参加してくれた子どもたちはみんな何が起こるのかとワクワク、キラキラした目で見つめていました。

「スポイトで水面に絵の具を垂らすよ」とお手本

 説明を聞き終わって、自分たちもやってみるときがきた!ちょっと緊張した表情でトレーの中のマーブリング液に絵の具を垂らす子どもたち。未就学の子どもたちも対象でしたので、保護者にサポートしてもらいながら、思い思いの色で絵の具の流れをつくっていました。

竹串で水面を混ぜてマーブル模様をつくる!

 マーブル模様ができたら、次は丸い厚紙(使い捨てコースターだそうです)を水面につけて模様を写し取ります。ノリノリで紙を浸ける子もいれば、おそるおそる慎重に行う子も。作品だけでなく、作品をつくる課程でも個性が出るんだなと見ていて思いました。

マーブル模様の水面と出来上がった作品

 一人ひとりの制作の時間自体はそんなに長くなかったのですが、みんな満足そうに作品を持って保護者に見せたり、記念撮影をしたりと楽しんでもらえたようでした。
 福岡市美術館に着任して初めての子どもたちとのワークショップ。120人の子どもたちの作品づくりをサポートするのは大変でしたが、笑顔で「ありがとう」と言われると嬉しく、私にとっても楽しい時間になりました。今回体験してもらったワークショップが、始まったばかりの夏休みの素敵な思い出の一つになるといいなと思います。

 「水と色であそぶマーブリング」のもととなっている「夏休みこども美術館2022 水のリズム」展は8月21日まで。このブログを読まれている皆様も、美術館に遊びに来て楽しい夏の思い出をつくってもらえたら嬉しいです!

(教育普及専門員 森元美咲)

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