2022年7月21日 19:07
6月12日のブログでは「絶賛準備中!」だった「tupera tuperaのかおてん.」が、7月1日に無事開幕しました!
開幕前の展示作業中には、tupera tuperaのお二人、亀山達矢さんと中川敦子さんが福岡入りし、展示空間をチェックしたり、展示室入り口の床に不思議な顔《ナスカお地上絵》を描いたり、館内のあちこちに「顔」を作ったりしてくれ、これまでの巡回先とはまた違った福岡バージョンの「かおてん.」が出来上がりました。
【床に描かれた不思議な顔《ナスカお地上絵》】
【この「顔」ロビーのどこにあるでしょう?】
開幕直後の7月2日(土)にはお二人によるサイン会、7月3日(日)には「絵本ライブ」を開催しました。「絵本ライブ」には、地元で活躍する音楽ユニット「ザ・スタッカーツ」も加わり、笑いと絶叫と音楽の入り混じる、にぎやかなライブになりました。ちなみに、絵本ライブの飾りは、当館のボランティアさんが制作してくれました!
【サイン会には遠方からいらっしゃったお客様も】
【絵本ライブのようす。参加者の皆さんは、泣いたり笑ったり大忙し】
【ボランティアさんが作った飾り】
では、展覧会はどんな様子か少しご紹介しますね。最初に皆さんをお出迎えするのは大きな鏡。もし、持っていたら、「かおシール」を貼りましょう。「かおシール」を貼ることで、自分自身も「かおてん.」に入り込んでしまおう、というわけです。ちょうど筆者が通りかかったときに、この鏡の前で「かおシール」を貼っている親子に遭遇しました。
次に目に飛び込んでくるのは、絵本『かおノート』の原画と、上からぶら下がったり床に貼られたりした顔のパーツです。パーツとパーツを見ていると、それらが頭の中で組み合わさってパッと顔が見えてくるのが、この展示の面白いところ。「かおルーペ」を使うと、ルーペの丸の中でパーツが組み合わさって、いろんな顔が発見でき、さらに面白みが増します。(*)
【かおルーペ】
【ルーペから顔パーツをのぞくと・・・なんだか顔らしきものが見えてきました!】
そして、tupera tuperaといえば、何と言っても絵本です。展覧会の前半部分には、『かおノート』だけでなく、『やさいさん』や『あかちゃん』の絵本の原画も展示してあります。それだけでなく、会場の中には、絵本を読めるコーナーもありますので、ぜひ、比べてみて原画の、より繊細な線や色使い、そして制作の軌跡を感じてもらえればと思います。
最後に一つ、絶対これは楽しい!という展示をご紹介します。それは、展覧会の一番最後の部屋にある《床田愉男》のコーナーです。これは、床に置かれた丸い顔の土台に、いろんなパーツを組み合わせ、さらに自分も顔の一部になりきって、写真を撮るという参加型の展示です。しかも、パーツというのが、パンツの形やリンゴの形をしていたり、鉛筆やフォークの形をしていたりと、単に顔のパーツというわけではないので、参加する皆さんの想像力やユーモアが試されます。そして、天井には大きな鏡が吊るされているので、出来上がった顔を鏡に映して、真上から撮ったように撮影することができます。是非是非たくさんの人に来館して体験して、そしていろんな写真を撮っていただきたいと思っています。
先日、この会場の監視をしているスタッフから、「こんなに楽しい展覧会を、福岡市美術館でやってくれて、本当にありがとうございます!と立て続けに3組のお客さんから言われました!」と嬉しい伝言をいただきました。親子で、カップルで、友達とで楽しめる「tupera tuperaのかおてん.」は、8月21日(日)まで続きます。ぜひ、お見逃しなく!
(教育普及担当 主任学芸主事 鬼本佳代子)
(*)「かおシール」と「かおルーペ」は展覧会場入り口にて販売しています。
展覧会特設ホームページ https://artne.jp/tuperatupera/
2022年7月20日 19:07
2022年7月20日、福岡市美術館は1979年11月3日の開館から数えて2千5百万人の総観覧者数を達成しました。これを記念して、1階と2階のコレクション展示室と、特別展示室にご来館いただきました3組のお客様に記念品を贈呈しました。また、21日からの3日間、コレクション展示室の観覧者に当館オリジナル缶バッジ(個数限定)をプレゼントします。
約2年半のリニューアル休館や、最近ではコロナ禍のための臨時休館も3度ありましたが、開館から43年で2500万人という数字は、地方の公立美術館として大いに胸を張れる数字です。誇れるのは展覧会をご覧いただいた人数だけではありません。約1万6千点を数える所蔵品の半数以上が寄贈によるものであることを思うと、いかに多くの市民に親しまれ愛されてきたか、歴史の重みがズシリと肩にのしかかるようです。
日常生活のすぐ近くにありながら、普段では味わえない特別な体験や感動をお届けするために、さまざまな努力を積み重ねてきましたが、過去の実績に胡坐をかいている場合ではありません。さらに多くの皆さまに愛される美術館になれますよう、館員一同決意を新たにしています。
当館にとって記念すべき今年、70年ぶりに博物館法が改正されました。新しい博物館法は来年4月1日から施行されます。そこでは、これまでの社会教育施設としての基本的な役割にくわえ、観光拠点としての活動や文化資源の積極的な活用など、よりダイレクトな社会への貢献が求められています。
特別で深い体験と、広範囲でインパクトのある集客事業をいかに両立させていくのか、いかに融合させていくのか、これまで以上に真剣に議論し、計画し、実行していかなければなりません。また同時に、福岡にこの美術館が、この作品があってよかったと感じていただくために、コレクションの一層の充実も図っていかなければいけません。
美術館がさらに成長し進化していくためには、皆様からのご意見やご要望に真摯に向き合うことほど重要なことはないと感じています。
当館のホームページを閲覧し、このブログを読んでいただいているあなたも、2千5百万人という観覧者数に入っていないかもしれませんが、もちろん美術館にとって大切なお客さまです。ぜひとも館の施設や活動について、ホームページについて、なんでもかまいません。遠慮なくご質問、ご意見をお寄せいただければ幸いです。
お問い合わせ | 福岡市美術館 (fukuoka-art-museum.jp)
(総館長 中山喜一朗)
2500万人達成記念品を贈呈した3組5名の方々と記念撮影
豪華記念品(左)と観覧者プレゼント(右・オリジナル缶バッジ7種)
記念品:こぶうしくんぬいぐるみ・仙厓やわらかクッション 猫に紙袋図・カラーペンシル・フランクステラ《バスラ門Ⅱ》ダイカットノート・ミュージアムランチペアチケット・図録『福岡市美術館ザ・ベストーこれがわたしたちのコレクション』・市美オリジナルトートバック(2色)・特別展ペア招待券
2022年7月13日 16:07
こんにちは、4月1日から国際渉外担当員として福岡市美術館に仲間入りしました、太田早耶と申します。文書の日英翻訳や、海外との通訳を担当しています。ブログそろそろどう?という視線から逃げられなくなったところへ、自己紹介でいいよ!という気軽な言葉に背中を押され、このたび筆を執ることになった次第です。
さて、翻訳・通訳を担当しているものの、私は英語が専門というわけではありません。大学では近現代の西洋芸術、大学院では文化財関係について学びました。どこで英語を学んだのか。一言では答えにくいのですが、私の英語習得に多大なる影響を及ぼしたのは何かと聞かれれば、万感の思いを込めてインドと答えざるを得ません。インドでは英語が準公用語として憲法で定められていて、とくにインド南部では、インド全体の公用語であるヒンディー語より、英語の方が通じる場面も多いです。私は、南インドはカルナタカ州の州都ベンガルール(旧称バンガロール)で2年間、外交関係の事務所に勤務していました。
緑豊かなベンガルールは、庭園都市とも呼ばれています。
仕事では、日本人とインド人の間で諸々の調整を行う業務が多く、知る人ぞ知るインド英語の世界が私を待ち受けておりました。イントネーションは聞き慣れないし、やたら早口だし、独特の表現もあるし。ほほう、これが噂の。こいつはハードモードだぜ。インド出身のお釈迦様がおっしゃるように、犀の角のようにただ独り歩みたくとも、あらゆるものが圧倒的存在感をもって立ちはだかるこの国では、やっぱり種々の苦難に躓いて七転八倒するしかないのでした。しかし人間とは慣れる生き物で、毎日の停電や、穴だらけの道路を闊歩する牛、大音量でクラクションを鳴らす車とバイクとオートリクシャ、そして常に漂うスパイスの香りと同じく、インド英語も最終的には日常と化します。そんなこんなで、英語のみならず心身ともに日本人とインド人の間で(そしてそこに不可避的に起こる摩擦の中で)揉まれた私は、時間や交通ルールへの意識が若干緩くなった一方、強い胃と太めの神経を手に入れたのでした。あと、手でカレーを食べるスキルも習得しました。インド人の同僚のお墨付きです。
たまに牛もいます。これはおそらくゴミを漁っているところです。
夜の長距離バス乗り場。運転手さんの腕の見せ所ですね。
福岡もどうやら、近年カレー激戦区と化しているようで、我ながら良い時期に福岡入りしたものです。旅行で少し立ち寄ったことがあるだけの福岡では、未だいろんなものが目新しく、これからここで生活し、働いていくのが楽しみです。どうぞよろしくお願いいたします。
(国際渉外担当員 太田早耶)