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福岡市美術館ブログ

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「美術館のシンボル」から「パブリック・アート(みんなの作品)」へ


2021年7月1日にお目見えした、インカ・ショニバレCBEの《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》。

「リニューアル時には、美術館のシンボル的な目を引く大型作品を設置したい」という夢が生まれたのが今から10年以上前の2010‐11年頃。「交流と多様性」を象徴するインカ・ショニバレCBEの《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》を設置することが決まったのが、2018‐19年でした。そして、リニューアル・オープンの年、2019年の秋に《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》の制作は始まりました。

それにしても、最初に夢を描いたころはおろか、2019年でさえ、億単位の人が感染する疫病が世界に広がるなんて、まだ誰も想像できませんでした。《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》は、2020年から21年にかけて、コロナ渦の真只中で、ロンドンのロックダウンや工房の閉鎖を乗り越えて制作され、海を渡ってきました。

その完成披露式典に、インカ・ショニバレCBEがメッセージを寄せてくれました。その中核となったのは、要約すると下記のような内容です。

―パブリック・アートは、すべての人々に開かれたものであり、その意味で、とても平等なものである。美術館に行かけなればアートと出会えないというのは思いこみであり、公共の空間でアートを体験することは、より大きな喜びや驚きを生む―

そして、彼がその考えを強く持つようになったのは、コロナ禍を経験したからだと、ということも語られていました。過酷なロックダウン下で、美術館も長い休館を強いられたロンドンでの生活。そこから生まれた切実な思いは、強く胸を打ちました。

というわけで、《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》は、「交流の象徴」というより、今は「交流をあきらめないことの象徴」となり、「美術館のシンボル」という以上に、いつでも誰にでも美術にふれる楽しみを与える「パブリック・アート」としての大切な役割を担う存在となりました。

SNSで、思い思いのアングルで、さまざまな空を背景に撮影された《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》を見るたびに、感激します。どれも一期一会の貴重な一枚。ぜひ、みなさんが出会った、四季折々の《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》をアップしてください。#yinkashonibarecbe を付けてくださると、世界中のインカ・ショニバレCBEのファン(多分インカ自身も!)が見てくれると思います。

(館長 岩永悦子)

コレクション展 近現代美術

「コレクションハイライト」での挑戦

福岡市美術館の2階、特別展示室の向かいに、コレクション展示室(近現代美術室)の入り口があります。近現代美術室A、B、Cという3室から成り、20世紀以降の美術を紹介しています。ここでは、現在「コレクションハイライト」と呼んでいる展示と、約2か月ごとに展示替えを行っている展示2本をご覧いただけます。(8月1日までは「近代日本の美術:明治から昭和初期まで①」と「野見山暁治・豊福知徳・菊畑茂久馬―地方と海外のはざまで」開催。8月3日からは「和田三造《博多繁昌の図》ができるまで」と「ミニマルなかたち」)

「コレクションハイライト」は、5月頃に内容を一新し、約1年間ほぼ展示替えをすることなくご覧いただくものです(今年度は緊急事態宣言が発令されていた5月上中旬に展示替えを行いました)。その名の通り、美術館を代表する作品を一堂に集めて展示する趣旨ですが、なにせ近現代美術コレクションは12,000点を超えていますから、代表する作品もたくさんあります。そのなかから、美術の潮流を紹介すべく意識したり、テーマを設けたりして、作品を選び、展示を作ってゆくのです。

ところで、日々当たり前のように目にしたり受容していることについて、一度立ち止まってみること、そして疑ってみることは、どんな場面でも大事なことです。私にも、今まで美術史の流れに沿って福岡市美術館の所蔵品を紹介する際、気になっていたことがありました。それは、女性作家の個展や女性作家だけを集めた特集展示にしない限り、コレクション展においては展示作品の大半を男性作家が占めてしまうことです。なぜこういうことが起こるのか。その大きな要因としては、所蔵品の大半が男性作家による作品で占められていることが考えられます。

ではなぜ、所蔵品の大半が男性作家による作品となってしまったかといえば、過去、作品収蔵を検討する時に参照されてきた従来の美術史には、女性の美術家の名前がほとんど登場していなかったことが挙げられます。参照元とされてきた美術史ははたして普遍的なものなのでしょうか? 実は美術史研究においては、美術史が、ある価値観をもった人々によって作られたものでありそこには編纂時に様々な偏りがあったことがすでに指摘されており、美術史自体の問い直しもなされています。美術館においても同じことができないはずがありません。

今年度の「コレクションハイライト」の②では、「コレクションと展示のジェンダーバランスを問い直す」と題し、上記の問題に真正面から取り組むことにしました。内容を考えるにあたって、まず所蔵作品と寄託作品のなかから、女性の美術家による作品を洗い出し、それらを並べ、どのような切り口で紹介することが可能かを探っていきました。今回の展示には、男性の美術家も含まれていますが、展示室ではこの作家が男性でこの作家が女性であるなどとは明示していません。性別ではなく、作家一人ひとりの作品、制作への向き合い方に注目することが重要だと考えているからです。

美術史そして美術館の収集活動や展示の根底にあった性別による不均衡に改めて目を向け、展覧会のテーマに取り上げること。これを「挑戦」と言ってしまっていいのか、ためらいがないわけではありません。けれど今まで、少なくとも福岡市美術館では初の試みです。今回の「コレクションハイライト」は来年の5月までの長期展示ですので、どんな展示になっているかは、ぜひ展示室でご覧ください!

(学芸員 近現代美術担当 正路佐知子)

カフェ/レストラン

スペシャルソフトクリーム“Wind大濠” 開発のうらばなし!

福岡市美術館のアプローチ広場に設置されたインカ・ショニバレCBE《ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ》をモチーフとしたカフェの新商品スペシャルソフトクリーム“Wind大濠”。今年4月から試行錯誤を繰り返し、3カ月の期間を要して完成しました。開発のうらばなしを少しご紹介します。

実際の作品は完成まで見ることが出来ず、コンピューターグラフィックスによるイメージを参考に製作を始めました。ホテルニューオータニ博多内でまずどの商品で制作するかを検討した結果、商品の中で作品の形に最も近いイメージのソフトクリームをベースとして製作することで決定しました。

インカ・ショニバレ CBE《ウィンド・スカルプチャー(SG)II》設置イメージ

①作品の色彩をどう表現するかが最も考慮したポイント!
鮮やかで大胆な「アフリカンプリント」をイメージするために既製品のチョコレートやトッピングの砂糖菓子などで再現することをまず考えましたが、イメージ通りの色彩とはほど遠く、ホテルで製造することに。チョコレート用の食用色素を使用し微調整を重ねることで色彩の表現にいたりました。試作段階で細かいドットやラインなどの表現にもこだわろうとなり、作品を色彩表現するべく試行錯誤を重ねました。

色鮮やかなチョコレート

チョコレート用の食用色素で細かいラインやドットを表現


②作品の形状や動きをどう表現するかという部分に苦戦!!

素材としてチョコレートを使用することは決めたものの独特の形状や動きの再現は極めて困難・・・。結果、俯瞰的に見たときの全体の印象を第一に考えることにしました。ランダムにカットした4パターンのチョコレートを不規則かつナチュラルに配置することで、作品のイメージに見立てました。

色鮮やかなチョコレートシート

③実際に食べる際の状況の想定!!!
厳選した2種類のチョコレートを使用。味の面では問題はありませんでしたが厚さの見極めに最も気を遣いました。厚ければチョコレートが最後まで口に残ってしまいますし、また薄すぎると製作中に溶けてしまいます。ベストな厚さを探し何度も試作を重ねました。

ベストな厚さを探しチョコレートを伸ばす様子

ベストな厚さのチョコレート

このような試行錯誤を繰り返し完成したスペシャルソフトクリーム。美術館にお越しの際は、インカ・ショニバレCBE《ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ》をバックに鮮やかで大胆な「アフリカンプリント」をイメージするスペシャルソフトクリーム“Wind大濠”を是非お楽しみください。

スペシャルソフトクリーム“Wind大濠”

■カフェアクアム(福岡市美術館1階)
営業時間を当面の間、下記のとおりに変更しております。
火~木曜日:午前11時~午後5時30分
金曜日:午前11時~午後8時
土曜日:午前9時30分~午後8時
日曜日・祝日:午前9時30分~午後5時30分

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