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福岡市美術館ブログ

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教育普及

「ファミリーDAY2019」無事終了しました

みなさま、こんにちは。

毎年11月3日の開館記念日に合わせて開催している「ファミリーDAY」。今年は11月2日から4日の3日間で開催しました。「ファミリーDAY」では開催期間中館内各所で、小さな子どもから大人まで楽しめる鑑賞プログラムやワークショップを実施します。今回はリニューアルオープン後初めての「ファミリーDAY」だったためか、注目度も高く多くの来場者に恵まれ無事に終えることができました。わたしは今回初めてこちらの企画を担当しまして、自分にとっては重圧で思うように仕事が進められず死んだほうがいいんじゃないかと思いながら準備をしてきましたが、ひとが来てくれてひとまず安心しました。
それでは、実施したプログラムについて振り返っていきたいと思います。

3日間毎日おこなっているプログラムは3つありました。
1つは展示している作品に因んだぬり絵をおこなう「ぬってみよう!はってみよう!」です。実際の作品の色やかたちを想像しながら制作してもらい、完成したら作品をみにいってもらいます。1階ロビーでおこなっていたので、たくさんの人の目にとまり参加者が多かったです。

「ぬってみよう!はってみよう!」

2つ目は2階のキッズスペース 森のたねで行った、はさみが使えないような幼い子でも作品制作ができる「ミニミニワークショップ」です。大きなタネの中から取り出した素材をつかって森のなかまをつくります。小さな子どもが夢中でものを作る姿に保護者の方も真剣に向き合っているようでした。

「ミニミニワークショップ」

3つ目は「かいとうキッズ お宝みっけ!」です。こちらは、館内とコレクション展示室をまわって作品または作品の一部のシルエットをたよりにこたえをみつけるワークシート式のクイズです。問題は全部で5問あります。子ども達は地図をみながら1階と2階の展示室をめぐり、答え探しに夢中になっていました。スタッフのなかには「子どもだけでなく大人がやっても楽しい!」という意見もあがっていました。かいとう(怪盗・回答)は人のわくわく感を刺激するようです。

「かいとうキッズ お宝みっけ!」

 

スペシャルプログラムもみていきます。

今回初めての試みとなる「初めてのベビーカーツアー」(11月2日・3日実施)。こちらは現在子育て真っ最中の﨑田学芸員が考えた企画です。なんとなく、小さな子ども連れでは美術館には敷居が高いなと感じている保護者の方々に、美術館はキッズスペースや授乳室といった館内設備を含め、小さなお子様連れでもアートに親しめる・楽しめる場であることを知っていいただける機会となりました。参加者にも大好評でした。

「初めてのベビーカーツアー」

11月2日に実施した「わくわく!立体でつくる絵の世界」では、ジョアン・ミロ《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》を鑑賞します。じっくりみたあとに、ひとつ形を選んでもらい、もしも絵の世界からその形が飛び出てわたしたちの世界にきたたらどんな感触でどのくらいの重さなのかを想像してもらい、それをスケッチしてもらいました。そのスケッチをもとに好きな素材をつかって形にします。参加者は絵から想像を膨らませて絵には使われていない色を用いたり、つるつる・ざらざら・ふわふわなど手触りも意識して制作していました。出来上がった作品はどれもチャーミングでした。

「わくわく!立体でつくる絵の世界」

11月3日の「ぼくもわたしもほとけさま。ほとけさまの服をつくろう!」では、まず東光院仏教美術室の仏像を鑑賞します。鑑賞をはじめた子どもたちは鋭く、服装やポーズ、表情などから仏像たちの違いにどんどん気づいていました。仏像を鑑賞したあとに、もし自分がほとけさまになったらどんなほとけさまになるか想像し、ほとけさまになったときの服を考え制作しました。参加した子どもたちは、布やリボン、ボタンなどの素材を自由に使って自分の考えたほとけさまの服を作っていました。観察した仏像が背中に背負っていた光背を自分の制作に取り入れて頭から生やしている子もいました。今回は保護者もいっしょになって制作に没頭していたので、次は保護者自身も考えて子どもとは別に制作するプログラムにすると良いかもしれないと思いました。次回への反省点です。

「ぼくもわたしもほとけさま。ほとけさまの服をつくろう!」

そして最終日は、九州産業大学の三枝孝司さんを講師にお招きし、現在展示している企画展「仙厓―小西コレクション」にちなみ、江戸時代のアーティスト仙厓さんが描いた動物や人物といった作品をもとにシルクスクリーンという版画技法をつかって手ぬぐいを作りました。まず参加者は青・黄・赤・白の中から1枚好きな布を選びます。次に、あらかじめ用意しておいた版のなかから刷りたいものを3つまで選んで参加者自身で刷りの作業を行います。しっかり両手で持って力を込めてスキージ(刷るときゴム板)を移動させると、版絵の形にインクがつきます!予定枚数があっという間に無くなり大人気でした。子どもたちは初めてのシルクスクリーンに真剣に取り組み、完成した手ぬぐいを大事そうに持って帰っていました。

「仙厓さんの手ぬぐいをつくろう!」

以上「ファミリーDAY2019」を振り返ってきましたが、担当として反省する部分も多かったです。ただ、ご参加いただいた皆様に少しでもなにか美術館でおもしろいことができた、楽しかったと思っていただければ幸いです。ご来場下さった皆様、ありがとうございました。

またスタッフとしてご協力いただいた講師の三枝さんならび九州産業大学生徒OBの皆様、学生ボランティアの皆様、当館ボランティアの皆様、実習生の皆様のご協力あってこそ、無事終えることができました。本当にありがとうございます。アンケートをみるとファミリーDAYに参加したのは今回が初めてという方が9割以上いらっしゃいました。ぜひ、これを機会に親子で美術館に遊びにいらしていただけると嬉しいです。

それでは、次回のファミリーDAYもお楽しみに。

(教育普及専門員 教育普及担当 上野真歩)

総館長ブログ

愛称がほしいかも。えっ?私ではありません。

どーも。館長の中山です。11月13日に「福岡市制施行130周年記念式典」が市民会館で盛大に開催されました。そこで、来年の5~6月頃に当館の大濠公園に面した新しいアプローチに設置する大型の屋外彫刻作品について、デザインを発表させていただきました。ナイジェリア系英国人の現代作家インカ・ショニバレCBE氏による《ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ》という作品です。

「福岡市美術館に作品を設置したイメージはこのようになります」

とスライドをお見せすると、会場から「おお!」という声がいくつも聞こえました。「なんだ、こんなものか」という意味の「おお!」ではなかったと思います。つまり「おお(すごいな)!」とか、「おお(けっこういいかも)!」だったと確信しています。

当サイトのトップページからリンクしているプレスリリースにも載せていますが、式典でお見せしたのはこんなイメージです。

いかがですか。新しいアプローチにはカフェもあって広々していますが、なんとなくどこか物足りないな、なんて感じていた方もいらっしゃるのではないかと。そこにこれがドーンとお目見えします。いいでしょ。いいでしょ。

でも《ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ》というタイトルはちょっと長いですかね。覚えにくいかな。みんなが得意の《ウイスカ》なんて短縮もあるかもしれませんが、なにか愛称みたいなものが欲しい気がします。そうすれば、その愛称の後ろに「〇〇広場」とか「〇〇アプローチ」みたいに場所も呼びやすくなるような気もするし。

そんなことより、館長なんだからこの作品を詳しく解説しろって?言い忘れてました。11月30日には当館の40周年記念シンポジウムがあります。ズバリ「インカ・ショニバレCBEのパブリックアートと福岡」という内容です。まだ席に余裕があるようですから、ぜひご参加いただければ、誰よりもツウになれると思います。

来年の夏、「〇〇広場で待ち合わせね」なんていうセリフでラインが賑わうのを夢見ています。

特別展

何かが起こる空の色

先日、聞いたことのない破裂音がして、夜中に飛び起きました。寝ぼけた頭で窓の外を確認し、「あーこうやって地球が滅びるのか…」となぜか納得して眠りに落ちたのですが、翌朝調べると、近所に雷が落ちていたのでした。でもあのバチーンという音は本当にショッキングでした。空が怖い、という原始的な感覚を久しぶりに思い出しました。

さて、現在開催中の「ギュスターヴ・モロー サロメと宿命の女たち」では、神話や聖書の一場面を描いた作品が多く展示されているのですが、思わずぞっとするような空模様を見ることができます。

例えば、《パルクと死の天使》(展示番号33)。ギュスターヴ・モローが恋人アレクサンドリーヌを亡くして間もなく描かれたこの作品には、夕闇の中に運命の糸を断ち切る女神・パルクが、馬に乗って迫ってくるところが描かれています。馬とパルクを率いる死の天使の輪郭はペインティングナイフで刻まれており、たっぷり盛られた濃い青と褐色の絵具がナイフでかき混ぜられ、うねっています。そして、なんといってもこの空!落ちていく夕日と光背の厚塗りの黄色に対して、どんよりとした藍色に少しずつ変化していく様子が、グラデーションによって表されています。モローの感情の高ぶりがそのまま絵になったようなこの作品で、空は、確かに近づいてくる死、というテーマと呼応しています。

手前:《パルクと死の天使》1890年 油彩・カンヴァス ギュスターヴ・モロー美術館蔵

一方、旧約聖書に登場する女性を描いた《バテシバ》(展示番号139)の空は、彼女がたどる悲劇的な運命とは対照的に鮮やかで、澄みわたっています。バテシバは、水浴びをしている所をイスラエル王のダヴィデに見初められ、関係を迫られます。ここまでで十分悲劇的なのですが、結果として彼女は妊娠し、夫は戦地に送られ、挙句の果てに戦死してしまいます。哀れなバテシバ。いま、水浴びをしている彼女の姿は、薄づきの絵具で描かれ、少女のような無邪気ささえ感じられます。背景に広がる朝焼けの空の色と、これから彼女がたどる運命はあまりにもかけ離れており、かえって恐ろしさがこみ上げてきます。

右端:《バテシバ》制作年不詳 油彩・カンヴァス ギュスターヴ・モロー美術館蔵

今回のモロー展の見どころは沢山ありますが、ぜひ実物を見て感じていただきたいのは、その色彩の鮮やかさです。装飾的な要素がふんだんに盛り込まれた重厚な画面だけでなく、物語や登場人物の感情をドラマチックに演出する色彩にもご注目ください。教え子にアンリ・マティスやジョルジュ・ルオーら、後にフォーヴィズムと呼ばれる、激しい色彩表現を特徴とする芸術運動に身を投じた画家たちがいることにも頷けます。

何の決まり事もなく、思うままに絵筆を振るった空模様からは、モローの色彩家としての一面と、絵の中に込められたドラマを感じ取ることができます。

(学芸員 近現代美術担当 忠あゆみ)

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