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福岡市美術館ブログ

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コレクション展 近現代美術

新しい「コレクションハイライト」がはじまっています

5月30日から6月8日の展示替えによる休室期間を経て、6月9日から、当館2階の近現代美術室の展示内容が一新しました。「コレクションハイライト」もその一つです。

「コレクションハイライト」は、近現代美術の所蔵作品の中から時代順に、あるいはテーマを設けコレクションを紹介するもので、基本的には1年間を通してご覧いただけます。2階のコレクション展の入り口となる展示室Aの前半部と、近現代美術室の一番奥の最も大きい区画」である展示室Cの2室に分かれています。

どのような作品を選択し、展示室を構成するかは担当学芸員が素案を出し、学芸課内でブラッシュアップを重ねて決定します。今回は、①福岡市美術館の活動を物語る、自己紹介のような展示室Aと、②鑑賞者が作品と対話する空間を目指した展示室Cによる構成とし、それぞれを私なりに「2つのハイライト」、「分かり合い、分かち合う美術」と名付けました。ここではまだ展示をご覧になっていない皆さんのために、どのような展示空間になったかをご紹介します。

展示室A「2つのハイライト」

展示室C「分かり合い、分かち合う美術」

展示室Aのテーマは「2つのハイライト」

まず、「2つのハイライト」では、ダリ・ミロ・シャガールらによる20世紀のモダンアートを代表する作品と、田部光子・野見山暁治・菊畑茂久馬といった九州を代表する美術家たちの作品を展示しています。

ここ数年、県内各地の美術館で、九州や福岡ゆかりの美術家たちに焦点を当て、その特質や、美術家たちの活動に焦点を当てる試みが精力的になされています。
今回の展示を作るうえでは、そうした美術館の活動に背中を押されつつ、当館でも、地元ゆかりの画家たちを紹介する活動を継続して行ってきたことに光を当てられたらと考えました。

この部屋は、L字型の壁で四方を囲まれ、一筆書きで歩くことができない特徴があります。
そのため、歩きながら、今あげた二つの傾向を比較し、違いや共通点を探しながら作品が見られるようになっています。

 

展示室Cのテーマは「分かり合い、分かち合う美術」

美術館で様々な作品を見ることの面白さの一つに、まったく異なる時代・地域・状況にある人に思いをはせられる、ということがあると考えています。私自身も、展覧会で「この絵に描かれている人は、こんな気持ちなんじゃないか」と想像したり、「こういう時代があったんだなあ」と感慨にふけることがあります。作品鑑賞には、その作者の視点や想像力を共有したり、まったく違う価値観とぶつかりあうという体験が含まれていると思うのです。展示室Cの「分かり合い、分かち合う美術」は、この面白さを美術館を訪れる皆さんと共にしたい、ということから組み立てました。

展示室内は4つのコーナーに区切られています。日本のシュルレアリスムからはじまり、続くコーナーでは、時代・地域を横断し、自分たちを取り巻く社会に意識を向けたり、封じ込めていた感覚を内省したりするきっかけになる、鑑賞者に強く作用する作品を並べました。
最後のコーナーで展示している《障碍の美術》の作者和田千秋さんは、美術とは「答えを観客に押し付けるのではなく、社会への問いかけのようなもの」と言います。問いかけられている、という感覚を持ちながら、展示室を歩いてみてください。
また山本高之さんの《なまはげに質問する》という映像作品からは、子どもたちが「なまはげさん」に質問する声がリピートで響いています。他者である「なまはげ」に語り掛ける声は、自分に向けられているようにも感じられます。

展示室C最後のコーナーより(手前:山本高之《なまはげに質問する》奥:和田千秋《障碍の美術》)

ふらっと訪れてください

展示についてつらつらと書いてみましたが、まずは、ふらっと展示室を訪れ、その中を歩いたり、置かれたソファに座ったりしていただければ、展示を担当した者としては何より嬉しいです。

私は、中高生のころ、地元の埼玉県立近代美術館の地下の彫刻展示フロアが大好きでした。そこにはジャコモ・マンズーの《枢機卿》と舟越保武の《ダミアン神父像》という彫刻作品があり、展示室のベンチに座っていると作品の存在感に圧倒されました。「自分の感受性を超えた圧倒的なものと出会う」経験が癖になり、何度も訪れたものです。私にとっての居心地のいい美術館の原風景です。

今回の「コレクションハイライト」も、思いもよらない作品と出会える場所になればいいなと思っています。
皆様のご来館をお待ちしております。

 

(福岡市美術館 近現代係 忠あゆみ)

 

教育普及

「tupera tuperaのかおてん.」絶賛準備中!

 「tupera tupera」というと、小さいお子さんをお持ちの方や、絵本好きの方は「あの、絵本の・・・」とピンと来られるのではないかと思います。筆者の友人の小さな子どもたちも『やさいさん』や『パンダ銭湯』が大好きですし、大人の方にもファンは多いのではないでしょうか?かくいう筆者も、「モノモノノケ展」(2017年に今はなき天神のアートスペース・アルティアムで開催)に行っていたり、久留米市美術館で開催された「tupera tupera 絵本の世界展」(2019年開催)に行って、立体になった「パンダ銭湯」に浸かって楽しんだりしています。
 実は、亀山達矢さんと中川敦子さんによる、この人気クリエイティヴ・ユニット「tupera tupera」の展覧会が、7月1日(金)から8月21日(日)まで福岡市美術館にやってくるのです!テーマは、お二人のアイデアの源泉ともいうべき「顔」。というわけで、展覧会担当の筆者は、現在絶賛準備中です。
 さて、この「tupera tuperaのかおてん.」は、東京の立川市にあるPLAY! MUSEUMを皮切りに、いわき市立美術館、あべのハルカス美術館、高松市美術館を巡回し、当館にやってきます。展覧会担当者として、まずはいわき市立美術館へ視察に行ったのですが・・・どうやらその後の会場で、展覧会がちょっとずつ進化しているらしい(!)というのを聞き、ほとんど追っかけのように、あべのハルカス美術館にも高松市美術館にも行ってしまいました。このブログを見ている皆さんにちょっとだけ、各会場のようすをお見せします。

いわき市立美術館

いわき市立美術館 展覧会場の外にも顔が!当館でも会場の外のあちこちに顔が出没する予定。

あべのハルカス美術館 かおパーツの展示。当館ではちょっと違った展示になるかも?

高松市美術館 1階ロビーには巨大な「スーパーご長寿SHIWA MEIRO」がありました!福岡では・・・?

高松市美術館 何気なく通路を歩いていたら、矢印きょうだい発見!

というわけで、確かに!会場ごとにそれぞれの楽しみが詰まっていました。え?これだけ?展覧会の内容は?と思われるかもしれませんが、展覧会の中身はぜひ福岡市美術館でご覧ください。筆者自身も、当館でどんな「顔」が出現するのか未知の部分もあり、ワクワクしています。

 他にも関連イベントを開催します。下記に情報掲載しています。中でも絵本ライブは、福岡を中心に活動する音楽ユニット、ザ・スタッカーツをゲストに迎えますので、福岡ならではの特別な時間になること間違いなし!皆さん、お見逃しないよう、ぜひご参加ください!

●サイン会
日時:令和4年7月2日(土)①11:00~12:00 ②13:00~14:00
会場:福岡市美術館 1階アートスタジオ
定員:先着50組(各回25組。1組1冊、1組は1~4名まで)
参加方法:会場内特設ショップで公式ブック『かおPLAY!』をご購入いただき、レジにてサイン会の参加券をお受け取りください。
【参加券のお渡し】7月1日(金)9:30~先着順
 ※特設ショップは展覧会会場内にあります。特設ショップのみの入場はできません。

●絵本ライブ
アコーディオンとパーカッションのユニット ザ・スタッカーツを迎え、tupera tuperaによる絵本ライブを開催します。
日時:令和4年7月3日(日)13:30~15:00 ※13時受付・開場
会場:福岡市美術館 1階ミュージアムホール
定員:180名(要事前申込)
参加方法:WEBサイト「アルトネ」で受付中
アルトネイベント申し込みページ
https://fihb.f.msgs.jp/webapp/form/22521_fihb_253/index.do

※ご参加には本展のチケット半券又はARTNEチケットオンラインのQRコード(使用後でも可)が必要です。
※応募多数の場合は抽選とさせていただきます。
※当選者の発表は参加券の発送をもってかえさせていただきます。
※未就学児も参加可能。但し、保護者同伴でお願いします。
締切:6月15日(水)

●tupera tuperaのワークシートで遊ぼう!
※tupera tuperaが行うワークショップではありません
展覧会公式ブック『かおPLAY!』のワークシートで遊ぼう!
日時:2022年①7月29日(金)②8月17日(水)いずれも10:00~15:00
会場:福岡市美術館 1階 アートスタジオ
参加方法:申込不要 上記の時間中に会場においでください。ただし、混雑時には利用を制限させていただく場合がございます

(主任学芸主事 鬼本佳代子)

 

 

館長ブログ

つづくで「わたし」に起こったこと

 

現在当館で開催している「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」展は、2019-2020年に東京都現代美術館、2020年に兵庫県立近代美術館で開催され、少しインターバルをおいて、福岡でも開催の運びとなりました。4月に始まったときはまだ少し肌寒い頃でしたが、今は夏日を迎える頃となり、あと10日ほどで閉幕を迎えます。

会期が残りわずかになってみて、ファッションにはあまり興味がない、とか、女性の服には縁遠いとか、自分の好みにあうとか合わないとか、そういう理由で見逃す方がおられたら、もったいない、と思い、「ブログにミナ展について書きたいです!」と手を挙げました。

とはいえ、何をどのように語ろうか、と考えこむことになりました。ファンとして語るか(そうはいっても初心者だし)、あるいは、染織の研究者として述べるか(それには勉強が足りなすぎる)などなど。結局シンプルに、この展覧会で「自分に起こったこと、経験したこと、考えたこと」を書こう、と思いが定まりました。

1 自分が「着た」道を振り返り、これから行く道を思う
「ミナ ペルホネン」はデザイナーの皆川明氏が2005年に設立したブランドです。特筆すべきは、服のデザインが、オリジナルな柄・素材によるテキスタイル作りからスタートすることです。そして、それぞれのデザインにストーリーがあり、「ミナ ペルホネン」のサイトでは400種類以上のテキスタイルと、その物語やそれにまつわる記憶などが紹介されています。
https://www.mina-perhonen.jp/textile/

展示室では、さまざまなテキスタイルと出会うことができます。
花や鳥、樹木、動物。宝石、雨粒、雲。幾何学文様も、ソーダの泡も、電信柱だってある。多彩な柄を「かわいい」と言ってしまいたくなるけれど、それだけでは言い尽くせません。調和しているけれど、予定調和じゃない。洗練されていても矯正はされていない。この「かわいい」には野生が宿っている。さらに、それが服としてのデザインで新たな命を吹きこまれ、ていねいな縫製でコートやワンピースなどになったとき、それらをまとう人は「野生」をまとい、「自由」をまとう、と感じました。また、着ている本人もさることながら、それを眼にする周りの人の方を、より幸せにするかもしれないとも。

はたと自分を振り返ります。「自分はこれまでどうやって、着る服を決めてきたんだろう。これからどんな服を着ていくんだろう」と。

2 精度が上がる
展覧会が始まって、幾度となく展示室に足を運び、さまざまなデザインを見てきました。特に好きになったのは「metsä」(メッツア:フィンランド語で森の意)という、針葉樹が高く低く連なっているデザインでした。「one day」(ある日)という、針葉樹の森と湖が描かれた、大きなデザイン原画にも心ひかれました。

週に何度となく、街中の市役所本庁舎で会議に出てはバスで美術館に戻るのですが、それこそ「ある日」のこと。バス停から美術館へと歩いている時に、道沿いの空き地と、ちょっと小高い丘に目が奪われました。


この黄色い花の絶妙な配置は、どうやって決まったんだろう。他の草と話し合って決めたんだろうか。


草の森だ。「metsä」だ!

いつも通るのに、いままでほとんど関心を払ってこなかった場所が、急に別物のように見え始めました。絵になる風景を見つけた、というより、ミナ ペルホネンのデザインを通して見る目が変化し、自然のルールのようなものに気づくようになったのではないかと思います。

3 スイッチが入る
皆川さんが展覧会に先立って、ライブペインティングをされた時、ミナ ペルホネンの大ファンの友人Sさんに連れられて、もう一人の友人Tさんが見学に来ました。そして、このライブペインティングで、Tさんに「スイッチ」が入ったのです。目をキラキラさせて「無から有」が生まれてくる様を見つめ、見学のあと興奮さめやらず、感動を熱く語っていました。Tさんにこんな一面があったなんて!Tさんのなかの芸術魂が覚醒した瞬間でした。自分に起こったことではないけれど、友人のそんな姿を目の当たりにできたことは嬉しい驚きでした。

わたし自身のスイッチは、「服を着る」ことに入ったといえるかもしれません。思い切って新しい服を買ってみる。ずっと手を通してなかった服ともう一度対話し、新しい服とこれまでのお気に入りの化学反応を考える。それは、自分の過去を肯定し、現在を楽しみ、未来を期待する、という気持ちにつながりました。

「わたし」に起こったことはささやかなことなのかもしれません。それでも、きっと、この展覧会を訪れた人には何かが起こるのではないかと思います。また、何かを作ろうとしている人や、起業しようとしている人にも、ぜひ見てもらいたいと思います。理想を形にするのに必要な熱量が、具体的に示されているからです。

残り少ない会期ですが、多くの皆様にお越しいただけたら幸いです。
(館長 岩永悦子)

 

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