延長9:30~20:00(入館は19:30まで)

メニューを閉じる
ホーム > ブログ
福岡市美術館ブログ

新着投稿

学芸課長ブログ

藤田の生命力

「藤田嗣治と彼が愛した布たち」展が始まって、かれこれ…あら、もう会期があと3週間切れてる!?土日はあと3回しかありません。そろそろ、焦ってご予定を立てていただいて結構かと思います 笑。皆さまの御来館をお待ちしております。

展覧会を開催すると、マスコミ各社さんから取材をしていただくことがあります。取材時間も制作時間も限られているなかで、何かをつかもうとされるプロフェッショナルたちとの真剣勝負。皆さんの、ストックの広さ・深さ、そして瞬発力に、思ってもいなかったことを引き出してもらうことがあります。

 

今回、X新聞のZ記者の取材を受けました。Z記者は、質問するだけでなく、ご自分が感じたことも、正直に話してくれる方です。戦争画について、「今の目で批判するのは簡単。でも自分がその時生きていたら、きっと誰もがしたように行動したと思います。」と言われ、「わたしもそう思います」と返しました。「朝ドラ『エール』の主人公は、軍歌を作っていながら日本でサバイバルできたのに、どうして藤田はできなかったんでしょう。」という問いに「うーん。日本でのサバイバルにこだわらなくても、藤田には脱出先があった。これが大きいかもです。」と答えました。そう、藤田には日本以外のどこかに行く、という選択肢があった。非常に困難な道でしたが、それをやってのけた。だからこそ、「日本ではサバイバルできなかった」という事実が残ってしまったのでもありますが…。

戦争画のコーナーを過ぎ、藤田の手仕事コーナーにさしかかったとき、「藤田はできあいのものを、そのまま受け入れるのが嫌いでした。若い頃から、オリジナルなものを身に着けることに価値を見出して、手づくりをしていました。既製服を着るときも、ポケットをつけ足すなど、なにかカスタマイズして、自分のものにしないと満足しなかったみたいです。」ということを話しました。青年期から晩年まで、楽天的でめげない。難局を突破する。あらゆることに全力投球できる。時間を惜しんで制作に没頭する。衣食住すべてにわたって、自分の生活の隅々まで自分で作り上げる。そんな藤田像を話した時、Z記者が引き出してくれた言葉があります。

「藤田には生命力がある!」

「生命力」というキーワードは、藤田の作品や人となりに正面から向き合い、ストレートにご自分のことも語ってくださったZ記者との対話でなければ、きっと出て来なかったでしょう。藤田には、どんな環境下でも前に向かって進む力がありました。

藤田の手から生まれてくるすべて―絵画にも、針仕事にも、手紙にも―は、生命力にあふれています。この展覧会で、ぜひ、その力に触れに来てください。

(学芸課長 岩永悦子)

コレクション展 古美術

無風でもヒーローになれる!


これは、こぶうし君が身に着けている「ヒーローマフラー」のキャッチコピーです。ヒーローになりたい、でも風が吹いていない…!そんな時におススメのアイテムです。

「どうして風が吹いていないとヒーローになれないの?」と思わずツッコみを入れたくもなりますが、仮面●イダーやサイ●ーグ009を例にあげるまでもなく、赤いマフラーをなびかせるのはヒーローにとってお約束のビジュアルと言ってよいでしょう。マフラーを身に着けたこぶうし君の表情がいつもより凛々しく感じられるのはきっと私だけではないはずです。

昨日から開幕した「風を視る」(~2021年1月31日)はこのような風を目にした時に生じる心の動きをテーマに企画したものです。というのも、東アジアの美術を勉強していると、「呉帯当風(ごたいとうふう)」(衣服が風に翻るように見える様)や「翻波式衣文(ほんぱしきえもん)」(衣が波打つように動く様)などなど、風や布にまつわる専門用語にやたらと多く出くわすのです。

これは、古来、人々が風、あるいは風になびく布をあらわすことに力を注いできたからに他なりませんが、彼らはこうしたモチーフに何を期待していたのでしょうか。ひょっとしたら、私たちがヒーローの首元でなびくマフラーを見て感じるような熱い気持ちを抱いていたのではないか、そんな仮説が出発点になっています。

この仮説を証明するために一番手っ取り早いのは、風が表現されている美術作品と、それに対する当時の鑑賞者のコメントを見つけ出すことです。ですが、現存作品や資料に限りがある古美術においてこの方法は現実的ではありません。

そこで、次なるアプローチとして仏教の経典や解説書の記述と作品の描写を対照してみる、という方法があります。もちろん、あらゆる仏教美術が経典の記述に忠実、というわけではありませんが、文献史料に乏しい古美術を考察する上では有力なてがかりであることは間違いありません。また、仏教美術には風をあらわした作品が多く存在することも見逃すことのできないポイントです。

例えば、風を神格化した風天や、空を自由に飛ぶ天人などからは、身に着けた衣裳や髪の毛が勢いよくなびく様子を見てとることができます。

風天図 室町時代 16世紀

繍仏裂 飛鳥時代 7世紀

これらは、自然現象や身体運動に伴って生じた風をあらわしたもので、それほど不思議な感じはしません。ですが、仏教美術を見ていると理屈では説明がつかない風の表現にでくわすことも珍しくないのです。

線刻十一面観音鏡像 平安時代 長承3年(1134)

これは、十一面観音の姿を線彫りであらわしたものです。脚を組んで座る静かなたたずまいですが、肩に羽織ったショールは強風にあおられたかのように舞っています。この風は一体どういう理由で吹いているのでしょう?

そこで、経典の記述に目を向けてみると、仏像に祈りを捧げたときに起きる奇跡として、像が動くことがしばしば説かれることに気が付きます。これを踏まえるならば、仏像の周りに吹いている風は、像がまさに奇跡を起こした瞬間であることを示していると考えることができるのではないでしょうか。つまり、風の表現は人々に対して自身の祈りが確かに仏像へと伝わったということを印象づける効果があったと想像されます。

当時の人々に聞いてみないと確実なことは分かりませんが、仏教美術に見られる風の表現に抱いていた想いは、私たちがヒーローのマフラーを見て感じる興奮とそれほど違いはないのではないかと思います。

(学芸員 古美術担当 宮田太樹 )

教育普及

こども連れで美術館に行っていいと? いいよ、きぃーよ!

最近、美術館で小さなこどもを連れた人をよく見かけるようになったと思いませんか?え、こどもと美術館?無理でしょ、と思った方も多いかもしれません。

福岡市美術館では、毎年11月3日の開館記念日の前後3日間に、ファミリーDAYを開催しています。ファミリーDAYはこどもと一緒に親子で美術館を楽しむための3日間です。毎年、美術館に初めて来たというファミリーがたくさん参加しています。

今年は、新型コロナウイルス感染症の影響もあって、美術館で開催するプログラムに加えて、オンラインのワークショップや、動画の制作にも初挑戦しました。10月22日のブログで紹介した、飼育員さんとのコラボ企画もその1つです。(ブログはこちらから)

中でも、オンラインワークショップは全く初めての試みです。タイトルは「つくろう!羽ばたく色トリ鳥」(ダジャレ)。アーティストの佐土嶋洋佳(さどしまひろか)さんを講師に迎え、当館所蔵の古美術作品《百鳥図》を鑑賞した後で、自分の「羽ばたくトリ」を制作するワークショップを行いました。

伝・辺文進《百鳥図》明時代

初めての試みで、苦労もありましたが、当日は佐土嶋さんが丁寧に制作の説明をし、分からないところは質問をしてもらうという流れで、順調に進みました。分割されたモニター画面の中で、24組の親子が、楽しそうに会話しながら、時に真剣に「羽ばたくトリ」を作る姿は、見ているこちらも思わず微笑んでしまうような光景でした。最後に、全員で自分の作った「トリ」を画面いっぱいに羽ばたかせて、ワークショップは無事に終了しました。

オンラインワークショップで、講師の佐土嶋さんが参加者に話しかけている様子。

モニターを見ながら参加者とコミュニケーションをとります。

オンラインワークショップの難しいところは、参加者と「場の空気」を共有できないこと。当たり前かもしれませんが、実際に面と向かって「対話」するのと、画面を通して「会話」するのとは、違うものです。オンライン上では、相手の細かい表情の変化を読み取ることが難しく、伝わっているか、退屈していないか、判断しにくくなります。人って(もしかすると動物も?)相手の顔色を見ながら、コミュニケーションを取っているんだなーとつくづく感じました。

一方で、美術館で開催したプログラムにも、たくさんの親子が参加してくれました。展示作品のクイズに答えてお宝をみつける「かいとうキッズ!お宝みっけ」や、ガイドマップを見て、親子で会話をしながら作品鑑賞をする「ガイドマップで君もアートマスター」など、驚くことに参加者数は過去最大となりました。

作品のクイズに答える「かいとうキッズ!お宝みっけ」に挑戦。

クイズの答え合わせをしたら、くじ引きをしてお宝を手に。やった!

美術館に来た親子のアンケートでは「普段は子連れで気軽には入れないので、今日は楽しかった」「おしゃべりしていいのが良かった」という声が多く、今後も「行ったことないけど、こどもと美術館に行ってみようか!」と思ってもらえる活動を続けていきたいと心新たにしました。やっぱり親子の笑顔があふれる美術館っていいものです。

ガイドマップをヒントに作品鑑賞中。何が描いてあるのかな?

(学芸員 教育普及担当 﨑田明香)

新着投稿

カテゴリー

アーカイブ

SNS